2010/02/01(月)19:54
(1)被害者
GOGO花園って何?って方は、第一回のコチラから
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闘魂 コンバット史恵さんの巻 (1)被害者
佐々木史恵は落ち込んでいた。まだ昼過ぎなのにぐったりして、今日は夕飯の支度を放棄することに決めた。もういいや。昨日出前を取ったけど、今日も何か取ろう。子ども達はいつもの調子できっと喜ぶし、夫はどうせ出張中だ。
事件は昨日の午前中に起こった。昨日史恵は友人の潮田奈美と買い物に行き、路上で首絞め強盗に襲われてしまったのだ。
幸い、盗られたものは何もない。それどころか史恵は強盗に立ち向かっていってたおし、て警察に突き出した。被害といえば、その後警察に言って事情を聞かれた数時間の時間と、強盗に襲いかかられた時に膝できた擦り傷ぐらいだった。しかし史恵は何か精神的にひどいダメージを受けていた。
強盗に襲われたと告げると、誰もが史恵を気遣ってってくれた。警察に通報してくれた商店街のおじさんは、自分が店先で座っていたプラスチックの椅子を勧めてくれた。一気にに放出されたアドレナリンに振り回された身体が抜け殻のようになった史恵は、お尻から落ちこむように座り、その安っぽい椅子はかなりぐらついて、おじさんをあわてさせた。警察についてからも、いつもは怖くて近寄りがたい警察官も、微笑を浮かべてお茶まで入れてくれた。どこからかつれてこられた日本語のしゃべれる婦人警官も親切で、史恵の傷を一番に気遣ってくれた。電話で話した領事館の在外邦人の生活安全の係りの人は、いろんな被害の報告に慣れているのか、あくまでもクールであったが、その言葉の端々からはいたわりの気持ちが感じ取れた。
そんな人たちが皆、史恵が反撃に出て相手を倒したことを知ると、非難がましくなる。なんて馬鹿なことを。そんなことをして、相手を逆上させたらどうなってたと思うんですか? どうしておとなしく盗られなかったの? 相手が武器でも持ってたらどうするの? 殺されてたかもしれないよ。本当にそのとおり。史恵自身がよくわかっている。もし相手がナイフのひとつでも出してきてたらと思うと、自分でも震えてくる。ホントにどうして、あんなことしちゃったんだろう。
(続く…)
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