ら組三番町大安売屋碧眼の魔術士

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  スローなブギにしてくれ

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　倉庫番でしかなかったはずの聖騎士が、次第に自己主張を始めた。　　コエリスの碧眼を忙しさにかまけて放置しているにも係わらず、僅かな時間があれば、まだ若い聖騎士を大陸に連れ出している。　魔術士以外と真剣に向き合うのは初めてなので、『彼』の動きの一つ一つが新鮮で、目新しい。　　新しい玩具を手に入れた子どものように、今は夢中になっている。　　 　　傍で見て思っていたことが、実際に触れてみると随分と違う。やはり、体験してみなければものごとはわからない。　　とりあえず、王の大赦は渡さずに行かせることにし、復活の妙薬と各種装備だけは、自分が用意している。　実際、買い物をする時もこちらの口座から落ちるわけだから、上限無しのクレジットカードを渡しているようなものだ。　　冗談めかして、『彼』のことを『愛人』と呼んでいるが、実際の行動も、その名の通りだろう。　　 　　同僚たちにが寝静まった後や誰もいない早朝を狙って、そっと『彼』を連れ出す。　『彼』として大陸に降り立つと、存在が知られていないこともあって、普段のように誰かから話しかけられることもない。　　時折、両手斧の愛弟子がナイフ遣いの魔術士に姿を変えて来てくれるが、『彼』としての行動のほとんどは単独行だ。　まだ、師匠や同業組合の仲間たちと出会う前のように、黙々と（復活の妙薬を湯水のように使いながらではあるが）狩りを続けている。　　 　　試行錯誤をしながら、聖騎士について書かれた文献を読み漁りながら、知力と体力に傾斜した能力を割り付けて育てている。　魔術士のための、壁にもなれる庇護者を育てたいと思った次第だが、気がつくとステータスの割り振りが、自分とまったく同じ比率になっていた。　　実際のところ、薬剤購入の膨大な資金源無しには生きていけない存在で、独立財政では階級を上げて行く術はなさそうだ。　ようやく、愛弟子の分身の魔術士と同じ位の階級にきたので、あとは、金の衣を着た魔性の魔術士でも誘って、少しづつ経験を重ねていこうと思う。　　 　　ゆっくりと行くのがいい。　一番楽しい時代を生き急ぐ必要なんかない。　　最近、妙に緋の衣に身を包むまでの窮屈な時代が懐かしいのだ。お金も立派な装飾品も何もなくて、いつも窮していた頃が。　年をとって来たせいなのだろう。若いということにやけに夢を見てしまう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年03月13日

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  友、帰る

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　しばらく休暇をとっていた友人が、続々と大陸に帰ってきている。　同盟戦争が始まるということもあるのだろうし、現実の世界で学びの途にある者は、休暇に入った為もあるのだろう。　　けれど、仲間に会いたくて戻ってくれたようで、それがまた嬉しい。　　 　　引退式や卒業式と称したものに出なくなって久しいし、休止宣言をした友人に対しても「さよなら」は言わないできた。　　渡す言葉は「いってらっしゃい」だけだ。　　だから、懐かしい名前を見かけた時に言う言葉も「おかえりなさい」しかない。　そのまま「久しぶり」と声をかけて話し出すこともある。　　こちらは大した進歩もないままだから、相手の装備からそう離れてもいない。　　 　　勝手な思い込みからだったのだが、休止した友人に残された縁故者、例えばその師匠や弟子とは出来るだけ付き合いを続けるようにしてきた。　　最も身近な存在であるものの喪失感は大きい。　　それを埋めるだけの存在になれるとは思わないが、寂しさを紛らわせるぐらいの話し相手にはなれたらいいと思ってきた。　　けれど、久しぶりに顔を出した師匠にはしゃぐ友人を見ていると、帰って来てくれることに勝るものはないと実感する。　　 　　たまにでもいいのだ。　友人と話すために、友人とのんびりと狩場に出るために、時折、大陸に戻れるような契約形態があればいいのだが。　　ネットカフェでは個人のアカウントでログインができるが、時間単位とか数日単位でのチケット制のようなものがあればいいなと思う。　　ゲームとしての場所より、人との交流の場所としての価値を見出しているだけに、引退や休止がそのまま人との関係を切ることに繋がるのは寂しい。　　 　　そろそろ前師匠が帰ってきてくれないかとも思うこの頃だ。　どうしているだろうか・・・　　とりあえず、自分はここにいる。　ここにいる限り、また会える日が来るかもしれない。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年03月12日

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  政治的な、極めて政治的な

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　最初の守備側同盟募集の審査は通らなかった。　　やはり５つの同業組合を確保することが第一条件だったようだ。　客観的に見て、攻撃して手に入れるだけの力は確保できないだろうし、最初の守備側、つまり最初の統治者の意味付けを考えて、自分が理想とする制度の提起を出したかったからの応募でもあった。　公言する機会もないので、考えていたことを記しておこう。　　 　　同盟戦争の意義は、週に一回のサンツスミコ攻防戦や、その前段の同盟作りや同業組合の仲間集めだけにあるわけではないと思っている。　　大陸を歩く全ての冒険者に影響を与えるもの、サンツスミコに関わる各種租税権とその果実の使い道にこそ最大の関心があった。　膨大な金額の税収をどう使うか、それをどう同盟内で配分するか、そして、どうタックスペイヤーたる同盟以外の冒険者へ還元していくか。　　マニフェストを具体的に明示できる同盟か否か。これは自分にとって極めて重要な課題だった。　これらの提示無くして、中立の立場になる冒険者がどちらにつくか、どのような対応を取るかは決めようもない。　　実は、最初の統治者となって、これを提示し、公正な統治の基本仕様としたいという思いがあった。　それ以前に、自分にとって同盟を結ぶということは、この政策を提示してOKが取れるかどうかだったから、安直には動けなかった。　　 　　自分が考えていたマニフェストは次のようなものだった。　　１　統治者は収支の完全公開を行う。　大陸での消費行動にかけられた租税である。全ての納税者はその使い道と適切な支出がなされたかを知る権利がある。　そして、統治者は行政者として、アカウンタビリティを有する。説明責任や情報公開の義務を負うことは当然と考えていただめだ。　　　２　統治者及び同盟員は租税収入を私財とせず、　公的支出とするもの及び同盟員の報酬を明確にする。　制度上、租税収入で個人的な物品の購入を行うことは許されない。　城門や聖櫃の強化経費、各種武器・消耗品購入費（リカバリー等）など、支出対象を何としているかを公開し、傭兵的な一時加入や中立軍で味方につく場合の謝礼も含めて、同盟員及び役職員に対する報酬額を明示していくべきとも考えていた。　　 　　３　納税者の苦情処理受付場所と対応機関を設置し、リコール制度を求める。　これも納税者の当然の権利だと思っている。直接選挙など、明確で公正な選出基準が無い以上、ただ同盟戦に勝利しただけでは、冒険者の信任を得たものではない。　税率の決定など統治者の行政に対して、明確な意思表示を出来る場所が必要であり、武力行使以外でのリコール方法も重要と考えたのだ。　　４　非戦闘員である冒険者への補償または代替となる権利を明確にする。　いわゆる『公共の福祉』の考え方だ。サンツスミコの攻防戦が他の冒険者に及ぼす行動の制限と権利停止状態は２時間余となる。　街では全ての冒険者が課税されることに鑑み、次のような補填策を考えていた。　（１）収益還元の為に相場価格より割引した公的バザールの開催（これは同時に高騰する相場を抑える公的資金投入的意味合いもある）　（２）同盟員による低階級の冒険者向け警護サービスや各種講座の開催など、公的人材無料派遣サービスの実施　（３）豪華賞品や参加賞を用意した、非戦闘系イベントの開催　　どれも、単なるばら撒き福祉政策ではなく、明確な参加の意志を持ってこそ甘受できるものとしてみた。　　 　　土曜日の抽選でその名誉を得た同盟には、ぜひとも独自の政策を提示して欲しいと切に願う。　　これらがなければ、単なる軍事独裁政権の圧政にしかならない。　税収を手にする者は、大陸の公僕なのだから、自治権のある大陸の良さを、今まで以上に伸ばして欲しいと思う　　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年03月11日

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  兵どもが夢の跡

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　夢でしかないとはわかっていた。　　あれはサンツスミコの街が大きく変わった頃だった。我らが最愛の戦乙女が街を見渡してつぶやいた。　　「ここにうちの旗を掲げたいねぇ」　　すでに回りの同業組合には骨董の鎧を着るものが出ていた。もちろん、同僚たちはそこに届きもしない。　それでも、彼女の言葉を聞きながら、確かに自分も夢想したのだ。　　この背に背負う旗が風に揺れる様を。　　 　　そして、パブリックコメントでの意見反映を経て、最初にサンツスミコを統治する者を公募するという公布がなされた。　希望者は３月１０日の１５時までに、所定の書式で応募せよと言う。　　何度、ペンを手に持って、そして書きかけの申請書を破り捨てただろう。　正式には同盟を結ぶ協定を結んだ訳ではなかったし、同盟の申し出があった所にも、何処が盟主となるかをあえて聞いてこなかった。　実際、協定を結ぶことからも、自ら名乗りを上げることからも、逃避していたというのが事実だろう。　　「うちは中立となって、死の商人でもするか」　締め切りの前夜にはそう同僚たちにも言っていた。　　 　　それなのに、締め切り直前になって思ったのだ。　　何もしないで様子見を決め込むなど、最低じゃないかと。　　　とりあえず、申し込み書類に同盟先未定で記入した。　そして【大バーゲン】と共に、現在管理を委任されている別会社、イベント専門の【ラピス催事場】が傭兵の受け皿となること。　戦士編纂作家が多いために、広告宣伝効果が期待できること。　楽しみたい人たちのための同盟であること。　　そんな思いを込めた申請書を投函した。　　同業組合長の旗を背負うことになって以来、考えてみれば初めて、たった一人で下した決断だった。　　 　　そして、今夜・・・　同盟戦争のお披露目会に、開始直前ようやくたどり着けた。　すでに両手斧の愛弟子や同僚たちは同業組合に加入を終え、守備か攻撃か、その立場を鮮明にしている。　　たまたま行き会った聖騎士に頼んでパーティに参加し、浪花商人が率いる同業組合にも加盟してみた。　現実の世界の都合で参加できないはずだっただけに、とりあえずは、雰囲気を味わうだけで良かった。　　報告はきっと愛弟子がいつものように聞かせてくれるだろう。　夢の大陸から放り出された後、自分は住み慣れた街へと戻っていった。　　 　　同盟が結べていない現状では審査通過は難しい。　けれど、強さや階級、装備の善し悪しなど関係ない集団を、楽しむために、素顔のままで集える場所を作ることをようやく決心できた。　　とりあえず、脱いで集まろう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年03月10日

