******** X'mas 企画 15 days of Christmas in 花園***********
サンタクさんの贈り物 第12夜 いざ豪豪花園
王家での職を失ったリンホンは、その後の数ヶ月、仕事を転々とした。住むところがなくなったので、できれば次も住み込みの仕事を見つけたかったのだが、運悪くそういった仕事は見つからなかった。リンホンは、家政婦養成所の所長のもとに駆け込み、とりあえずの仕事とともに、同じ省から出てきている出稼ぎ家政婦達を紹介してもらい、彼女達のアパートに間借りして、通いの仕事に出ることになった。
所長が紹介してくれた仕事は、今度2人目の子どもを出産予定の奥さんのいる家で、産褥の奥さんの世話が落ち着くまでの短期間のものだった。そしてその仕事が終わったあとも、運悪く次はなく、リンホンはその後数ヶ月、似たような臨時雇いの仕事を続た。仕事にあぶれて家にいる日が多かったので、国許に満足な仕送りもできなかった。王家での仕事は辛いと思ったが、臨時雇いの仕事を続ける日々はもっと辛かった。
これでは出稼ぎに来ている意味がない。もう、田舎に帰ろうかと思っていたある日、数週間前に病欠の家政婦の補填で入ったH港人の家庭の奥さんから電話があった。
「リンホン、私よ。この前お世話になったマギー。あなた仕事見つかった?」
「それが、なかなかタイミングと条件が合わなくて...。」
「見つかってなかったら、私の友達のところに行ってくれない?ウチの近くの豪豪花園ってところに住んでる、私の日本人の友達のところ。鈴木さんって言うんだけど。彼女、あなたがウチにいる間に、遊びに来たことがあって、あなたの働き振りを見て気に入ったから、ぜひ来てほしいって言ってるのよ。」
ああ、たしかにそんなことがあった。マギーさんのうちには一月弱いたが、
社交家のマギーさんは、しょっちゅう友達を家に呼んでいた。外国人の友達も多く、西洋人がたくさん来ることもあれば、日本人ばかりのときもあったっけ。
「あなたが住み込み希望なのは知ってるけど、鈴木さんは通いが希望。でも、その分、お給料も上乗せするって言ってるから、悪い話じゃないと思うんだけど。」
C国のお手伝いの給料は、住み込みのほうが通いより安い。住み込みのほうが、長時間使われて休む暇もないので、より高給をもらってもよさそうに思えるが、そうではない。住み込みは、出稼ぎ労働者にとっては家賃の心配がない分だけ給料が安くなる。寮完備の就職先というわけだ。
仕事のチャンスというのはどこに転がっているかわからない。もう、田舎に帰る潮時と思っていたときに、自分の知らぬうちにで見初められ、仕事が転がり込んできた。初めての外国人の家庭で不安だったが、もうそんなことは言ってられない。
こうして、リンホンは豪豪花園の日本人家庭、鈴木家の家政婦になった。初めに入った、王家時代のお手伝い仲間のひとりのお義姉さんが、高給をもらって働いてたという、外国人住人が大半のコンパウンドだ。
(つづく…)
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