|
カテゴリ:闘魂 コンバット史恵さんの巻 (完結済)
ははのなやみボクシング
しかし史恵が吸い込まれるようにボクシングに熱中していったのは、ブルースの熱意ばかりによるものではない。彼女自身の心の中でたまっていたものが流れ出る先を探していたのだ。 そのころ、史恵は壁にぶち当たっていた。考えることといえば、自分の子育てという仕事のことばかり。果たして自分はうまくやっているのか? 誰にも訊けなくて毎晩自問するのだが、答えが出せない。小さいころから努力すれば結果が出ると教えられたけど、結果って何? 成功って何? 幸せになることとしたら、何が幸せ? 子どものころは、もっと単純だった。練習すれば自転車に乗れるようになったし、勉強すればテストの点はよくなった。どうしてもだめだと思ったクロールの息継ぎも、決死の覚悟でスイミングスクールに通ったら、10歳の夏の終わりにはそれなりにできるようになっていた。得意と苦手はあったけど、努力と結果は自分で納得がいく程度に対応していたと思う。 でも、だんだん、そう簡単にも行かなくなってきた。大学生のとき、どんなに力を入れても超えられない級友がいた。必死で書いていった得意科目のレポートで、クラスでふたりだけにAプラスがきても、担当教授は彼女のほうを褒めちぎった。じぶんのは努力の結果のAプラスで、彼女のは才能のなすところだと思った。 それでも、今考えるとあれはまだ良かった。あのころは結果がすぐに出た。今、自分が毎日一生懸命やってる、子育てという仕事はちがう。結果なんてどこにある? 母として子供たちのためになるように、日々努力している…つもりはつもり。バランスのよい食事を作って、規則正しい生活をさせて、将来役に立つような習い事をさせて。友達づきあいや、親戚との付き合いも大切だと思う。でも、何事もほどほどに。子どものためにやりたいことも、やらせたいこともはいくらでもあるが、我慢も大切。出したい手をもうひとつの手で押さえるように、どうしたらいいものか、母は一人悩む。 そんなことを考えながら、毎日こまごまとしたことを片付けてるうちに、ぐったり疲れてしまう。そして一週間がたって、一ヶ月。毎日その繰り返しだ。楽しいこともあるけど、それはおまけであって結果ではない。そう、子育ての結果なんてそう簡単に出るもんじゃない。毎週金曜日の漢字テストで娘が30点満点を取ってきてもそれは彼女の結果で、私のではない。この仕事の結果は、あと何年したら、どんなふうに出るのだろう。 にほんブログ村 悩める駐妻の道しるべが見つかるかも にほんブログ村 迷ったら…息抜きにもっと小説読みませんか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年01月22日 15時20分00秒
コメント(0) | コメントを書く
[闘魂 コンバット史恵さんの巻 (完結済)] カテゴリの最新記事
|