『イノック・アーデン』 名古屋市芸術創造センター
2009年1月15日(木)19:00開演 1階12列41番
【原 作】アルフレッド・テニスン
【作 曲】リヒャルト・シュトラウス
【演 出】白井晃
【出 演】石丸幹二
【ピアノ】石野真穂
【物 語】(パンフレットより)
波が打ち寄せる浜辺。
イノック・アーデンは聡明闊達でだれからも愛され、しっかりと自分の意思を持った少年だった。
幼なじみであるアニーとフィリップと仲良く遊び、共に成長していったが、
いつしかイノックとフィリップはアニーに淡い恋心を抱くようになっていた。
成人した彼らは、胸のうちをはっきりさせたイノックが、アニーを妻として迎えることとなり、
盛大な結婚式を挙げて幸せな家庭生活の一歩を踏み出した。
いっぽう、想いを言葉に表すのが苦手なフィリップは、二人の結婚を黙って見守るしかなく、
日増しに心を閉ざしていくのだった。
漁師の働き頭として活躍するイノックは、家庭を愛し、子宝にも恵まれ、平和に過ごしていた。
ところがある日、イノックは戦場で足を滑らせ怪我を負い、職を失ってしまう。
しかし、生まれたばかりの3番目の子供は体が弱く、イノックには金が必要だった。
漁師として大勝負に出ることにした彼は、高い報酬が約束された獲物をとらえるため、
遠洋にまで漁に出ることにした。
そして、不安がる妻を、心配ない、と押し切り、旅立って行ったのだ。
そして幾年もの時が過ぎ去り・・・。
***********************************************
石丸さんの劇団四季退団後の復帰第一作でした。
そして朗読劇。
いつ以来かなぁ?と思い起こしてみたら2年前の春の『ブラック・コメディ』以来です。
あの当時よりちょっとスリムになって、なんだか若返ったような雰囲気がありました♪
舞台はピアノが一台。
椅子と、サイドテーブルの上には水差しとグラス。
バックに入江のある海沿いの風景のスクリーン。
いたってシンプル。
まずはピアニストの女性が登場して位置につきます。
シーーんとした会場ながら、久々に石丸さんと再会する喜びでなんだか密やかに華やぎつつ熱い空気とでも申しましょうか。
はい、ようするに私も同行の友人も含めてみんなどこか浮き立ってたようです(笑)。
そこへ、そんな気持ちを更に煽るスッキリし白いシャツに黒のロングジャケットをまとっての登場。
声にならないため息が聞こえそうなくらいみんなでうっとりです。
昔からノーブルな雰囲気を持っておられましたが、それが一段と増したかのような、まさに貴公子です。
そして右手に持っていた本はそのまま、左手でスッとジャケットの裾を軽く捌いて椅子に座ります。
・・・・・・・・・・・
うきゃぁぁぁぁぁぁ。
なんで、なんで椅子に座っただけで、軽く裾をさばく仕草だけでこんなにも萌えてしまうのでしょうか???
全く、自分でもアホだなぁと思いますがどうしようもありません(笑)。
悔しかったのは、後日東京で観たという友人と話していたとき、私のツボを予想してことごとくBINGOだっだっていうことです(爆)。
まぁね、私の好みを知り尽くしてるんですから仕方ないって言えば仕方ないんですが。
さて、舞台に戻りましょう。
実は私は朗読劇は初めてでした。
どんなカンジかなぁとか、もしかしたら失礼ながら眠くなったりとかしちゃわないかしら?などと心配もしたのですが杞憂でした。
第一声に、あぁ石丸さん帰ってきたなぁ♪とかやっぱりいい声だわ♪とか、邪念はいりまくりでしたが(おい)、
すぐに物語世界に入り込んでしまったのです。
朗読劇といってもただただ本を読むだけでなく、
その本を持って立つ姿座る姿もどちらもすっきり伸びた背筋とすらりとした指先までステキで、
その上で時に立ち上がり、時に身振り手振りで、(ただし片手でね。もう片方は本を持っているので)
そして時に跪いたり←ここも萌えポイント高し!!!(笑)
思ったより舞台上を動き回ってくれました。
登場人物ごとに声色をかえるのはもちろん、もともと役者さんですから感情表現も見事です。
いつのまにかそこに確かにイノックがいたし、フィリップがいたし、アニーももちろん。
ある時は入江に、森に、屋敷に、時に無人島に、そして確かに宿屋のベットもそこにあったのです。
嵐で無人島に流されてもなんとか生き延び、カラダがボロボロになっても帰りたかった愛する家族のいる故郷で待っていたのはあまりに辛い現実。
長年待ち続けた夫の死をようやく受け止め、その間、ひたすら彼女とその子供らを陰から支え続け、
気持ちを向けてくれるの待ったフィリップらの新しく出来上がってしまっていた家族。
団欒の場をそっと覗き見た瞬間のイノックの切なさ辛さときたら、
見てる(実際は聞いてるだけなのに)こちらの胸までえぐられるかのようで。
えぇ、確かに幸福な家族がその場にあったし、胸を締め付けられるイノックもその場にいたのです。
そうやって様々な人物たちの胸中を存分みせ、風景を場面を描いて魅せてくれた舞台、大満足でした♪
バックの入江の風景は日の出だったり夕日だったり、嵐だったり、南の島になったりとその色合いの変化だけで充分見せてました。
そして照明も必要最小限にとどめ、それがとても効果的でした。
ピアノももっと全編流れるのかと思ったらそうではなく、
シンプルな舞台だからこそ過剰に過ぎることなく朗読が生きるように演出されてましたね。
白井さんならではの「大人の舞台」といったところでしょうか。
それにしても石丸さん。
美しい姿だけでなく、耳から心の深い場所まで存分に届く心地よい声。
口跡の美しさは四季出身のベテラン俳優ならではでしたしね。
そしてやはり役者としても素晴らしい人だと改めて実感しました。
今度はミュージカル『ニューブレイン』ですね。
美しい歌声、今回とは対照的なコミカルな演技(たぶん。コメディなので)がとってもとっても楽しみです♪