つぐない
映画「つぐない」を見てきました。新学期が始まってようやく生活も落ち着き、気分転換に何か映画を見ようと思っていたところ、お気に入りブログでこの映画のことが書かれていたので見に行きました。平日の初回でしたがかなり混んでいました。この映画、上映場所が少なくて、もっと多くの映画館で公開してくれればいいのにと思いました。出演者はキーラ・ナイトレイぐらいしか知らなかったのですが、パンフレットを見ると「エンジェル」主演のロモーラ・ガライや「ナルニア国物語」タムナスさん役のジェームズ・マカヴォイなど好きな映画の主要登場人物も出演していました。俳優さんの名前はよっぽど気になった人しか覚えていないので・・・でもジェームズ演じるロビーはすごくかっこいい役なので、あんまりタムナスさんと思って見ない方がいいです(笑)ネタバレしないように粗筋を紹介します。13歳のブライオニーはとても広いお屋敷に住んでいる作家志望の女の子です。両親と大学を卒業した姉セシーリア、たくさんの使用人に囲まれて暮らしていて、そこへ両親に離婚問題がある15歳の従兄弟ローラと双子の弟なども来ています。兄が休暇で帰ってくるために自分で書いた劇を上演しようとするのですが、ローラや弟達はあんまり乗り気でなくてイライラします。彼女は使用人の息子で一緒に暮らしているロビーに淡い恋心を抱いていました。その日、ブライオニーはロビーにあんまり関心なさそうでいた姉セシーリアと彼との危険な場面を見てしまいます。さらにロビーの姉にあてた手紙を読んでしまい、2人の情事も目撃して嫌悪感は最高潮になり、その夜起きた事件の犯人がロビーだと嘘の目撃証言をしてしまいます。そのためロビーは3年半刑務所に入れられ、刑期を短くしてもらうために兵士となって戦場へいきます。その間もセシールはずっと変わらずにロビーを愛し続け家を出て看護士となり手紙のやり取りをしたり短い休暇に会ったりします。18歳になったブライオニーは大学に行くのをやめて看護士見習いの仕事をし、姉に全てを告白して許しを得ようとするのですが・・13歳のブライオニー役の女の子の演技が素晴らしいです。華やかで美しい姉に比べ、どちらかと言えば地味で目立たない顔立ちですが、才能に溢れそれゆえ傲慢で残酷でもある少女を見事に演じていました。最初医者を志すほど頭のいいロビーを使用人の息子だから住む世界が違うわと無視していたセシーリア、そんな姉がどうして自分が憧れているロビーとそういうことになるのよ!とブライオニーが怒る気持ち、よくわかりました。おそらく姉が最初から彼に好意を持っている素振りをしていれば、ここまで嫉妬はしなかったでしょう。でもセシーリア自身、身分の違いということが邪魔をして自分の気持ちに気付かずにいたのでしょう。彼への愛を知ってからは家を出てまでして純愛を貫きます。ロビーが犯人として逮捕された事件、後で真犯人を知れば何年も刑務所に入れられるほどの罪を犯しているようには思えないのですが、その当時のイギリスの社会、使用人の子が犯した罪ということで厳しくなってしまったのでしょう。きっとブライオニー自身そこまで罪が重くなるとは思ってなく成長するほどに良心の呵責を感じたのでしょう。上流階級に生まれながら大学には行かず看護士として過酷な仕事をこなす中で少しでもつぐないをしようとします。18歳のブライオニーを演じるロモーラは華やかなドレスを身に纏ったエンジェルとはうってかわってほとんど白衣で顔や髪型も地味でしたが、強い意志が感じられました。どちらも作家の役ですし、イギリスの上流家庭が出てくるなど似ている部分もある役を全然別の人間としてはっきり演じ分けているのはさすがだと思いました。ブライオニーに関しては最後もう1人ベテランの女優さんが演じています。最後の場面は短いのですが、それまでの場面を覆すような驚くべき告白をしています。ロビーがフランスからイギリスに引き上げてくる場面など、大変だったことはわかるけどなぜそのシーンばかりあんなに長くしていたのか不思議だったのですが、最後の言葉で納得できました。ブライオニーがつぐないをすることができたのかどうか、これは見る人によって意見が分かれると思います。私は贖罪は終わっていない、彼女は自分の罪の意識すら小説を書くために利用している、と感じました。物語も複雑で出演者の演技もよく素晴らしい作品でしたが、その一方どうも主人公の女の子に対して冷めた目で見てしまって、泣く場面は少なくなってしまった映画でした。物語として充分泣ける話なのにどうも素直に感情移入できない、女の子が主人公の映画だと微妙な気持ちがわかるけど突き放して見てしまうようです。これが男の子だとけっこう感情移入しやすく、特に12,3歳の健気でかわいい子が運命のいたずらで大変な思いをし、裏切られたり不幸になってもなお友情を貫く、なんていうタイプの話だと号泣まちがいなしなのですけれど・・・