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  命運もしくは業

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　近ごろコエリス神に見捨てられたような気分がする。　　毎晩、紅蓮の島を歩き回っているのだが、一時復帰したばかり同僚の経理部長の休暇前夜に初めて見て以来、次に必要となってくる素材が、何一つ入手できていない。　　ここは一つ、運試しでもしてみよう。　　 　　あなたのおたくタイプは【妄想倒錯型】に分類されました。おたく度数は【１２０％】ぐらいです。　自分の妄想の世界に没頭する傾向が非常に強いあなたは、まごうことなき「おたく」と言えそうです。あなたの興味方向はおもに二次元世界に向けられ、特殊な美的センス、特殊な嗜好傾向が既に確立されていることでしょう。　残念ながら重度のおたく症候群を患っているため、現実社会に戻るすべはないのかも知れません。諦めて、これからも「おたく道」をまっしぐらに歩んでいってください。　あなたにぴったりのおたく称号：おたくの真髄　　二次元妄想度　 100% 自己顕示創作度　 100% 強迫性知識欲望度　 100% 客観的冷静度　 16% 　　え・・・・と・・特殊な嗜好傾向は間違いないが、「あなたのおたく度チェック」と間違えていたようだ。　　　　こ、今度こそ、運試しをしてみよう。　　 　　あなたは【同性愛・ボーイズラブ系ヘンタイ】なタイプ。　あなたは異性よりも、同性同士の恋愛に興味がありそうなタイプです。マッチョなお兄さん、頼りがいのあるアニキ、あるいはやさしそうな青年に心を惹かれることがあるでしょう。女性の場合は、そういったカップリングを楽しむのが好きな傾向がありそうです。いずれにせよ、このタイプのヘンタイさんは世間で目立ちにくいようですが、その性癖は生涯続くことになるかも知れません。　あなたにぴったりの遊び場：ボーイズ・バー 　　幼女少年系倒錯度　 34% 自虐残虐系倒錯度　 100% 同性愛系倒錯度　 100% 電波系倒錯度　 27% 　　だから・・・ドロップ運や合成運が知りたいのだ。今さら自分のヘンタイ度を再確認してどうする・・・　　　　さすがにここまでくると、賢明なる諸兄はお気づきだろうが、いま一度運試しをしてみるしかない。　　 　　あなたのショタコン度は【１２０％】です。　ショタコン以外の何者でもないあなた。正真正銘のショタコン、ショタコンの真髄です。モノホンです。幼児誘拐、虐待は男性による女子犯罪のものばかりが目立っていますが、逆のケースの第一号にならないように気をつけましょう。　究極のショタはみずから男子を産み、理想どおりに育てることにこそ、あるかも知れません。　あなたにぴったりの称号：まごうことなきショタコン　　性癖倒錯度　 100% 二次元的倒錯度　 43% 母性本能度　 28% 社会現実度　 29% 　　ごめん・・・　自ら聖騎士育てている。愛弟子も虐待しているような気がする。　　ああ、なんと正確なデータに基づく診断ばかりなんだろう・・・　　　　さすがに最後は間違えることなく、フクロウの森にある「アルカナ」で占ってみた。　　 　　過去と現在、そして未来へとつながるタロットがめくられていく。　　いまは幸運のチャンスに恵まれているが、安定がかえって障害となっているらしい。　しかし、未来は希望に満ちているという。　　どんな未来が待っているのかは判らない。ただ自分の運を信じるしかないのだろう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年03月09日

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  彼女はそれを忘れない

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　その瞬間、彼女の足が止まった。彼には、一体何が起こったのか、想像も出来なかった。　　　いつも仲睦まじく狩り場に出ている２人だった。　　「今夜は粉でも集めに行こう」　そう話しながら砂漠に走り出て、彼女は気持ちよく矢を放っていた。　　「ねぇ、ここ、覚えてる？　それに、このマヌガン・・・」　「もーちゃんの沸くとこだろ？最近来ていなくたって判るよ。」　　突然、彼女は黙った。　そして、無言で街へと帰っていった。　　 　　初めてであった場所　初めて交わした言葉　初めてもらったもの　初めて・・・・があった日　　女子ってやつは、そうしたものを決して忘れない。記念日やら、記念品やら、記念の場所を山のように持っている。　　男子諸君・・・気をつけよう。君たちは常に墓穴を掘りがちだ。　些細なことと思っていても、そんなことを忘れただけでもうＮＧである。　　 　　で、両手斧の愛弟子が、７日の日記で何やら呆けたことを書いていた。　　大陸の政府広報の戦史閲覧室は、１２月を最後に評価がなされていないため、今月の評価－降順を０のままに、登録年月日－昇順で並んでいる。　　実は偶然にも同じ時期に戦史を綴り始め、同じ時期に登録していた。　そして、初対面の際に愛読者を自称する愛弟子は、登録したばかりのために未評価で、戦史の案内が並んでいることから、「お隣さんですね」と話しかけてきたのだ。　　 　　それが、こんなことを書いていた。　　　暫く見ない間に。以前はこんなに近くには居なかったはずですがどういうことでしょうか。　偶然でしょうか？いやしかし。　　　ほう・・・・ネタだな？　もちろん。　　 　　彼のとるべき道は２つだ。　　街に飛び帰り、ふくれた彼女をなだめるために誠意を尽くすか、女子と小人養い難しとばかりに、そのまま、砂漠で狩り続けるか。　　さて、貴方ならどうするだろう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年03月08日

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  初めての夜

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　全てが終わっていた。　　大陸への道が復活したのは午前３時過ぎだった。さすがに同僚も友人も、もう誰もいない。　同業組合戦の最後、世界から放り出されたのが午前０時。　シンデレラに魔法をかけた奴だって、ガラスの靴を残すくらいの猶予は与えてくれたはずだ。　　 　　落胆しながらも何気なく友人名簿を見ると、魔術士の愛弟子が起きていた。　すぐに呼び出して、師弟の挨拶を交わす。　同業組合戦や大陸から投げ出された一件を話すと、彼は目を輝かせて聞いていた。　　彼の率いる同業組合も模擬戦の経験がないという。それどころか、彼自身が対人戦をしたことがないらしい。　我が社の平均年齢と彼の所属のそれはかなり近いはずだし、拮抗の楽しさもありそうだ。　近いうちに少人数でやってみようかということになった。　　 　　深夜に師弟２人だけという、あまりない状況の気軽さもあったのだろうと思う。　経験がないならいい機会かもしれない。　　初めての相手に自分など、役不足な感は歪めなかったが、純真な愛弟子を闘技場に誘いだしていた。　しかも、いつのまにか愛弟子とのやり取りを横で見ていた友人、先日、同業組合を起したばかりの骨衣の魔術士とその友人も同行してくれた。　　日頃見慣れた相手でも、こんな時は多少の緊張感がある。しかも立会人までいるとなれば、恥ずかしい闘いは見せられない。　珍しくもネタ抜きで、片手の堅牢な装備で対峙することにした。　　 　　元々、自分は対人戦はとても苦手なのだ。それどころか、闘い自体が下手としか言いようがない。　それでも６歳の年齢差と多少の経験があったおかげで、一度も愛弟子に押し倒されないままでいることができた。　　そのうち、立会いの魔術士２人も含めた対人戦となり、１対１、２対２と色々な対戦を試すことになった。　同業組合戦で大師匠のテクニックを目の前で見られたことも幸いして、対魔術士戦のコツが何とはなしに判ってきた。　そのうち、自分でも予想もしなかった意外な結末を迎えたのだ。　　 　　え・・・・　　　気がつくとバトルロイヤルで生き残っている自分がいた。　こんな経験は初めてだった。　　装飾品に気を使ってきたことの影響が大きいのだろうが、同じ技の打ち合いになると、どうも無意味に体力のある自分には有利らしい。　ネタに走り、軟弱なるが故の硬さなのだが、これに加えて、所謂「プレイヤー・スキル」なるものがあったらどんなにいいかと思う。　　それにしても、初めての経験は愛弟子にとって思い出深いものになっただろうか。まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年03月07日

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  最強の敵、その名は・・・

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　いよいよ決戦の日がやってきた。　　・・・は大袈裟で、同業組合戦体験教室の日がやってきた。　　我が社の参加者は８名。５３歳の両手剣の戦乙女から６９歳の自分がなぜか筆頭という若輩集団だ。　それに対して、先方の木登り部は１０名。骨董衣を着た冒険者がほどんどである。　　本当に文字通りの『胸を借りる』体験教室である。　　 　　しかし、人数差はさすがにまずい・・・　見学中のＸ師弟聖騎士コンビを有無も言わさずに拉致して数をあわせた。　　まず、骨董以上の固さは生半可ではないことを体感できた。やっぱり魔術士の最大の敵は戦乙女の弓だということも再確認した。　　結果から言うと、階級や装備の差は埋めがたい。　傭兵として途中で引きずり込んだこの大陸一の魔術士のふんばりで、個人戦はこちら側の代表の勝利となったものの、イベント戦『肉壁』と団体戦は大量虐殺の世界、もう壊滅状態だった。　　 　　応援のやり取りや選手紹介で遊びのある会話ができる個人戦が、個人的には一番ツボにはまった闘いの方法だったように思える。　当然のことだが、団体戦やイベント戦では会話を楽しむ余裕すらない。　団体戦をパーティ対抗ではなく、柔道などの団体戦のように、大将、副将を置いた勝ち抜き戦形式にすると面白いなどと、考えながら見ていた。　　ちなみに、個人戦で、何名も抜き去っていた先方２番目の選手、黒衣の魔術士と９番目の自分が対戦することとなった。　負けたら同業組合長から降りろと脅されていたが、何とか２名を勝ち抜くことが出来て首がつながった所だ。　　 　　木登り部の皆さんにとっては蚊が止まったような闘いだったと思うし、貴重な時間をお付き合いいただき、本当に感謝以外の何物でもない。　みなさんのおかげで同業組合戦のすすめ方や運営、しっかりと勉強させてもらうことができた。　　そして、何気なく見物に来たまま引きずり込まれた大師匠にも感謝したい。　魔術士の対人戦の闘いのあり方、テクニックの全てを、目の前で観戦することが出来たのは予想外の収穫だった。　双子の兄の魔術士、その仮初めの姿である戦乙女と、ホットラインで興奮しながら大師匠の闘いぶりを語り合ってしまった。　　 　　ああ・・・だけど・・・　きちんとしたお礼もご挨拶も出来ないまま、自分は大陸から放り出され、二度と戻ることが出来なかった。　明晩はまずお礼行脚からだ。　　どうもありがとう。木登り部の素晴らしき冒険者たち。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年03月06日

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  忘れていたもの

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　食わず嫌いとはよく言ったものだ。　　いつものように木登り好きな聖騎士と深夜に話し込むうちに、同盟先の話になり、同業組合同士の模擬戦の話になったのは１０日ほど前のことだ。　　我らが最愛の戦乙女が商売第一として、模擬戦を推奨してこなかった経過もあり、今まで行ったことも、考えたこともなかった。　正直なところ、同僚の中で対人戦を好むものもほとんどいない。　　「ユニオンの前に経験したほうがいいですよ。みんなやってますよ。」　確かにその通りだろう。経験しないままでは、その是非を語ることすらできない。　　 　　彼のご好意に甘えて、初めての同業組合戦を行うことにした。　けれど、自分はただ強さや装備、上位の階級だけを求めて行くこと、対人戦にあまり魅力を感じてはいなかった。　とりあえずやってみるか・・・そんな気持ちがあったのは否定しない。　　ところが、ルールをどうしますかと尋ねられても、それすら判らない。　ルール決定は経験豊富な彼に任せることにし、開催の前々日、ルールについて現地で説明を受けることになった。　　そして、初めて自分の過ちに気がついた。　　ただ強ければいい闘い？・・・とんでもない。　決められたルールの中で作戦を立てて、どう連携し、どう戦うか、色々なことを出来る場なのだ。　　 　　目玉となるイベント戦『肉壁』は、攻守に分かれていかに拠点を守るか、どう壁をこじ開けて低い階級のものを行かせるか、など、スキルの使えない場所をうまく利用したルールになっていた。　個人戦も下位からの勝ち抜き戦で、ポット制限がある中でどう上がっていけるか、次にバトンタッチする仲間にどれだけいい条件を残せるかも加味される。　　今回の初心者同然の我が社に胸を貸してくれるのは、骨董衣ばかりが居並ぶ木登り部だ。　さすがに闘い以外での遊びを極めてきた集団だけに、対人戦に数々の遊び心が加味されたルールを用意してくれた。　　 　　かつて、「とりあえず脱ごう」のとりぬご盃を行った精神。　どうも自分はすっかりそれを忘れていたらしい。　　楽しむためにはどんなことを制約とすればいいのか。　色々な形での対抗戦やハンデ戦を考えればいいことなのだ。　　日頃、軟弱と言われる両手職だけの対抗戦　特定の得物だけに限定した対抗戦　そして、赤装備限定の対抗戦・・・（単に趣味なので決して追及しないで下さい）　　 　　ただ待っていても、楽しいことはやってこない。　楽しいことは自ら作らなければいけないのだ。　　木登り好きな聖騎士に心から感謝して、同業組合戦をしっかりと勉強してこようと思う。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年03月05日

