亜熱帯甲殻類の生命を守る隧道@大宜味村「カニさんトンネル」
(カニさんトンネル)沖縄本島北部の「ヤンバル/山原」の森に「大宜味村/おおぎみそん」があります。この自然豊かな村の最北端で西海岸線沿いに「カニさんトンネル」と呼ばれる隧道が通っています。「田嘉里川」河口の西側約200mの位置で「謝名城集落」の北側を通る国道58号線の地下にトンネルがあり、その名称の通りカニやヤドカリ等の甲殻類の為に造られたトンネルとなっています。「カニさんトンネル」の周辺は沖縄本島西海岸では珍しいマングローブ林があり、この場所には泥が溜まり穴を掘り易く涼しく、さらに餌も摂りやすいため「オカガニ」にとって良い住処となっています。それと同時に海岸へ渡る甲殻類の交通事故が多発する場所でもあります。甲殻類のロードキルを減少させる目的として1996年に「カニさんトンネル」が完成しました。(カニさんトンネルの陸側にある墓地)(カニさんトンネルの入り口)(カニさんトンネルの内部)「カニさんトンネル」の陸側には墓地の丘陵となっており「オカガニ」や「オカヤドカリ」が多数生息しています。トンネル内部を覗くと海岸に続いており甲殻類が上手くトンネルの入り口を見つけられるように誘導の為のコンクリート壁が設置されています。さらに通常は海岸に生えている木々を植えたり砂浜を敷き詰めて甲殻類がトンネルに入り易くする為の工夫がされています。「オカガニ」類は陸棲のカニで沖縄本島では「オカガニ・オオオカガニ・ヘリトリオカガニ・ムラサキオカガニ」の4種が生息しています。「オカガニ」は陸棲でありながら幼生期を海で過ごすため、繁殖期になるとメスのカニが放卵のために海岸に降りる習性があります。5〜12月の満月前後の夜に満潮時刻になると一斉に身体を震わせて放卵を開始します。(カニさんトンネルの海岸側)(海岸側から見たトンネル内部)(海岸側の波消しブロック)「オオヤドカリ」は亜熱帯の気温に適した生き物です。気温が15度を下回ると活動が鈍り仮死状態に陥り、この状態が長く続くと「オオヤドカリ」は生存できません。アダンやグンバイヒルガオ等の海浜植物の群落付近に生息し、昼間は石や岩の下に隠れています。一般的なヤドカリは海生で水上にあまり出ないのに対して「オオヤドカリ」は陸上で生活をする為、脚やハサミが太く頑丈である特徴があります。また陸上での生活に適応するために貝殻の内部に少量の水を蓄え、柔らかい腹部を乾燥から守り陸上でのエラ呼吸も可能となっています。「カニさんトンネル」の海岸側は波消しブロックに隣接しており、放卵する満潮時刻には海水が目の前に達ています。さらに、防波堤には「カニ渡りネット」が設けられトンネルを利用しない甲殻類も防波堤を上手く越える事が出来ます。(カニさんトンネルの案内板)(カニさんトンネル)沖縄の方言で「カンダクェーガニ」と言う「オカガニ」や、方言で「アーマン」と呼ばれ国の天然記念物に指定されている「オオヤドカリ」の他にも「カニさんトンネル」周辺には「ベンケイガニ」や「カクレイワガニ」も生息しています。周辺の防波堤には甲殻類が爪を引っ掛けて登る為の切り込みが刻まれ、垂直に立つ縁石に斜めの切り込みが入れられています。さらに甲殻類が道路に出ないように高さ50cmの「エコパネル」が設置され、横断水路の入り口斜面を穏やかにしたり上り易くする為の工夫が施されています。その結果「カニさんトンネル」設置後、甲殻類のロードキルの件数は減少しています。『内閣府 沖縄総合事務局 北部国道事務所』は甲殻類のロードキル撲滅に向けてドライバーに走行注意や減速運転を呼びかけています。