鳥肌が立つ、ものすごい一手!
父から譲り受けた碁盤で棋譜並べをする時間は、落ち着きます。早く起きた朝は、鳥の声を聴きながら棋譜並べを楽しみます。「秀行 百名局」の第2局をご紹介します。「囲碁倶楽部」全七段対初段戦昭和17年5月17日 日本棋院黒:二子 初段 藤沢 保白:七段 小野田千代太郎【黒32】これを見たときは鳥肌が立ちました。なんと、ものすごい一手です。のちの藤沢流が早くもうかがえます。黒32でCとツケるようでは、白74とはずされて感心しない。白31の一子を重くさせるのが黒32の意図。白33で36なら、そこでCのツケがぴったりです。白33でDなら、黒36と切って、なにがなんでも戦いに引きずり込もうというのでしょう。引退の記者会見で思い出に残る一手を問われ、黒32をあげました。単なる指導碁ですが、会心の一手だったのです。意表の強手を喫して白33・35と苦心惨憺(くしんさんたん)したものの、黒36と戻って大いに分かりやすい。 (秀行 百名局 高尾紳路 より)