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  高嶺の花だから美しい

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　自分はとことんへそ曲がりな性格らしい。　　最近、自分や誰かが深い川を越える時以外、そして、そこでの単独行が不可能なメンバーがいる場合には、雷と毒気の荒地への出かけるパーティを断るようにしている。　　たいていの場合は、それなりの言い訳を用意していたり、両手斧の愛弟子に拉致防止用パーティを組んでもらっていたが、どうも、最近、彼は寝てばかりいる。　例の如く突然拉致されることも多いので、改めて明言しておいた方がいいと思った次第だ。　　 　　もともと、たくさんの敵に囲まれて、生死の境目ぎりぎりで狩ることが好きだ。　他者とのやり取りを楽しみたいという思いと裏腹に、ずっと自分が持っている二面性でもある。　　同僚や愛弟子たちが寝静まると、大概は島へ渡り、霊魂の守護石を浪費しながら黙々とエビル前で単独で狩り続けている。　防御が無いも同然のスタデッド・アーマーとノーヘルで両手剣を持ち、砂漠の奥で剣や槍を持った魔物たちに囲まれていることもある。　　『マゾシャン』とも揶揄される所以だろうが、先日、両手斧の愛弟子にそんな姿を初めて見せたらさすがに呆れられた。　「い、いつもこんなことしていたのか？・・・」と。　　 　　雷と毒気の荒地での廃狩りが気に入っていたのも、自分が見えなくなるくらいの魔物たちに囲まれている状況が好きだったからだ。　　しかし、いつのまにか雷と毒気の荒地に集団で出かけると死ぬことが無くなっていた。　　　これは、自分にとってその地の評価を半減させる事実だった。　少しづつ、黒衣の装備を良いものに替えてきた結果であろうが、死と向き合わない闘いは、緊張感がないこと極まりない。　　それならば、もう一つの自分の楽しみである会話を楽しむこと、こちらを大切にしようかとも思ったのだが、こちらも駄目なのだ。　無駄話をしながら狩るだけの余裕がないパーティに入ると、しゃべっているのは詠唱時間を利用した魔術士だけになる。　　無言で、確固とした目的もないまま殺伐と狩るのはどうも性にあわない。　　 　　そして、階級を上げることだけを目的と考えていないから余計に感じるのだろうが、いとも容易く経験値が飛び込む状況もいかがなものかと思う。　　そう・・・いとも簡単に手に入るものにまったく魅力を感じないのだ。　　障害があるほど、壁が大きいほど燃えると言った方がいいのだろうか。　自分に言い寄ってくる相手より、嫌ってる相手を落す方が楽しい・・・あれだ。　手に入らないものだからこそ、あの手この手で手に入れることが楽しい。そして、手に入れた時の喜びも大きい。　　 　　もちろん、これは自分の価値観であって、他者にそれを強要するものでも、他者を批判するものでもない。　ただのわがままでしかないと承知しているが、こんなことを考えて断っているのだと、理解してもらえれば嬉しい。　　もちろん、深い川を目の前にした時には、いつでも声をかけて欲しい。必ず、貴方のもとに駆けつけることを約束するから。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年03月04日

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  My 24-carat gold ring

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　純粋さから、どんどん遠のいているのだと思う。　　両手斧の愛弟子が近ごろ機嫌の悪い日が多かった。　元々、口の悪いのは承知しているのだが、さすがにそれは暴言だろうと思うと、ホットラインで説教じみたことを言う日々が続いていた。　　 　　実際、いらだつ彼の気持ちも十分に判っているつもりだ。　自分自身もそれに近い思いは持っている。　　現実の社会でも似たように、納得できないこと、解決できないこと、超えられないことは山のようにある。　それでも『社会性のある大人』などという立場に立つにつれ、誰しも自分にとって不快なことと付き合う術を身につけて行く。　　嫌な部分を全部背負ってしまい苦労を続ける道もあれば、嫌な部分を人に押し付けてしまうなどという処世術もある。　プライオリティ、優先順位を定めて、それ以外を後回しにするとか、全てを解決する必要もないなんてことを覚えていくものだ。　　その課程においての解決できない不快な問題への対処方法、それには人それぞれのやり方があることは確かだ。　　 　　対処できないことで自分を責めて消えてしまう道もある。　対処できないからと殻に閉じこもる道もある。　攻撃的になることで問題を粉砕しようとするが、空回りになったり、返り討ちにあって終わりという道もある。　問題の存在自体を忘れた振りをして過ごすという道もある。　　どの道を選ぶとしても、根本的な原因を変えられる力がない現状では、不快な問題はいつまでも心に突き刺さり、傷つけようとしていくことに変わりがない。　自分を傷つけようとするものから、どう自分を守っていけるか。決して傷つかない存在になっていくためには、どうすればいいのか。　そんなことを少しづつ学んで行くのだろう。　　 　　よく２人の愛弟子を『素直な方の弟子』と『素直じゃない方の弟子』と言う。しかし、これは実際にはパラドックスにも近いのだ。　　『素直な方の弟子』は、社会の中で人を傷つけない方法を学んだ結果、みんな自分でのみ込むという生き方をしているから素直に見える。　その分、どれだけ自らが傷ついているだろうかと危惧するところはあるが、それを表面に出さないだけの強さには凄いものがあると思う。　　一方『素直じゃない方の弟子』は、柄のない抜き身の両の刃のようで、その得物を握る身は、振り翳せば翳すほどに傷ついてばかりいる。　純真なままであればこそ、心に混ざり物がないからこそなのだろう。ちょっと爪で引っかいただけでも傷跡がつく純金と変わりない。　　 　　けれど、大人の立場で極力穏やかに過ごしているつもりの自分なのに、時折、ここ数日のようにストレス性の病気でダウンすることになる。　純真さを失った見返りは無意識に身体に向かうものらしい。　両手斧の愛弟子に説教した言葉は、そのまま自分にもまだ当てはまるのだろう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年03月03日

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  Green_eyesをあなたに

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　連日帰宅すると２２時近い。　　大陸に降り立つ気力はあるのだが、日中に戦史の構想をメモ書きする時間すらとれない。　さすがに年度末突入である。　　２０代の頃のように、そのまま街になだれ込んで、朝まで飲んでそのまま出勤という荒業も出来なくなってきた。　せめてこんな夜は、自宅で軽いアルコールでも手にしてみよう。　　 　　Green_eyesという名前には色々な意味があるのだが、あるカクテルの名前が由来だ。　　一時世界的に流行していたトロピカル・カクテルの一つで、ご多分に漏れず、大きめなグラスで楽しむフローズンタイプ。　１９８４年ロスアンゼルス・オリンピックの際、記念して行われたカクテル・コンクールの入賞作品らしい。　☆ラム（ゴールド） 30ml ☆ミドリ（メロン・リキュール） 25ml ☆パイナップル・ジュース 45ml ☆ココナッツ・ミルク 15ml ☆ライム・ジュース 15ml レシピ通りにバー・ブレンダー、つまりはミキサー放り込み、クラッシュド・アイスとブレンドして、シャーベット状にする。　大きめなグラスに入れてライム・スライスを飾り、とりあえずは恋人同士ででも飲むようにストローを添えると出来上がり。　　 　　ちなみに『ミドリ』と言うのは、日本製のメロン・リキュールの海外ブランド名だ。　マナ・リカもこれからは『ミドリ』と呼ぼうかと思う。　　たまには大陸でもほろ酔いで過ごしてみよう。　甘ったるいが冷たいGreen_eyesを片手に。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年03月02日

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  チチヂムドゥ　カナシヂム

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　愛しく思えばこそ、大切にしてしまう。　　我が社の副代表を務めている戦乙女の師匠から、気の荒い戦乙女から毎晩のように声をかけられている。　最近では、会うたびに同業組合を移籍して来いと、副代表の席を空けて待っていると口説かれるのだが、どうやら、愛弟子に下克上をさせるための工作の一環らしい。　　 　　初めて声をかけられたのは昨年の暮れ、副代表が私事多忙のため長期不在を続けていた時だった。　　とにかく毎晩、弟子は来ているか、と問い合わせが入った。　　毎回、師匠に何も告げないまま戻らない弟子を罵りつつも、１ヶ月以上に渡って、復帰の日まで安否確認は続いたのだった。　そして、彼女の愛弟子が復帰したあとも、彼女と取り留めのない話をすることが日課となっているから不思議なものだ。　　 　　彼女を見ていると、どうしても最初の師匠の姿と重なってくる。　租税制度開始を前にして、他の世界へと移住し、二度とまみえることがない戦乙女とよく似ているのだ。　　自分も副代表やもう１人の弟子と同じように、毎日のように稼ぎが悪いと怒鳴られていた。　　けれど、今でも忘れてはいない。　誰よりも自分のことを大切にしてくれていた彼女のことを。　　 　　引退するという時も、ただ前夜に闘技場で初めての対人戦をしただけだった。　特に形見となるものを受け取った記憶もない。　弟子を甘やかす趣味はない、いつも公言していた。　　そんな師匠であったが、ただ一度だけ、分不相応な荒地に連れ出され、何度も死にながら、魔物との間合いの取り方を教えてくれたことがある。　あの場所も、今は雷と毒気の渦巻く荒地と化してしまった。　　 　　罵倒されながら狩り場へと出かける同僚を見ながら、少し羨ましく思う自分がいる。　こんな風に頭ごなしに言ってくれる人がいるというのも、案外と幸せなのではないだろうか、と。　　かと言って、自分がそんな師匠にはなれそうもないのだが、師弟の関係の形と言うのは、本当に色々だと思うこの頃だ。　　　 　　二人の愛弟子には弟子がいない。　　両手斧の愛弟子は「そんな器じゃない」と言い、先だってもある冒険者からの申し出を聞き流していた。　純真な魔術士の愛弟子も自分から探すつもりはないらしく、自分を心から求める人が現れるまでは、不在でいいらしい。　　けれど、彼らにも知って欲しいと思うのだ。　何があっても失いたくないと思う相手がいるという幸せを。　　 　　愛弟子に夢を見ているんだ・・・　そう語る戦乙女は、いつになく照れくさそうな笑顔を浮かべていた。　　そうさ。彼らがいるから、この大陸に今夜も戻って行く。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年03月01日

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  親愛なる者へ

  最初に言っておくよ。 今の君を大好きだと。　　　理想とする姿と現実の姿との乖離。　　その距離に打ちのめされているのだろうか、君はそこに届かない自分をいつも責める。　　 　　何が君の物差しなんだろう。　その目盛りは誰が決めているんだろう。　　そして、今、君の立っている場所はどこなんだろう。　　誰かと比べることなんか意味がないってことを、君はもう知っているね。　　どこにいても、どんなにもがいていても、君は君でしかない。　　 　　傷を舐めていたり、傷跡を隠そうとかする必要もない。　もちろん、無理矢理に瘡蓋を剥がす必要もない。　　その傷を背負ったままで生きる覚悟を決めること。　傷だらけの自分を誰よりも愛すること。　　その傷があるからこそ、今の君がある。　　 　　苦しいときはひたすらもがくといい。　　もがいて、もがいて、もがき続けていくうちに、ふっと力が抜ける瞬間がある。　そこが、君が行くべき場所だ。　　そこにたどり着くのは明日かもしれないし、何十年も先かもしれない。　だけど、必ずたどり着ける。　　 　　自分を信じること。　それだけでいい。　　今はまだ出発点にいるだけさ。　

