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川柳で人生を二倍に生きる

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2006年09月29日
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カテゴリ:川柳
 大垣共立銀行主催の「ご意見川柳」コンテストの入選発表があった。
 <特選>懸賞10万円が11句という破格の懸賞金に多くの作品が集まった。残念ながら、テーマから言っても同想句が多く、発想の広がりは期待ほどではなかったが、その中から募集川柳として優秀な作品が発表された。

  ケイタイへカードを足して子が巣立ち  愛知県 岡部英夫
 ケイタイ電話の普及は、小学生にまで行き渡っている。子供の早熟化も社会現象のひとつになってきたが、いよいよ社会へ巣立つ際には、マイバンクのカードを持つことにより大きな翼を与えられる。しかし、それは自己責任という重石を手にする瞬間でもある。今回の集句の中で銀行の社会性を読んだ異色な作品である。

 日銀の前で貧乏ゆすりする  青森県 米内吉信
 小泉政権以降の痛みを伴う改革は、庶民生活に〈格差〉なるものを生み出し、日銀の量的緩和策とゼロ金利政策は、銀行を手数料のかかる財布にしてしまった。ところが、当の日銀総裁は、○○ファンドとやらで「たいした額ではない」という利益をあげている。この貧乏ゆすりは、庶民の怒りと呆れであり日銀を世論で揺さぶる。

 銀行と八百屋だんだん遠くなり  岡山県 凡夫
 駅前の大型スーパーと24時間営業のコンビニの存在は、社会に大きな便利さをもたらした。便利さに負けて昔ながらの商店街の八百屋からは客足が遠のく。銀行の場合もコンビニなどにATMができたり、利子が小さく手数料の掛ることから、タンス預金に押され気味であったり。銀行も庶民から遠くの存在になってしまうのか。

 涙拭くテッシュと思う低金利  富山県 一円玉
 口座新設時にもらう粗品は銀行の定番。これを楽しみにする向きもあった。昔は貯金箱などが多かったようだが、最近はティッシュなど簡素なものになってきた。今日の経済状況の中で、このティッシュをくれる裏の理由は、低金利で虎の子の育ちがわるいことを嘆いてもらうためなのだろうか。

 慇懃に機械が正す誤入力  埼玉県 鶴一声
 ATMは簡単で便利。やさしい女性の声で手順に導いてくれる。そんな便利な機械でも、背中に長い行列ができていたりすると慌ててしまう。たったひとつのボタンの押し間違えで、機械は慇懃にも「もう一度はじめからやり直してください」と連れなくやり直しを迫る。もはや、ニンゲンは機械の指示に従わざるをえない。

 銀行へ行く軽い靴重い靴  青森県 高瀬霜石
 銀行の窓口は人生の交差点でもある。軽い足音で行ける時の銀行は幸せだが、重い靴を引きずって行かねばならぬ銀行は針の筵のようだろう。靴の重さだけを言うことによって人生の起伏を表現したところに技術的巧みさと川柳らしい諷刺がある。こういった軽みの句は現実を見詰める中から生まれてくる。

 私も出句するほうにまわりたかった。





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最終更新日  2006年09月29日 22時24分16秒
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