『身毒丸』復活
2008年2月24日 愛知厚生年金会館 2階F列
作:寺山修司
岸田理生
演出:蜷川幸雄
出演: 身毒丸 藤原竜也
撫子 白石加代子
父親 品川 徹
小間使い 欄妖子
仮面売り 石井愃一
せんさく 中曽根康太,渡部駿太
ストーリー:
少年の身毒丸の母は幼い頃に亡くなっていた。
未だ母を恋う彼のために父は母として撫子とその連れ子せんさくを「家族」として買った。
しかし身毒は継母をかたくなに拒絶。そして父は女としての撫子を必要としなかった。
深まる亀裂。
ある日折檻された身毒は仮面売りから不思議な穴を教えてもらい、死んだ母を捜しに異世界を彷徨う。
しかしみつけたと思った母は撫子であった。
それから2年。未だ馴染まぬ親子関係。
いつしか撫子は身毒のまなざしに恐怖を覚え、彼の目をつぶしてしまう。
そのまま行方知らずになった身毒。
ようやく訪れた家族の安寧もつかの間、身毒がこっそり舞い戻りせんさくをおとしめる。
家族はついに崩壊。
そして身毒は息子ではなく、撫子も母ではなく向き合うのだった・・・。
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やーーーーー。
なんとも幻想的な世界。
出だしから不思議な世界へ誘われ、いつしかその覗き見た万華鏡のような世界に魅入られたよ。
音楽がとにかく印象的で。
BGMもすごくよかった。
なんだろうね。『和』の不思議な音色の時に不安定な和音?(この辺テキトーな知識しかないのでそこらはご容赦を)が
ときにやさしかったり、不安にさせたり、惑わせ酔わせ、恐れや怒りも誘ったり。
唄もものすごく強烈だった。
歌謡曲のテイストだったり民謡テイストだったり、なんつーの?謡(うたい)?みたいだったり。
猥雑な雰囲気って蜷川さんの舞台の魅力のひとつだと思うけれど、
それがまさに表現されていて、しっかり歌詞を聞き取れなかった部分もあったけれど効果的だったな。
んで、とにかくね、知ってたのは母恋しの身毒が家族を買って(実際は父が買ったのね)、
でもうまくいかず、最後は母と言うより女として意識する。
こんくらい。
アバウトすぎるよね(苦笑)。
でもそのせいでかえって何の先入観もなく観られてよかったかも。
繰り広げられる蜷川ワールドにすっかり魅入られてしまったのだから。
以下、思いっきりネタバレしてます。
実は諸般の事情で劇場入りが5分遅れてしまってね。
でも席に着いたらいかにも始まったばかりな雰囲気で、ほ。
火花が降りしきる中、舞台奥から異形のものたちがゆったりした歩みで登場するところだったのだから。
とりあえず息を静かに、でも必死で整えながら舞台を見下ろす。
はい、2階中ほどのおせきだったのでね。
全体を見渡すにはいいけど、でもさすがに表情は肉眼では観難かったね。
そしてふと気がつけば舞台奥からひとりまともな(ってなんか変な表現ですまぬ)少年がやってくる。
あ。
竜也くんだ!
この時点ではまだ私の脳内では竜也くん。ミーハーモードスイッチon(笑)。
けれどそれはすぐに舞台鑑賞モードに切り替えさせられる。
異形のものどもが立ち去り、そこは祭りの場なのか?仮面売りがあり、見世物小屋があった。
そしてそこには『母』がうられているのだ。
びっくりしたー。
女郎が並ぶ遊郭でもあるまいに、母の名の仮面をかぶったものたちがずらずらり。
不思議な迫力。あの手この手で母を求める身毒を誘う。
しかしどの母にも見向きもしない。唯一なぜか目が合った『母』がひとり。
その瞬間、その『母』撫子は、連れ子もろとも父に買われる。
呆然としてるように見えた身毒。
でもこちらも呆然。
ってか、え~~~~~~~~~!?
そんな展開なの?
けれど共に帰った家で、すぐに馴染んだように振舞う継母・撫子と連れ子のせんさく。
当たり前のようにそれを受け入れる父の間で
身毒は我が家にいながら居場所をなくしたような苛立ちと不安定さを見せる。
庭(だよね?)で行水する身毒。
ちょっとここでどきどきしたのは私だけではないよね?
あーゆうシーンとは知らず、どんどん服を脱ぐんで恥ずかしくなったなんて、
おばちゃんまだ乙女心が残ってるらしい(爆)。オペラグラス使わなくてあとで後悔したけど(爆爆)。
でも恥じらいながらも、肉眼、でカラダのラインが、特に腰が細くて少年っぽさ残っているなぁとか、
肩幅はやっぱり大人のにほひが隠し切れないなぁとか、煩悩炸裂してたのはナイショ(笑)。
少年とはいえ、その姿を垣間見てしまった撫子のあるかなしかの一瞬の動揺に女を感じる。
でもすぐに母の顔になるんだけれどね。
そこらは、父が女としての撫子を必要としなかった所以もあったせいなのかな。
せいいっぱい母であろうとけなげに尽くす撫子。
けれど身毒はいまだつれないそぶり、であるばかりかいつしか母である自分の存在そのものを疎ましがり否定する。
ここらは、身毒の実母を忘れたくない気持ちも分からなくはないけれど、
私としてはいつのまにか目線が撫子に同化してしまっていたので無性に哀しくて。
身毒のいぢわる~~~~とか思ってた。
けれどそれがふっと身毒の孤独に引きずられ魅入られたのはカードゲーム(かるただっけ?)のシーン。
どこから現実でどこから夢の世界なのか。
その境界が曖昧な中で繰り広げられるその場面は、家族のどこにも所属していない自分を際立たせ、孤立させる。
いいようもない、引きちぎられそうな切なさに思わず我が手で抱きしめてあげたくなる。
あぁやっぱりすごいよ竜也くん。
ふらふらと歩み寄ったのは仮面売りの屋台。
そこで異世界に踏み入ることのできる穴の存在を知る。
そこでなら母に会える、と知りためらうことなく、いや、一瞬ためらったのかな?
そこらへん記憶があいまいだけれど、穴に入ってからは一途に母を訪ねて三千里状態。
っていうか、鬼気迫る勢い。
やっとみつけた母。
あたたかくやらかく自分を受け止め抱きしめてくれる。
そのぬくもりに酔い痴れる身毒のあまりの狂喜乱舞なサマにふと寒気を覚えたのは何でかな。
愛しすぎた代償はすぐに与えられる。
母の顔は継母撫子になっていた。
混乱と絶望の瞳の身毒も、、同時に禍々しささえ感じさせる撫子も恐ろしいほど魅惑的。
特にMなわけでもないのにどこかいたぶられる身毒に快感・・・なのはヤバイ感情?私の本性?
ってことで、今宵はここまで。
やはりまたつづくのであった。