  2004年02月29日

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  聖人君子になんかなれない

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　また風邪を引いたらしく、妙に空気が気だるい。　　微熱にうつらうつらしながらも、大陸に降り立った。　　さすがに土曜の午後である。すぐにお目当ての仲間を拉致することができた。　　数日前に両手斧の愛弟子が無事に６２歳に達し、純真な魔術士の愛弟子と並ぶことになった。　ここはひとつ気合いを入れて引き離しておく必要がある。もちろん、深い川を渡る時の行き先はただ一つだ。　　 　　陽気な戦乙女と共に無事に川を渡り終えた。　いよいよ６９歳に達して、骨装備を考える所にきたわけだ。　中々手に入れることが出来ない素材でつくる骨装備だけに、いよいよ、紅蓮の島を歩き回る必要がでてくる。　　それでも、川を渡った直後というのは脱力感も大きい。今夜はまだ島には行かずに、のんびりと過ごそうと思っていた。　　しかし、来週に行う予定となっている初めての模擬戦のための調整や、闘技場に呼びつけた魔性の魔術士に鉄槌を下すなど、多忙なことは変わらない夜になった。　　そうした合間にも次々と声がかかってきた。　　 　　同業組合の店内放送、パーティ内での会話、街場での看板表示での語らい、そして、一対一のホットライン・・・常時、複数のチャンネルを開いている。　ホットラインにいたっては、多い時だと、５人から６人はざらだ。　突然に読者の方から声をかけられることもあれば、引退した友人が無料枠でやってきていることもあるし、交友名簿の名前が光った別組の友人に声をかけることもある。　そして同業組合長の旗を背負うようになってから、対外外交的な対話も増えてきた。　　以前に彼の戦友と話したことがあるのだが、彼もたくさんの冒険者から声をかけられながら、狩りをしていたと言う。　会話機能の操作については、たとえ雷と毒気の荒地にいても苦にならないのだが、聖徳太子ばりに、同時に７つの会話をこなすことは流石に出来ない。　許してくれる相手だと勝手に決めて、会話を受け流したり、寡黙な状態を作り出す場所ができてくる。　　 　　同様の状態にあった彼の戦友や我らが最愛の戦乙女は、できるだけパーティに参加せず、単独で歩くことを日常としていた。　同業組合の店内放送でも、ここぞという時に発言を決めてはいたが、そう頻繁に会話をしていなかったように思える。　もちろん、師弟でじっくりと語り合うことも後回しにしていたらしい。　　どう対応するのがいいのか、正直なところ試行錯誤の真っ只中だ。　同業組合長の旗を背負っている魔術士の愛弟子に至っては、挨拶の際に交わす、二言三言が唯一の会話という状態が続いている。　出来るだけ現在の状態を告げて、後から声をかけることを約束したりもするのだが、じっくりと話をしたい相手には、本当に申し訳ないことをしていると思う。　　 　　同僚が寝静まった深夜、同じようにたった一人で歩いていた魔術士と合流した。久しぶりにゆっくりと、同業組合長の重責などを語り合いながら歩く。　　いつものように相談ごとが飛び込んできた。　街へ戻る自分と共に嫌な顔一つしないで付き添う愛弟子があった。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月28日

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  月日は百代の過客にして

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　そして、ゆきかふ年もまた旅人なり。　　現実の社会での仕事が忙しい中で、１日～２日ずつ遅れた形で戦史を記しているが、ふと５万人目の閲覧者を間もなく迎え入れることに気がついた。　　 　　以前に我らが最愛の戦乙女も書いていたが、ネットの時間は秒進分歩と言われるから、単純計算にしても43200～86400倍の速さで進んでいることになる。　それだけの時間係数を誰かと出会っている時間に乗するのだから、現実の時間よりも密度の濃い関係が出来上がっていく。　　だけど、永遠に今のような毎日が続くわけもない。　いつも心の隅っこに、それが小さな棘のように突き刺さっている。　　 　　いつか別れる時が来るのだから、特別な関係の相手を持たない。　傷つくことを恐れて、何かを背負うことを避けて、他者との距離を意識して遠い場所に置く人がいる。　　実際、自分自身もそう考えていた。　誰とも等間隔にまんべんなく付き合うという選択で、思い入れのある相手を作らないようにしていた。　　けれど、同業組合という家族のような関係を持ち、大陸以外での媒体であるこの戦史を書き始め、掲示板を持ち、そして、分身のような愛弟子たちとの関係を持つようになっている。　　 　　ある日、別れの日を迎えて傷つくことがあったとしても、案外と人間は強い生き物だ。　実際の所、大切な人との幾度かの別れを経ても、自分はまだこうしてここにいる。　　次第に思うようになった。　　傷つかないような相手といくら出会っても、意味がないのだと。　　 　　思えばこの大陸にはじめて降り立ったのが、６月上旬だから、棘の痛みを気にしながらも、８ヶ月も滞在していることになる。　戦史にいたっては開設して間もなく５ヶ月目に突入する。　　戦史を綴る前から知っている人。　戦史を読んでから出会った人。　出会ってから戦史を読んでくれた人。　引退してからも戦史を読んでくれている人。　　そして、大陸の中で日々行き交う人。　全ての冒険者のみんなに、心からのありがとうを。　　 　　最近お気に入りの星野八郎太の言葉を借りれば、愛し合うことだけはどうしてもやめられない。　　どんなに傷つく日ががあることを知っていても、誰かと出会うのを渇望する心はもう止められない。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月27日

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  鱈、逃げ出した後

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　逆の立場になってみなければ判らないものだ。（いつものように「エヴァヲタ」という突っ込みはスルーで）　　近頃、両手斧の愛弟子がよく絡まれている。　　怪しさ極まりない自分と過ごしているのだから、当然の帰結という気もしないでもない。　　 　　それでも、本人なりに目立たないように、自分の分をわきまえるべきと、かなり気を使っているらしい。　まぁ、元より師弟共に十二分に際物ではあるのだが、戦史編纂作家の道を選択した時点で、目立つなというのも無理な相談だ。　　周りに不快感を与えないようにと気を使っている彼をみていると、同業組合長の旗を背負いながら、馬鹿なことを繰り返す自分が恥ずかしい。　　もっと自戒して、この立場に相応しい行動をすること、もっともっと真面目にしなければいけないだろう。　　 　　そんなことを考えながら、大陸に降り立った夜だった。　　何気なく、セクシュアル・ハラスメント疑惑の現場を通った瞬間。　　戦慄が走った。　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　魔性の魔術士がついに・・・・・・　　　　　　　　　　　真面目に生きようと思った矢先のボディブローに、言葉が続かず、思わず街を走り出した。　もちろん、追いかけてきて欲しい相手は寝息をたてていた。　　 　　　　　　　　　　追いかけてこなかったら、破門していた所だ。　馬鹿たれぇ・・・無防備に寝込みおって　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月26日

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  疑惑の樹下

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　街中に戦乙女の悲鳴が響き渡った。　　何ごとか？・・・・人が集まってくる。　彼女は自分にセクハラを受けたと主張した。　　法の番人として、この大陸一の軍師と呼ばれる聖騎士が駆け寄ってきた。その瞬間、穏やかなターラの街角は公開法廷と化したのだ。　　 　　その日、大陸に降りたった自分は、樹下に佇む同僚の戦乙女の背後に立った。　　声をかけて驚かそう、そう思ううちに、次々と我らが最愛の戦乙女の記者会見に対する質問が飛び込んできた。　引退とか退店ではないことを説明するうちに、それは持ち上がった。　　そう・・・セクシュアル・ハラスメント疑惑が。　　確かに無言で誰かに張り付くなど、怪しいこと極まりない。　特に彼女はかねてから深夜営業中の店で、お客からのセクハラに悩まされていた。人一倍神経質になることも理解できる。　　 　　しかし、いやしくも同業組合長の旗を背負うものとして、職権をかさにして同僚に手をつけるような真似は断じてしない。　　いや、両手斧の愛弟子に手をつけたと言われれば否定できないが、その前段、いつも自分を追いかけてきて、彼は物陰からじっとこちらを見ていたのだ。　これは合意の上の恋愛であって、セクハラではない。　・・・・・・ケース１　典型的な上司の言い訳の例１　セクハラではなく、合意だと、相手が誘ってきたのだと言い張る。　　　すぐ近くに立ったのも親しみをこめた挨拶のためで、不純な動機などないし、ちょっと肩を叩いたのも良好な職場関係の中でのスキンシップに他ならない。　・・・・・・ケース２　典型的な上司の言い訳の例２　当事者が不快感を持つような、不必要な身体的接触をスキンシップと言い張る。　　 　　だが、当事者が「セクシュアル・ハラスメント」だと言う以上、今後は節度ある行動を取らねばならないと、自戒している。　　確かに、我が社には赤き衣の戦乙女や聖騎士を性的対象とみる風潮があった。　・・・・・・ケース３　　性的な関心のみの対象として相手を見たり、立場の弱いものを軽視する風潮、こうしたものがセクハラの温床となり得ます。　　無事に階級が上がって次の段階の装束を着るのを許される時、衆人環視の中で公開着替えを行うのが普通に行われてきた。　・・・・・・ケース４　　脱ぐことや着替えを強要したり、全裸でいることを求めるのもいけません。　　新しい世界へ移住した者の戦史の中にも、下着が露出した画像や、それを見たくて移住したことを告白する記述があった。　・・・・・・ケース５　　猥褻なＳＳの提示や猥褻な言動を繰り返すこともいけません。　　 　　こうしたことに不快感をもつ人がいるということを決して忘れてはいけないと思う。　　性的な噂を流すことはもちろん、つきまといや一方的な手紙や連絡、一緒に出かけることの強要は論外であるし、性別や年齢など個人情報を無理に聞き出すことも、みんなセクハラに該当する。　　昨今、嫌な思いをして引退した戦乙女などが多いと聞く。　　ネタとセクハラの境界線、好感と不快感の境目、ここはしっかりと見極めていかなくてはいけないと思う。　　 　　いや・・・でも、本当にセクハラのつもりはなかったのだ。　第一、そんなことをしたら、なんて言われるか・・・　　両手斧の愛弟子が街に駆け込んでくる足音を聞きながら、非難を続ける人々に詫びるのに必死になっている自分がいた。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月25日

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  陽の当たる坂道

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　次々と情報が飛び込んできた。　何かがターラの街で起こっていたらしい。同僚たちも次々と参加していく。　店内放送で事の次第を聞くより早く、ホットラインは鳴りっ放しだった。何人もの友人から「すぐに鱈に戻って来い」と連絡が入っていたのだ。　　どやら廃な師匠である将軍様に忠誠を誓う人々が、列を成しているらしい。　　 　　ネタのある所、我あるべし、か・・・　これだけの連絡が入るのはそんなイメージが定着しているからなのか、いつもながら情報提供や垂れ込みが多い。　　かつて戦史編纂作家百花繚乱の街と呼ばれたら組三番町から、くしの歯が抜けるように物書き仲間たちが去っていった。　戦士を綴る筆を折った者や違う世界のことを綴る者がいて、未だにこの地に留まり新しい頁を足す者がいる。　減ってきたからこそ、たまたま留まっている自分に連絡があるのだろう。　　 　　すぐに取材に駆けつけるのが常だったが、今夜は場所が悪すぎた。　遠い紅蓮の島から戻っても騒ぎは終焉に向かっているやもしれない。酸っぱい葡萄と諦める狐の心境で狩りを続けることにした。　　今夜はコエリスの地での壁に悩みながらも、こちらに転生し、３０歳になったばかりの聖騎士と密会をしていた。　隠密行動を続けるうちに両手斧の愛弟子がやってきた。　　 　　気分は浮気の現場を押さえられた亭主状態である。　何もなかったことを証明するかのように３名で歩き、友人が去った後は師弟で島に渡ることにした。　　しかも前夜には、愛弟子が寝ている間、いつものように雷と毒気の荒地で荒っぽく遊び歩いていたのだ。　突然家族サービスでフォローに回るお父さん状態を否定できないが、愛弟子と歩いて確かめたいこともあった。　　 　　彼はいつもターラの周辺で資金稼ぎを中心に狩っていて、時折、死に誘う赤い巨神倒しに同行するところころと倒れる。　ずっと軟弱な奴だなと思っていたのだが、次第にある疑問が起こっていた。　　島内を歩いていると思った通り、いや、予想以上に島の魔物たちは柔らかく感じられた。　　なるほど・・・そういうことなのか・・・　　どうやら魔物たちより先に、劣悪な環境と闘っているらしい。　両手斧の愛弟子は、暗い場所ではすぐに居眠りを始めるのだが、明るい場所を好むというか、明るい場所では滅法強いのだ。　　 　　厳しい条件下にあっても、この大陸にいて、楽しむことを優先してくれていることが嬉しかった。　けれど、間もなく彼も川の前に立つはずだ。　たまには強引に連れ出してみようかと思う。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月24日

