いつか蝶々になる日

　ＮＨＫですごいドキュメント番組を見た。

　同時３点ドキュメント 「奇跡を祈った90分」


　この前行われた、ワールドカップにおける、日本対ブラジル戦。

　その試合を、全く立場が違う３人の視点で見ると言うものだ。


　 (a) 若い頃に日本からブラジルに移民した初老の男性

　 (b) スポーツマーケティング会社のビジネスマン

　 (c) 白血病に冒されたサッカー好きの少年。



　(a)ブラジルのサンパウロにある日系人街にて

　街の一角で日系ブラジル人が集まってこの試合を見ている。

　二つの祖国を持つ人々。

　皆一本にカナリア色と日の丸色が入ったハチマキを巻いている。

　どちらの色を前にするかで、その人がどちらの国を応援しているのかがわかるのだ。

　戦後まもなく日本からブラジルに渡った男性は、前半戦はブラジルを応援。

　それは自分を幸せに導いてくれたブラジルへの感謝の気持ちらしい。

　でも後半戦になると彼は日本を応援し始めた。

　ブラジルに立ち向かう日本選手の姿に、若い頃の自分を重ねたのだ。


　(b)スペイン・マドリードのスポーツマーケティング会社にて

　優秀な選手を世界中から発掘し、有力なクラブチームに紹介する会社。

　日本選手が世界に通じる良いプレーをすれば、ビジネスチャンスが生まれる。

　試合中にバルセロナ（！）から、「タマダ」について問い合わせが来ていた。

　この試合から、ビジネスチャンスを見出すことができるであろうか。


　(c)名古屋の一家庭にて

　白血病に冒された一人の少年。

　病状は安定しているが、いつ深刻な事態になるかわからない。今度骨髄移植を受ける予定だ。

　彼は大好きな中村俊輔選手と約束を交わした。ブラジル戦でゴールを決めることを。

　病魔に立ち向かう勇気。それを分けてもらうことを望んで・・・。




　試合の最後の方で中村選手のフリーキックがあった。

　もうブラジルに大きな差をつけていたが、３人はフリーキックを入れて欲しいと望んだ。

　理由は皆それぞれ違う。

　でも結果は失敗。奇跡は起こらなかった・・・。

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　紹介された人々はこれだけじゃない。


　ブラジルにいた、日系３世のサッカー選手。

　彼は自分のルーツである日本でプレーすることを望んでいる。

　まだ行ったことが無い日本のことを考えながら、日本選手のプレーを見ていた。

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　日本対ブラジル戦の裏でやっていた、オーストラリア対クロアチア戦。

　それを見ているオーストラリアのクロアチア系移民。

　実はオーストラリアはクロアチアをルーツに持つ人が多い。

　オーストラリア代表選手にも数人いる。

　クロアチアが負けると、皆呆然としてしまった。

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　バルセロナに住む、耳の不自由な少女。

　彼女はバルセロナに所属し今回ブラジル代表で出場したロナウジーニョに、以前ゴールを決める約束を果たしてもらったことがある。

　ブラジルが勝つと、家で大はしゃぎした。

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　ピッチと言う、ほんの小さな場所でたった２２人の人間がすること。

　それを世界中の何億と言う人々が、様々な想いを持って見ている。

　一瞬のプレーにハラハラし、その結果に大喜びしたり、失望したりしている。



　世界には様々な人がいる。

　それぞれに立場や背景が異なっている。

　でも世界は一つである。