アホヘン
我が家の前は、この小さな住宅街のメイン通りです。両側の家の間に幾つかの露路があり、2軒から5軒ぐらいの家があります。でも、ヒトも車も滅多に通りません。 庭に水を撒く時は、東側の散水栓から西側のフェンスまでホースを持って、塀の外を通ります。 昨日の夕方。西側の水遣りが済んで塀の中の植木に撒いていると、ガンガンッと手にすごい衝撃がありました。北側の家の駐車場に、無断駐車避けに積んであったブロックに危うく当たりそうになってハンドルを切り、そこへ半分突っ込んだ白い乗用車が、水で膨らんだホースを踏んだのです。65キロぐらいの速度で西から走って来た自動車でした。(こんなとこ、そんなスピードで走るか?) 一本道ですから、私が水を撒いているのも、ホースが足元にあるのも向こうの方から見えていた筈です。朝と夕方、水撒きをしている時に通る自動車は1年に1台ぐらいです。住宅の道だし、私に気を使って20キロぐらいでそろそろと向かいの家側を通ります。 水の入ったホースを踏んであんなに衝撃があるとは思わなかったらしいドライバーは、車の中から私を睨んでいます。降りて来て文句を言うつもりなのか? 言うのなら言ってみろ。こんな道をそんなスピードで走っていいのか教えてあげるよ。ホースがなかったら私を引っかけるところだったんじゃないの? (いや。こいつはアホや。喧嘩したって仕様がない) なにもなかった顔をして、散水を続けました。ドライバーの方もそう思ったのか、やがて車をバックさせて東へ向け、走り去りました。白い大型のトヨタです。 と思ったら、5分もしない間にまた車の音。え? 今の車や。隣の家のガレージへ入りました。(アイツか......)姉さんと二人暮らしの、50歳ぐらいの独身男です。 家へ入ってショータンに言いました。「夜通し電気点けて寝てる隣のヤツな、アホやアホやと思てたけどやっぱりアホやったわ。すごいスピードで走って来て、水の入ったホース踏んでハンドルとられて、向かいのブロックに当たりかけて駐車場へ突っ込んだ。あんなんが運転してたらコワイな」 ショータンはテレビから目を離さずに言いました。「ヘンなヤツ、構うなよ」