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  河よりも長くゆるやかに

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　記者会見の会場から、なかば放心して戻った。　我らが最愛の戦乙女が、隠居への決意を固めたらしい。　　この大陸から去る訳ではないというが、店長代理という重責にもがいていた身に、一段と枷がかかる。　個人商店制度が導入された時点で、週末の蚤の市が消えていった時点で、ある程度の予測はしていたことだった。　　 　　そう言えば、商売敵でもあったオークショナーも、競売場を間もなく閉鎖するという。　個人的には一度も利用したことがなかったのだが、商品相場を見る上での重要な拠点となっていた所だ。　　今までのご尽力に心からの感謝を・・・　　時代の変化に少しづつ自分を取り巻く社会が変わっていく。　　 　　同盟戦争という大きなターニングポイントにきて、同業組合の再編も進んでいるようだ。　　どこを歩いていても、同盟の話がふってくる。　そして、同盟の前にと交換留学も盛んに行われているらしい。　　同業組合同士での模擬戦の申し入れも初めて行った。　対人戦というものを今まで考えたこともなかったし、お祭りの延長や何かの企画以外で闘技場に足を踏み入れたこともない。　　 　　このままでいけば、店長代理の「代理」が外れる。　文字通りの『二代目』となる。　　創業者の想いとすでに社風として出来上がっているもの、それをどう継承して、それをどう変えていくべきものなのか。　　自分はこの大陸で、我らが最愛の戦乙女以外の上司を持たない。『大バーゲン』という同業組合以外の居場所もない。　コエリスの地で分身が所属した２ヶ所の同業組合でも、そして、そこでの上司に対しても、あくまでも客分としての自分しかいないのが事実だ。　　 　　禅譲ってやつは、相互にとって困難極まりないものだ。歯痒さに身もだえさせることの方が多いに決まっている。　　だけど、結局のところ、彼女に教えられたことしか、覚えていることしか出来ないのだと思う。　忘れていると思った時は、一緒にいて判らないままだったことがある時は、後ろから蹴りが飛んでくると信じたい。　　自由を謳歌して、楽しむこと。このことだけは、決して忘れないから。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月23日

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  もう森へはいけない

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　百エーカーの森へはいつになったら行けるのだろう。　　魔がさしたというのか、モノの弾みというものなのか、現実の社会での同僚に、この戦史の存在をカミングアウトしてしまった。　　ラピスの仮面を被っている大陸での自分は、こうありたいという願望の姿であり、そして何にも縛られたくないという思いの現われだった。　ところが、同僚は現実の世界での「私」と変わらないものを見たらしい。　　そ・・・そうだったのか・・・　　 　　確かに、以前の所属などは顕著だったが、周りから『ハーレム』だの『セクハラぎりぎり』だの言われる中で、好き勝手に好みのタイプの部下を集めていた。　仕事には厳しく、有無など言わさない。　けれど、溺愛しすぎではないかと言われるほどに、自分なりに大切に育てていったのも事実だ。　　そんな「私」に対して、文句を言われたことも無かった。　「当事者は怖くて、文句なんか言えませんよ」　同僚が言い返してきた。　　思い返すと・・・まんまじゃん・・・　　 　　だが、大陸では自由に言いたいことをいい、やりたいことをする立場を通してきた。　何も背負うこと無く、自由に遊べる空間として担保してきた。　　・・・はずだったのだ。　同業組合長の旗をしばらく背負うことになる日までは。　　現実の世界ではいま、一体いくつの肩書きを背負う羽目になっているだろう。　　・・・・どうも・・・これも、まんまじゃん・・・　　 　　結局どこにあっても、もって生まれたものからは逃れることが出来ないのか。　　何かあればいつも仲裁に入ってしまう。　困っている人がいたら放ってはいけない。　おかしいと思えば自らそれを変える道を選んでしまう。　頼まれると絶対に嫌と言えない。　ただ批判したり、傍観することがどうしても出来ない。　　どんな仮面を被ろうとしても、滲み出てしまうものは同じだ。そう・・・現実の世界でも本当は無理な仮面を被り続けているのに。　　 　　心の一番底に、ずっと隠してきた本当の自分がいる。　　人嫌いで、誰ともかかわらないでいたい自分。百エーカーの森の奥で、何もしないということに憧れている自分。　一体、いつになったらこいつは素直に表に出てきてくれるのだろう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月22日

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  あなたに会えてよかった

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　そう、その人と出会った瞬間にわかるのだと思う。　　師弟関係を結びたいのだが、相手がいないという声を近頃よく聞く。　大師匠であるこの世界一の魔術士のように、自分より上位のものを見つけようということ自体に無理のある場合もある。　だが、この人に・・・そう思った相手には、すでに決まった相手がいることが多いのが現状だ。　　 　　実際のところ、師弟関係を結ぶとなると慎重にならざるを得ない。　　常時、連絡を取り合い、言葉を交わしていく相手だ。どちらかの言動の責任すら被ることにもなるだろう。　周りからは「○○さんの弟子」「○○さんの師匠」として扱われ、人間関係も自ずと広がっていくことになる。　納得のいく相手を探そうと思えばこそ、いつまでも空位のままになるだろう。　　２人の愛弟子は弟子を持たないのだが、自分のように世話の焼ける、いい加減な師匠を持つことに神経を使いすぎ、そうした関係をもつことに疲れているのではないかと思うほどだ。　　 　　そんな中で、同僚の聖騎士から深夜に相談を受けた。　彼は最愛の妻を弟子にしており、いつも二人で過ごしているのだが、最近はターラの街角で、よく華々しい夫婦喧嘩を繰り広げている。　妻が先に眠ってしまうと、雷と毒気の荒地へも同行してくれる気のいい男だ。　　そんな彼が師を求めていると言う。　彼の修行の早さには目を見張るものがあり、そう近い階級のものでは長続きしないだろう。　弟子の枠が空いている友人はいただろうか・・・思い浮かべるうちに、彼は続けて言った。　　「あの・・・Ｋさんには、お弟子さんはもういるんでしょうね・・・」　　彼が師匠にと考えているのは、陽気で気さくな戦乙女だった。　　 　　翌日、いつものように街角で雑談をしていると、件の彼女がやってきた。　　特に頼まれたわけではなかったが、何気なく弟子の有無を尋ねてみる。　そして、誰がとは明らかにしないまま、彼女を師匠にと望む人がいることを伝えた。　　動揺しながらも頬を赤らめる彼女に、さっそく同僚を呼び出して紹介をする。　陽気な戦乙女も驚いたに違いない。　　いつも冗談を言い合いながら、和気藹々と過ごしていた相手だったからだ。　　「弟子に抜かれないようにがんばるね。」　嬉しいそうに話す姿に祝福の言葉を送りながら、俄か仲人はその場を後にした。　　 　　たまたま問い合わせを代行しただけで、結局、彼は師を自ら見つけ、そして選んだのだ。　　以前に師匠を募っていた友人に言ったことを思い出す。　「必ず出会えるから。会えばこの人だと判るよ。」　　そう、必ず出会える。誰もみな、心から求め続けている限り。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月21日

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  大陸ノムコウ

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　どうしても踏み出せない。　　　この所、ラピスの地から出ることがほとんどない。　　戦史編纂作家の弟子にも会いに行っていないし、双子の兄の魔術士のもとへと帰る手続きも出来ていないままだ。　ああ、覆面作家でもある方向音痴な聖騎士探しの旅も中断している。　　誰かを探して、ぼんやりと過ごす日々が続いている。　　 　　魔術士の弟子は夢中になって祭壇通いを続けている。お金を貯めて、どうしても買いたいものがあるらしい。　挨拶のついでに戦利品の霊魂の守護石を山のように寄越しては去っていく。　すでに彼の率いる同業組合は同盟先を決めているらしい。　　 　　どこか違う世界をのぞきに出かけたまま戻らない友人や、そろそろ新しい生活のために休暇に入る友人もいる。　師匠や同僚、友人たちとたわいもない会話を繰り返しては、心の一番奥に仕舞い込んだ思いを取り出して、ぼんやりと考える。　　 　　若い冒険者に色々なことを教えたり、新しい出会いを求めて彷徨ってみたり。　　愛弟子が寝静まれば、多少無謀な狩りにも出かける。ひたすらに闘うだけの時間に身を投げてみる。　　そんな合間にも、ずっと考え続けていた。　　 　　自分は何になりたくてここにいるだろう。　自分は何を待ってここにいるだろう。　　そして、同僚たちは何を求めているだろう。　　同盟戦争へのゆるやかな序曲は、そのことを胸に突き立てた。　　 　　目指す道は見えているにもかかわらず、一歩踏み出すことをためらっている自分がいる。　　誰かと彼と比べることに意味はないのだと思いながらも、彼の戦友ほどに相応しい者が見つけられない。　さりとて、自ら手を上げて、彼のように生きていけるだけの力はない。　　 　　この穏やかな日常はどこに続いていくのだろう。　　何かを為すことなしに、論じることに意味はない。判ってはいるはずだ。行くべき道は。　けれど、やっぱり探してしまうのだ・・・　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年02月20日

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  アイデンティティの担保

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　その時、彼の戦友の名前が脳裏に浮かんだのは事実だった。　　同盟戦争についての話し合いに出かけて行った。　両手斧の愛弟子が、この大陸一の軍師と呼ばれる冒険者と待っていた。　その上、定刻になったら、まるで示し合わせたかのように、我が同業組合の旗が集まってくる。　　やはり、みなこの戦いに期待と関心を持っているのだ。　　自分が考えていることは、ただ一つだった。　　我が社はこの戦いに際して、どうした姿勢で臨むべきなのか、を。　　 　　自分は店長代理という立場でもあり、割らが最愛の戦乙女の意向が最優先と考えていた。　　まだ常勤店員が５名しかいない時代、一度全員でサンツスミコに旗を下げようと確認したことがある。　　愛と友情を誓う指輪の入手の時もそうだったが、その時も店長は逡巡を繰り返していた。　自らの意向を仲間たちに強要していないか。参加を望まないものを雰囲気だけで引きずってはいないか。　　我が社はもともとは彼女が『１人ギルド』のつもりで、楽しむことを第一に、出入り自由な連絡拠点として作った場所だ。　名立たる冒険者の世を忍ぶ仮の姿も多かった。　それぞれに個性豊かな店員が、自由に過ごせることだけを彼女は望んできた。冒険者としての強さとか、集団的結束を求めたことは一度もない。　　しかし、今では規模も大きくなり、店員の人数も増えた。　中小零細企業の頃のように、全員が顔をあわせて意思統一はもはや不可能だ。　　 　　我らが最愛の戦乙女と自分が中心となって、店内では議論が続けられた。　納得しなければてこでも動かない両手斧の愛弟子と、参加に否定的とも思える彼との対話を繰り返しながら、そこに我が社が参加する意義や、出来ることを考えていった。　　同僚たちが戦術や戦略に長けているわけではない。ましてや圧倒的な強さを持っているわけでもない。　しかし、戦力にならなくても、弱小の同業組合が、自由という名の誇り高き旗の下に動く時こそ、そこに自分たちなりの楽しみ方があるはずのだと信じていたい。　これこそ金色をした『無理しないギルドの無理しない指輪』が、象徴と言えるのかもしれない。　　『絶対に勝たなくてはならない』とは思わない。そこに参加した仲間たちが階級や職種に関係なく、『楽しかったね』と、『愉快だったね』と感じられるための場所を提供したいと思う。　　そのために、我が社は同盟戦争に参加していく。　もちろん、全員に参加を強制したり、そのために店員の指名解雇や人員整理を行うつもりもない。　　 　　すでに仲のいい友人たちから同盟の申し出がきているが、勝ちを取りに行く意向の同業組合ではない所ばかりだ。　　とりあえずは、戦力にならないが、楽しむことだけは誰にも負けない。　そのことをもって同意できることを、これから同盟を結ぶ基準にしたいと思う。　同盟としての戦略とか、立場は今後の動向を見るしかないだろう。　　まぁ、中立ユニオンとして傭兵的な参加をするにしても、よく知らない誰かの命令で動く気にはならない。　　色々なあり方を考えて行きたいと思う。　　勝敗を左右するほどの絶対的補給ラインとして機能する死の商人集団。　昨今人材が減ってしまった射手としての戦乙女の人材派遣集団。　外交と交渉能力を前面に押し出しての、講和条約交渉特使集団。　傭兵たちを説得したり、札束をちらつかせて切り崩す諜報集団。　　強いだけではない、独自の生き方は、考えていけばいくらでもあるものだ。　　 　　「カリスマ的ユニオンマスターの登場を待っています」　闘いよりも、人と人との関係を楽しんでいるように思えるプロデューサーの発言に、この大陸にいること意味が肯定されたような気がした。　　そして、ふと彼の名を思い出したのだ。　そう・・・彼なら、どんな政策をもって統治するかと。　所詮、自分も彼もマキャベリズムの権化だ。　　相場を見ながら南瓜関連資産を全て売却して、資金力をバックに最初の防衛権をもぎ取るという道もある。　サンツスミコの街に我が社の社旗を最初に立てることだけを目的にして。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年02月19日

