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2012年04月29日
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テーマ:お勧めの本(7270)
カテゴリ:読書


ミゲル・デリーベス著の「ネズミ」という本を読みました。同じ著者
の作品「異端者」と「糸杉の影は長い」を読んでいるので3冊目に
なります。

この著者の作品で最初に読んだのが「異端者」でタイトルとミゲル
という名前が気になって(チェーザレを読んで以来ミゲル・アンジェロ
ジョヴァンニという名前にはすぐ反応してしまう)読み始めたのですが
長編で複雑な時代背景にも関わらず夢中になって読めたので、この
作家とは相性がいいと思いました。次に読んだ「糸杉の影は長い」も
相性がよかったので、これはもう間違いない、それなら同じ作者で日
本語に翻訳されているものは全部読んでみようと3冊目に手にとった
のが「ネズミ」です。

ところがこの本は前の2冊に比べてすごく読みにくかったです。ページ
数はずっと少なくて、登場人物もほとんどがあだ名で呼ばれているの
で(外国の作品は名前や地名を覚えるのが大変)読みやすいかと予想
したらそうでもない、読んでいても字を追っているだけで全然内容が頭
に入ってこなくて、ついウトウトしてしまう(笑)相性の悪い本でした。

粗筋を簡単に書けば12歳の少年ニーニが主人公で、彼はネズミ捕り
をしているお父さんと一緒に洞穴に住んでいます。スペインで内戦後の
フランコ体制の時代、貧しい農村が舞台です。ニーニは学校に行ってな
いけどとても賢く村の大人からも頼りにされています。でもお父さんの
ネズミ捕りは4語以上の長い言葉を話さず、昔ながらの生活にしがみつ
くだけ、お母さんは精神病院に入れられたまま戻ってこないという大変な
境遇の子です。

このニーニを中心にネズミ捕りの生活や農村での他の人との関わりが
書かれているのですが、とにかく文章が単調で、ニーニも必要最低限の
ことしかしゃべらないのでイメージがつかみにくく眠くなってくるわけです。
「糸杉の影が長い」では主人公が自分の子供時代から振り返って雄弁に
性格を語ってくれるので共感しやすいのですが、ニーニの場合は全然
自己分析しない、本当に自然の中で、大昔の言葉がない時代に育った
ような子です。他の登場人物も似たような感じで、しゃべってはいるのだ
けど言葉によって世界を作ってはいない、人と人とのコミュニュケーション
が成り立っていないのです。うーん、こういう村で暮らすのは大変そうで
す。同じスペインの内戦とフランコ体制の時代が舞台になった別の著者の
作品「風の影」では本、言葉によって作られた世界が主人公とその周囲の
人間の運命を大きく変えてしまうのですが、「ネズミ」の登場人物は言葉
ではなく暮らしている村での生活、作物がよく取れたか、家畜の状態は
どうか、そしてニーニとネズミ捕りはネズミが取れるかどうか、自分達の
生活を邪魔されるかどうかが生きることのすべてになっています。

単調なはずの村の生活もフランコ体制になったことでお金の価値が大きく
変わって今までの仕事ができなくなった人が出ます。そういう人が密猟者
になってニーニがかわいがっていたキツネの子を殺すなどささやかな幸せ
をぶち壊します。コミュニュケーションというものがない人間関係なので、
密猟者にとってニーニは動物の居場所を知っているのに教えてくれない
生意気な子供でしかない、その子が喜ぶとか悲しむということはどうでも
いいのです。そしてお父さんのネズミ捕りも人との関係が作れず昔からの
やり方でネズミを捕って売ることしかできない(ネズミは食堂に持っていって
食材となる)だから自分のなわばりを脅かす別のネズミ捕りがきた時には
野生動物と同じに凶暴になり、話しあうとかいうことは一切ありませんでし
た。言葉が役に立たない世界は怖ろしいです。

この小説は詩的イメージを膨らませたり流れるような美しい文章というとこ
ろがなく、報告書のように淡々と出来事と噛み合わない村人の会話が続いて
います。最初にこの本を読んでいたら同じ作者の本を次々読もうなんて絶対
思わなかっただろうし、そもそも途中で挫折していたでしょう(笑)どうして作者
はこんなおもしろくない小説を書いたのか(これはあくまでも私の感想なので
こうした小説絵を素晴らしいと感じる人もいるかもしれないが)巻末の説明を
読んで少しその謎がとけました。ミゲル・デリーベスは長く新聞の編集者もし
ていたのですが、フランコ体制になってからは目をつけられて書く記事はすべ
て検閲され、不適切と思われた部分は削除されるという経験をしていました。
小説でも読んですぐイメージが膨らみ、作者が何を言いたいかわかったら、
真っ先に検閲にひっかかってしまうのでしょう。新聞記事に農村の厳しい生活
を書くことは体制側に嫌がられることだったので、新聞には書けない内容を
フィクションの小説で書いた、ストーリーがわかりやすく感動的だとこれまた
読者を煽っているなどとイチャモンつけられるから、わざと眠くなるような文章
にして検閲官をうんざりさせた、実際に検閲がどのような形で行われたかわか
りませんが、そんなことを想像してしまいました。

検閲がある厳しい時代、言葉が意味をなさない農村の生活、自分にとって想像
しにくいことばかりですが、そういう世界を知ったということで、おもしろいとか感
動したというのとは別ですが、この本もまた忘れがたいものになりました。

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Last updated  2012年04月29日 13時22分46秒
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