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  正しい魔術士の育て方

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　…そんなものがあるなら自分が聞きたい。　　ようやく魔性の魔術士とともに狩場に出て、相談にのる時間が持てた。　いらぬ誤解を招いてもいけないと思い、両手斧の愛弟子も同行させる。　というか、正確な知識や情報提供という点では、自分よりも遥かに愛弟子の方が研究を重ねているからだ。　　 　　冒頭から余談になるが、現実社会でも、自分はデータは持たずにインデックスだけを持つことにしている。　自ら何もかも知っていたり、全てを把握する必要など無い。ある程度の見出しだけ頭に残しておけばいいと思っている。　　この問題は誰が詳しい。このことなら誰が巧い。この人脈は誰につながっている。　そうした人的資源のインデックスを持つことで対応してきた。　これは同時に、誰かを信頼してそのことを任せるという、ある意味では忍耐力を必要とする、胃の痛くなる行為も伴う。　だが、結果的には相手の才能を見出し、次の世代として託せる存在にもなっていくという果実もあるのだ。　　全てを背負い込もうと無理を重ねた結果、何度も体を壊し、痛い思いをしながらやっと身につけた処世術ではあるのだが…　　 　　魔術士のさまざまな能力について説明し、実際に見せていくそばから、愛弟子があいまいな表現や語彙の間違いを指摘し、訂正していく。　普段は饒舌な魔性の魔術士も真剣に耳を傾けていた。　そんな最中だった。　先日初めての集団行動を指導した金鎧の魔術士から連絡が入った。「ラピス」という名前に惹かれて、初めての冒険をここで始めてくれた彼も、ついに赤い衣に着替えたと言う。　しかし、サンツスミコでいくら仲間を募っても、パーティに同行する同位の者がまったくいないらしい。単独行動でよくぞここまで上げたものだと思う。　能力の振り方についての質問も併せて入ったので、神殿にいた彼に連絡をとり、勉強会に招き入れることにした。　　神殿で迷いつつも全員が合流し、狩りを続け、少しでもパーティを組む仲間を得やすいようにターラの街へと案内する。　そして、ノリのいい魔術士に我らの派手な旗も手渡した。　　 　　聖騎士ばかりではなく、魔術士にも手を出すと言われるが、聖騎士を不純な動機で口説く場合と違い、若い魔術士に声をかけるのは『仲間を増やしたい』、『同じ職を選んだ後輩を応援したい』という純粋な思いからだ。　　偏った趣味職としての姿はしているが、一般的な魔術士の育て方ぐらいは常識として知っている。それを基礎知識として説明している程度のものなのだ。　　しかも、この『一般的な』というものも、決して普遍的なものではない。　孤高に生きるか、集団で過ごすか、対人戦を好むのか、そして、時々の流行もある。　この大陸一の魔術士として知られる大師匠ですら、未だにどうあるべきかを悩みつづけていると言う。　　結局のところ、最後に判断して、生き方を選択するのはやはり当事者だ。　押し付け過ぎず、手を出し過ぎず、と決めているが、悩みながら試行錯誤することもまた、大陸での楽しみだと思う。　　 　　深夜に街中で友人と話し込んでいると、次々と話し掛けてくる魔術士がいた。かつて、魔術士の装備を譲ったり、説明をしたことがある懐かしい名前だ。　数ヶ月前の幼い姿は黒衣となっていたり、違う大陸から来た為に、幼い姿のまま必死でターラまで来てくれていたり。　　みんな同じものを手にやってきてくれた。　そして、かつて手渡した魔術士にかける思いは、小さな心に姿を変えて帰ってきた。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年02月18日

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  流されながら思う

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　大陸に降り立つことが出来たのは、深夜だった。　　しばらく旅に出る可憐な戦乙女を見送り、そして、久しぶりに一時帰国した我らが最愛の戦乙女の弟子を迎え入れた。　　今夜はスタデッドアーマーを纏ったままで、ゆっくりと過ごそう。この所、忙しく動きすぎた自分を反省気味だったからだ。　　 　　両手斧の愛弟子はいつものように居眠りをしている。　その隙を狙うかのように、魔性の魔術士が声をかけてきた。　　初めて魔術士としての闘い方の指導を、自分から受けようという気になったらしい。　日頃の態度とうって変わっての従順さに笑いをこらえるうちに、多少はじらしてやろうかと、悪戯心が現われた。　　ちょうど通りかかった魔術士仲間と挨拶を交わして、時間を稼ぐ・・・　　そう。時間を稼ぐはずだったのだ。　彼は突然、自分を羽交い絞めにすると、パーティに引きずり込んだ。　　 　　今夜はのんびりと過ごそうと思っていたことを伝えると、みんなでフォンスの粉を取りに行くのだという。　それなら仕方ない。どうにも拉致されると断れないのだ。　　しかし、行き先はターラの東門の先にある雷と毒気の荒地だった。　フォンスの粉は赤い巨神から取るのだと、階級を上げるための仕上げだから頼むよと、振り向いた魔術士はにやりと笑った。　　まったく・・・　こちらが断れないことも、そこでの狩りが嫌いではないことも、彼は十二分に承知しているらしい。　　 　　まだ年若い同行者２人が、口をそろえて言った。　「こんな凄い狩りは初めてだ」　　戦乙女が連れてきて、戦士がそれを弱体化させたところを狙い、雷を落とす魔物や毒気を吐く魔物ばかりを集めて叩き潰す。　復活の妙薬の代金も馬鹿にならないだろうが、転がり込む経験値は山のようだったはずだ。　　癒し系支援の若い聖騎士の負担は、馬鹿にならないだろう。けれど、あとわずかで階級が上がるものがいることも承知していた。　うまく言えないまま、そろそろ彼も限界ではないかと思った時、ちょうど物資を渡す予定となっていた双子の兄が訪れた。　　取り引きを理由に抜けることにする。　そして、自分が抜けることを機会に、友人の魔術士は上手に全体をクールダウンし、今夜はお開きとすることになった。　　 　　悪魔の歌声に魅入られている者はいい。けれど、誰かが『言いだしっぺ』役や『制御』役もしなければならない。　　お互いの能力を見極めつつ、信頼しあい、それぞれの力を最大限に引き出す。　　役割分担を考える場所になればこそ、決して嫌いじゃないのだ。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年02月17日

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  たった一度のラプソディ

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　冗談ですませられるよう逃げ道を作っていた。　　貯まりに貯まったスクリーンショットを整理するうちに、懐かしい画像に目が止まった。　　両手斧の聖騎士を無理矢理に弟子とした晩の記録だ。　互いに交わした言葉は一字一句漏らさずに残されている。　　 　　軟派だとか、手が早いという印象がやけに定着しているようだが、くどいようだが、それは大きな誤解である。　　誰でも口説いて歩くのは、誰にも縛られたくないための、傷つけあわない距離にいるための防御姿勢でしかない。　自分が傷つかないように、人を自分の内側にいれようとする気持ちがないから、いつも外側をたくさんの人で囲んで守ろうとする。　赤い巨神を単独で狩る時、周りを蠍で固めるのと同じことだ。　　そのくせ社交的に見えるのも、裏を返せば一人でいたくない弱さの現われだ。　八方美人という言葉があるが、嫌われたくないから、いい人でいることを演じたいから、社交的に見えるだけだ。　　 　　こんな自分だから、魔術士の愛弟子のように純真で、素直で、人に真っ直ぐに向き合える存在は掌中の珠とも言える。　　ああ、こんな風に人と向き合えたらどんなにいいか。　以前にも言ったように、決して侵してはいけない聖域にも近い。　　まだ彼が銀色の鎧を纏う時代に初心者指導の場で出会い、あどけない子ども時代から知っている。　いい人を必死で演じる自分を師匠と決めて、ターラの街まで追いかけてきてくれた時は本当に嬉しかった。　　 　　それに対して、両手斧の愛弟子との初対面の印象は悪かった。　　やけに理屈っぽく、やけに剥き出しにして絡んでくる姿に、生意気な奴だな、と一瞬ムッとなった。　その後、見かけるたびに『専属パラ』とからかいながら応戦するうち、己の生き方に禁欲的な姿や切り返しの巧さに興味を引かれた。　　そして、ある日気づいたのだ。　こいつには自分の裏側が見抜かれてるな、と。　　隠してきたはずのものが、彼には見えている。同時に彼が剥き出しにするものの裏側も自分には理解できた。　　彼のような相方が欲しい。　　とりあえず、孤高を定めている彼を同じ同業組合に誘い入れた。弟子になって欲しいとは、なぜか口に出して言えなかったのだ。　　 　　同僚として過ごすうちにも、弟子に来て欲しいという思いは強くなる一方だった。無理をしたり、取り繕う必要のない相手が自分には必要だった。　　けれど、申し入れても絶対に断られると言うことも判っていたのだ。　自分がそうであるように、彼も決して他者を内側に入れようとしないだろう。　　何日間も思い悩んだ後に、冗談の衣を被せて自分はボタンを押した。何の前触れも無く、突然無言で師弟関係を申し込む。　拒否されたら、からかいの延長の振りをして、笑い飛ばせばいい。　そう何度も自分に言い聞かせるうちに、長い長い沈黙の時間が過ぎた。　　　　やっぱり駄目だな、そう思った瞬間だ。師弟関係を結んだことを示す表示が目の前にあった。　　「ひどいよ・・・」　　今にも泣き出しそうな彼の声に必死で言い訳する自分がいた。　　 　　彼の戦友にそんな経緯を話した時はさすがに呆れられた。　「碧眼さん・・・それは強姦だよ。よく、こんな師匠についてきてくれたな。」　　ああ、否定できない。　たまたま結果オーライだっただけだ。よくぞ、こんな師匠に見切りをつけないでいてくれると思う。　　魔術士の愛弟子の信頼値は先週に最高値に達した。両手斧の愛弟子とのそれも、あと数日でそうなるだろう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年02月16日

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  美しい悪魔は境界線上でアリアを歌う

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　目には見えないけれど、深い川のような１本の線がある。　　目標管理と言うのだろうか、引退した聖騎士に聞いたことがある。　彼はこの大陸の『公式廃人』としても知られ、かなり早い時期に骨董衣を纏っていた。　　齢７０を超えてからの修行の辛さは尋常ではないらしい。それにも拘らず、着々と階段を上がっていた彼は、毎日のノルマを自分に課していた。　　 　　１日に最初に過酷な狩りを続けて、５つの経験値獲得。それを終えてから、のんびりと過ごすのが日課だったらしい。　ノルマを終えた後には、自分のような下位の者の冒険にも付き合ってくれたし、各地をゆっくりと探検しながら、本来立ち入る事の出来ない場所を探していた。　自分も近頃は彼を真似て、目標の数字を持つようになった。　　だが、そんな彼もある境界線を超えると鬼神と化したことを思い出す。　　 　　振り返ってみると、この境界線はいつも同じところにある。　　そこに着くまでは、遥か遠くに見えていたものが、突然、目の前にあるかのような幻影に囚われる。　日々、手に入れてきたものと比べれば、まだ数日かかる所のはずなのに。　　大きな川のように横たわる境界線の向こう岸に、今すぐにでも渡り着けるような気がしてしまう。　　 　　この境界線、『経験値８０％』を超えた瞬間、自分はいつも目の前の川を渡ってしまう。　まるで魅入られたように、深みへ深みへと足を進めてしまう。　　それまでゆったりと過ごしていたことも、こちらの岸でくつろぐ仲間たちのことも、愛弟子のことも、楽しむということも全て忘れてしまう。　　 　　そうなのだ。　この川には人を惑わす魔物が佇んでいる。　　けれど、悪魔に魅入られたまま、いつも川を渡りきってしまう。　辿り着いた時、達成感よりも倦怠感が大きいのは、魂を奪われていた後遺症なのかとも思ってしまう。　　　ふっと我に返り、ようやく平静な気持ちを取り戻し始めた時、同じように悪魔に魅入られた聖騎士が近づいてきた。　挨拶を交わした瞬間、羽交い絞めにされ、再び川へと引きずり込まれる自分がいた。　　 　　彼の見ている向こう岸の風景は想像に難くない。　　歌声が聞こえてきた。黒衣をまとった死神にも似た美しい悪魔の声が。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月15日

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  聖なるバレンチーノに心からの懺悔を

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　走り去る彼を必死で追いかけた。　　　この日に間に合わせたくて、必死だった。　いくら狩り場を歩いても、目的のものは出ない。完成品を買うほどの資金の余裕もない。　　 　　耐雷ペンダントが欲しいと話していたのが、妙に心に残っていた。　　対人戦で私を倒すためだろうが、彼が欲しいと思っているものを渡したかった。　　 　　連日、資金稼ぎに奔走した。　　長の旗を背負えばこそ、ある程度の貯蓄は欲しい。そんな、表向きの理由を言いつつ、狩場にこもっていた。　　 　　成長武器が１つ出れば、どんなものでも手に入る。　　それが出ると言われている場所であれば、人気のない時間をねらって、ただひたすらに狩っていた。　　 　　自分の姿がないと、彼が寂しい思いをするのは判っていたはずだ。　　だけど、つい甘えが出るというか、自分のことを判ってくれることに、安穏としていた。　　 　　そうした合間にも、対外的な行動はとっている。　　「ナンパをしない師匠なんて、師匠じゃないし」　そう言ってくれる彼に、ただひたすら甘えていた。　　 　　戦史の愛読者の方に色々とレクチュアー。　コエリスから来た戦史編纂作家仲間との交流。　　忙しげに動き回る自分を避けて、彼は姿を変え、孤独の中で修行を続けていた。　　 　　ああ、だけど、ごめん。　度を越していたよな。全部、私が悪い。　　ずっと、放っておいた自分の前から、彼は泣き出しそうな顔で走っていった。　　 　　約束する。　もう絶対に、哀しい思いはさせない。　　　何もかも止めて、ただひたすら、両手斧の愛弟子を追いかけていく私がいた。　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月14日

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  コ・コ・ロ・ノ・カ・ケ・ラ

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　渡したい相手は１人しかいない。　　　我らが最愛の戦乙女が実家へと帰った。　もちろん、犬も食わない夫婦喧嘩の末に「里へ帰りますっ」ではない。（先ず、夫婦でもなんでもないわけだが・・・）　戦乙女としての生き方を教えられた場所。　引退者が増えて少しばかり寂しくなった生まれた故郷へ、戦乙女たちの同業組合へと一時移籍することになったのだ。　　 　　初めて背負った旗への思い入れは想像に難くない。　彼の旗を守りたいという彼女の気持ちが痛いほどに伝わってくる。　　「必ず帰って来てね」　固い約束と仮初めの姿の戦乙女を残して、彼女は店を出て行った。　　　いつもと違う旗を背負った姿に少し違和感を持ちつつ、いつものようにターラの倉庫前で歓談を続けた。　　 　　すでに街では心の欠片や、完全な形となった２人の心のやりとりで賑やかになりつつあった。　　イベントとして、他者との交流が重要となることへの評価や、こうも簡単に心をやりとりしていいものか、などと語り合ううち、我らが最愛の戦乙女がぽつりと言った。　　「碧眼さん、それは恋愛論かい？」　　どんな話の流れから、その問い掛けが帰ってきたのか、どうも記憶が定かではない。　けれど、無意識のうちに語ったことは間違いなく恋愛観だったのだろう。　　 　　象徴としての単なる記号が画面上を行き交ったとしても、心の欠片や２人の心を『交換』することには抵抗がない。　今回のイベントの趣旨として、コミュニケーション・ツールにたまたま『心』という形が選ばれただけだ。　　けれど、一番最初に欠片を交わして、自分が一番最初に完全な形となったものを手渡すのには意味があった。　相手が一番最初に完全な形にしたものを欲しいと思う気持ちには意味があった。　　特別なものと特別じゃないものの区分けは明確だった。　所謂『義理チョコ』と『本命チョコ』の格差と同じらしい。　　 　　一つだけ別な場所に置かれた２人の心がある。　　けれど、義理も義理なりに大切だし、意味があることなのだと思う。　一人一人に声をかけながら、今夜も交換して行こう。　　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月13日

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  心の壁

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　ある意味、もはやトラウマなのかもしれない。　　大陸に降り立ち、職場に入るとやけに同僚が少ない。『ナイスガイ・コンテスト』の見物に出かけたらしい。　　知人が開催しているイベントだし、友人も参加している。以前にあったミス・コンもそうだったのだが、どうしても足を向けることができなかった。　　性別に関わることや外観で選択することがネーミングにあることで、個人的に抵抗感を持ってしまったのだ。　　 　　以前に話題になった『役』と『役者』の関係論、まさしくこの性別に左右される必要はないという話だった。　いくら対話をしても平行線なのだと、手のひらを返すように態度を変えることに落胆して以来、公の場でのこの手の話題をするのはやめた。　　個人として、役と役者は別物だろうと思っていても、同一であるのが正しいと信じて疑わない人を否定する気も無い。　　ただ、見ないですむ方が精神衛生上すこぶるよろしい。　男性が女性キャラを繰るとネカマだとか、女性が男性キャラを繰るとネナベだとか、ステレオタイプな発言を見て、もの悲しくなるよりは。　　 　　もちろん、純粋にイベントとして楽しみたいという気持ちも、参加している知人を応援したいという思いもあった。　　だが、どうしようもなく脳裏に浮かぶ言葉があるのだ。　こればかりはもう仕方がないのかもしれない。　　同様に性別を自覚させるイベントで、以前に集団お見合い「ねるとん」というものがあった。　何も知らずに出かけて行き、なぜか参加することになったものの、愛弟子がずっと側にいたからこそ耐えられたと思う。　　実際、かつての悲しい経験やその人に連なる人々の存在は、やはりまだ重たいのが現実だ。　　 　　それに、現実の世界でのコンプレックスを引きずって、未だに避けて通る自分がいることもあるだろう。　　容姿で評価されることに、ずっとうんざりしてきた。　　何か手にすれば、中身ではなく外見で勝ち取ったかのように言われた。ひどい相手だと、頭の中は空っぽ扱いすらされる。　自己防衛なのか、余程でなければスーツも着ないし、いつもぼさぼさの頭と薄汚れたリーバイスで通している。　　外観で判断することが第一のミス＆ミスター・コンテスト、それを連想させるだけに、ノリだけで出かけることが出来なかった。　　 　　応援に行けず、本当に申し訳ない。　些細なことを乗り越えられない自分の弱さと、勝手に作った障壁なのだと、承知だけはしているのだが・・・　　こんな時はとりあえず、黙々と心の欠片を探して歩こう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年02月12日

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  そして封印は解かれる

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　見境がないと言われた頃があった。　　今でもそれに近いことは言われているが、両手斧の愛弟子を迎え入れてからは、ナンパ師の名は封印している。　戦史を綴り始めてからも、下手なことは出来ないと自重してきた。　　けれど、真紅の鎧を纏っていた時代は凄かった。　金の衣までの反動もあったのかもしれない。　当時の師匠以外とまったく口をきかなかったのが一転、一線を越えてしまうと、野良パーティを組むのが楽しくて仕方なかった。　特に軟弱だっただけに、聖騎士と見れば手当たり次第に声をかけていた。　　 　　バレンタイン・イベントの報せを聞き、血が騒がなかったと言えば嘘になる。　どれだけ多くの人に声をかけられるか・・・　　そんなことを考えながら、船に乗り込んだ時だった。目の前に、マイヤー島に行くには、あまりにも年若い聖騎士がいた。　　誰かの仮初めの姿かと思いつつ、久しぶりに昔の調子を思い出しながら声をかけてみる。　　「こんにちわ。どなたかのセカンドですか？」　　返答がない・・・　腕も鈍ったか、そう思った瞬間だった。　　 　　「いえ・・・あの、はじめたばかりなんです」　金の衣の聖騎士がゆっくりと口を開いた。　　どうやら、腕だけではなく、勘も鈍っていないらしい。　　何も知らないまま島へと渡っていた彼を案内し、色々な説明をした。　同僚たちも次々と駆けつけてくれたので、初心者指導パーティよろしく、各地を転々とする。　　自宅からではなく、ネットカフェに週１回通いながら、コツコツと続けていたと言う。　　偶然とは言え、面白い出会いがあるものだ。　ほぼ４時間に渡る狩りの後、再会を約束して別れることとなった。　　 　　深夜には、かつてよく狩り場を歩いた木登り好きな聖騎士と、眠そうな愛弟子を交えて語り合う時間が持てた。　癒しを得意とする彼も、かつて強引に口説き落とした相手の１人だ。　　あの頃を思い出して、少しは本腰を入れたほうがいいのかもしれない。　　そう。　エロディンの異名を持つ暗黒の聖騎士と、『最強のナンパ師』を競った決着もついていないままではないか。　　 　　期限は１２日から１週間。　　久しぶりに封印を解こう。　もう錆び付いているかもしれないが、埃をかぶったスキルを取り出してみようかと思う。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月11日

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  事実誤認

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　異口同音という言葉の意味をこれほど実感したことはない。　　昨日の戦史に記した若い魔術士が、伝説の鎧を纏うようになった。以前よりも大分落ち着いた雰囲気になってきている。　　所属していた所を抜けており、新たに同業組合を起こしたいと、必死で設立資金をためているらしい。　資金稼ぎをしたいというので、同行しながら狩りに出た。　　「一緒にギルドを起こす仲間は見つかったかい？」　問いかけてはみたが、先ずは資金集めで、設立メンバーの目処がないようだ。　　 　　新規参入の冒険者は少なく、すでに多くの人はあるべき場所を持っている。いま新しい同業組合を起こすとしたら、その仲間集めこそもっとも困難だろう。　所謂『１人ギルド』のつもりで、知人に一時名義貸しを依頼するか、同じ志を持つものを一人一人探していくか、その程度の選択だろうか。　　けれど、どうして同業組合を起こしたいのか、そのことを若き魔術士に問いかけることはしなかった。　おそらくは自分だけの旗を背負うことが今は第一義になっている。　　それもいいだろうと思う。　『一人ギルド』なるものも世間には溢れているし、自分の旗という自己主張の下に生きる道も決して否定しない。　　 　　彼が以前にいた同業組合では、同僚同士の交流がさほど頻繁ではなかったはずだ。　その延長線上と考えれば、若き魔術士が同業組合というものに抱いている姿がある程度想像できた。　　けれど、どうしてもお節介な自分が出てきてしまった。　「お金が貯まるまで、うちに来ないか？」　　同業組合というものの意味とか、位置づけというものを感じて欲しかった。　何よりも彼自身が作りたい場所のイメージを拡げる機会になればと思った。　　 　　どちらかと言えば、個性豊かな同僚が多い。　　何より、口が悪く喧嘩っ早い両手斧の愛弟子もいる。　ぶつかることもあるだろうと思いつつ、本音で言い合う関係というものも、見て欲しい。　ぶつかりながらも作っていく関係というものも知って欲しい。　そんな勝手なことを考えていた。　　現実の世界の都合で、来月頭までは大陸に来ることが出来ないらしいが、若い魔術士はいつものようにぶっきらぼうな口調で、派手な旗を受け取った。　　そう、派手で目立つからこそ重いということを、下手なことは出来ないということも実感してくれたらとも思う。　　 　　「普通のギルドだけど、うちにいることでいい経験になればと思ってさ」　若い魔術士の加入を同僚たちや知人の組合長などに報告した。　　「碧眼さん・・・大バーゲンが普通だと思ってるの？」　　え・・・・？　誰もが同じ言葉を返してきた。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月10日

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  怒りの琴線

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　あの日はいつになく激昂していた。　　少し前のことだ。　砂漠で近頃『魔性の魔術士』と呼ばれる同僚に、迷子矯正訓練と称して道の読み方を教えられている時だった。　暖かくも口うるさい指導を毒舌で防戦しつつも、多少辟易としはじめた頃だ。　　「誰かＰＴ組んで」　看板を掲げた年若い魔術士が苦戦しつつ１人で戦っていた。　これこそ渡りに船である。見知らぬ若者を拉致し、３人で歩き始めることとなった。　　 　　初めてパーティを組む相手とは、必ず清算の条件などの約束事を確認する習慣だ。まずこのことを話すうちに最初の違和感を感じた。　狩場の選定、拾い上げたアイテムの鑑定　そして、話しながらの狩りそのもの、歩き続けるほどに気になり始めた。　　とある同業組合に所属し、ある程度の経験を重ねているにもかかわらず、若い魔術士はあまりにも何も知らなかった。そして、対人関係スキルというやつがものの見事に欠落している。　だが決して、自分勝手な嫌なやつというわけではない。人に何も言えないような気弱さもなく、実に素直ないい冒険者だ。　　 　　話し込むうちにその原因が判ってきて、珍しくも店内連絡で激昂して声を荒らげてしまった。　同業組合に所属しながらも、相談したり、的確な指導をしてくれる先輩が彼にはいないらしい。　　「ただ募集して、ただ旗を渡せばいいのか？　ふざけるなっ」　あまりの怒りに、同僚たちも驚いたに違いない。　　もちろん、３人でのパーティの場では、温厚な振りをしつつ、おだやかに粘り強く会話を続けていた。　同僚の魔性の魔術士も、初歩の説明をわかりやすく語ってくれた。感じたものは、自分と同じだったようだ。　　同じ旗を背負う仲間として、高めあおうとか、楽しくすごそうという気持ちを自分は大切にしてきた。　けれど、こうした感覚はどこの同業組合にも共通したものではないらしい。　　「判らないことがあったら、いつでも声をかけてくれ。　夜にはだいたい徘徊しているからね。」　　友人名簿に名前を書き込みながら、若い魔術士と別れた。　　そして、以来、折につけ質問や相談がぽつぽつと入るようになった。　　 　　彼の他にも、何も教えられていないどころか、嫌な思いをした初心者がいたことを耳にしたことがある。　　「仲間たちに都合のいい情報」だけを与えられてきた冒険者は悲惨だった。取得技術を何も知らないままに周りの支援行為特化にされていた。　　初期の狩り場で入手した合成素材を「不要なもの」として、二束三文で売り渡していたものもいた。　　判らないままにも考えながら配分したステータスを衆人の中で笑いものにされ、生きている価値がないかのように言われているものがいた。　　初心者を食い物にしたかのような発言をした冒険者や、それを容認した受け答えをしたパーティとは袂を分けてしまった。　どうも、こうしたことには嫌悪感を覚えてしまうのだ。　　 　　　自分で調べるのが当然だとか、何も知らない方が悪いかのような発言をする人もいる。　しかし、自分の場合はどうであったか・・・　たまたま、租税制度開始前で、誰もが試行錯誤していた時代にいたから、同じ程度の階級の仲間たちと交流しながら、少しづつ学んできたのだ。　こうした交流こそが、この大陸の価値だと思っている。　　このことだけは、決して忘れないようにしていたい。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月09日

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  生き様を貫くということ

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　勧誘した新人が大活躍をしている。　　久しぶりに何の仕事も入っていない週末だ。　昼過ぎから大陸に降り立つと、先ずは貯蓄増強のために奔走した。　　しばらくすると、先日入店したばかりの、戦乙女の守護神がふらりとやってきた。　日曜日も営業とは、実に生真面目な戦士だ。　　 　　我が社は伝統的に合成に奔走する傾向があり、しかも素材や武具・防具を売る場合でも儲けようとしないため、自分も含めて貯蓄残高が低い店員がすこぶる多い。　　急な合成の時に、さっと貸付できるくらいにはなりたい。　そう思い立ち、ここ数日はひたすら討伐の委託を受けている。　　そんなことを話し込んでいると、彼の貯蓄は１０万クロもないという。　『営業中』の看板は出しているが、辻シャウトの派遣料を受け取るわけでも無く、どうやら、かつての戦乙女だった時代の蓄財と、荒野に置き去りにされた不要アイテムを拾って食いつないでいるらしい。　　 　　ところが、せっかく出かけた赤い巨神の狩り場には、待ち人も無く、戦乙女の守護神は商売が出来ないと気落ちして戻ってきた。　　それならば・・・　知人や同僚に声をかけ、彼の仕事を作るべく赤い巨神討伐団を結成した。　大鎌遣いと弓遣いの戦乙女２人と完全支援型の若き聖騎士、そして自分と、４職がバランスよく入った５名の討伐隊だ。　　全職が揃うと実にバランスがいい。　それぞれの特性や能力が組み合わさることで、より力が引き出され、大きな敵へと向かうことができる。　互いに認め合い、互いに協力し合うからいいのだと、しみじみと思う。　　本当に楽しい時間を過ごすことが出来た。　　 　　夜になり、奇しくもまた戦乙女の守護神と共に狩ることになった。　今度は弓遣いの戦乙女２人と杖遣いの聖騎士２人、そして彼と自分の６人だ。　黒衣を目前にした聖騎士の荒修行の同行で、落雷と毒気の荒野へと踏み入れた。　　誰もが殲滅力の大きさに驚いた。戦士の咆哮で、魔物たちは力を奪い取られていく。　けれど、もっと驚かされたのは、倒されても倒されても、即座に現場復帰する彼のタフさ、まだ金の鎧をまとう年代でありながら、神の間合いで魔物に近づく精神力だった。　　そして、黒衣の聖騎士と共に彼もまた赤い衣をまとうこととなった。　　 　　ここまでネタを貫き通す生き様を見られるとは、予想もできなかった。しかも、そのネタを裏打ちするだけの知識や技術を有している。　恐ろしいまでの大型新人を発掘してしまったのかもしれない。　　かつては、自分が大バーゲンの方向性を変えたと言われたが、彼もまた、新しい方向性を示しているようでならない。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月08日

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  目の前の幸せに縋る弱さ

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　ずっと考え続けていた。　　どちらの道を選ぶべきなのか。　信じて待ち続けていくか、もう諦めるか。二つの選択肢があった。　　　直接の連絡方法を持たなかったために、同僚に伝言を頼んでみたものの、返信はないと言う。　年末に１ヶ月ぶりの挨拶をして以来、ずっと師匠の姿を見ていない。　　 　　このまま行けば、間もなく師匠の階級に達してしまう。　もしかしたら、突然ふらりと戻ってきて、一気に自分を引き離してくれるかもしれない。　そんな微かな期待を持ってみたりもした。　　そんな最中、彼の戦友の師匠から弟子をとるつもりだと聞かされた。　　以前に、弟子入りさせてくれと頼んだことがあるのだが、彼の戦友と師弟関係を結んだばかりだと断られた、いわく付きの聖騎士だ。　毎晩、有無も言わさずに拉致されて、ずっと島で過ごした相手でもある。　　 　　心が揺れた。　　音信不通のまま、待ち続けることに疲れていた。　辛い時にも明るく笑い飛ばしてくれる存在が欲しかった。　　けれど、師匠に対して礼を尽くさずに、勝手に縁を切るわけにはいかない。　　「誰も誘わないで、しばらく待ってて。」　そう頼んではみたものの、ずっと悩み続けていた。　　 　　時間だけが過ぎていき、結論はなかなか出せなかった。　　師匠をこちらの勝手な都合で切っていいのか。　上司として、色々なことを教えてくれた恩人なのだ。待ち続けるべきじゃないのか。　　人として、やってはいけない事だと、十分に自覚していた。　　　ああ、だけど・・・もう、寂しさには耐えられない。　　 　　軽蔑されるかもしれない。　本当にごめんなさいとしか言いようがない。　　確かなのは、思っていた以上に自分が弱いということ。　そして、いつも一緒に過ごしていた頃の心地よさが、どうしても忘れられなかったということ。　　言動は粗暴だが誰よりも心優しい聖騎士が、新しい師匠となった。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月07日

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  夢みる頃をすぎても

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　気がつくと、戦史を綴り始めて４ヶ月を過ぎていた。　　戦史を書くことを勧めてくれた戦友はもういない。　カリスマアイドルだった戦士も筆を置いた。　　そして、ひどい仕打ちだけを残した憧れの人も消えた。　　閲覧して回る戦史も、初期からはだいぶ入れ替わっている。　　 　　元々、ただ書き記すことが好きだという面はあるが、体調が悪かろうと、現実の世界が多忙だろうと、一日でも欠けると気持ちが悪くて仕方なかった。　まとめて２日分記すということもあるし、通信環境のない旅先からはメールでの書き込み機能なども使ってみた。　　そうした中で、自分でも不思議に思うことがある。　戦史を綴ることを苦痛と感じたり、ネタに困ったことがないのだ。　　 　　戦史を綴る上で、ある程度は自分で決めている枷はある。　　ある時点でもうやめてしまった『弟子ラヴ日記は書かない』というのもあったが、　『他の冒険者や戦史編纂作家の批判や中傷をしない』　『愚痴をこぼすだけで終わりにしない』　『ポジティブ・シンキングを基本とする』　『小学生の絵日記のような行動記録だけのものは書かない』　『自分が何を感じたかを明確にする』　　こうした枷を以っても、書けないということは幸いにも無かった。　　 　　受けを狙うとか、読者の期待に応えようという感覚がないからかもしれない。　　現実社会で、人にどう思われているか気になって仕方ない時代はあった。　誰かに何かを言われるたびに傷ついたり、落ち込んだり・・・　　けれど、そのうちに気がついたのだ。　人に評価されるより、自分が自分を評価することが大切だと。自分が自分を一番好きでいなければいけないと。　　誰のために書き記しているか、それは自分のためなのだと思う。　だから、書けないということがないのだ。　　今日の自分を残すために、明日の、いやずっと後の自分に伝えるために、こうやって戦史編纂を続けているとも言える。　　 　　そして、時折、取り出して眺めては思う。　ああ、こんなこともあったな。こんなことも思ったな。　　色々な経験を経て、挫折しかけたり、落ち込みながら変わっていく自分。　どんなに無様であっても、どんなに情けなくても、それは紛れもなく自分自身で、誰よりも愛しい存在だ。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月06日

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  脆弱なる守護神

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　ひと目みた瞬間から、妙に気になる冒険者だった。　　また戦乙女が大陸を去るとの報せを聞き、我らが最愛の戦乙女は寂しげな顔をしていた。　　こんな時こそ、仲間でにぎやかに過ごすに限る。　蒼き聖騎士と両手斧の愛弟子、そして伝説の鎧をまとう聖騎士と戦乙女夫妻を誘い、死へと誘う赤い巨神の集団討伐に出かけた。　　 　　赤い巨神を待ち受けているうち、『営業中』の看板を掲げた冒険者が佇むのに気がついた。　　なにをしてるのだろう・・・　　不思議に思いながら巨神に仲間たちと立ち向かううち、突然、まだ倒れるはずのない赤い巨体が崩れ落ちた。　　一体何が起こったのだ？　同僚たちが次々とお礼の言葉を口にした。所謂『辻シャウト』をするために彼はここにいたらしい。　　面白い戦士もいるものだ。　　討伐を無事に終えて、次の討伐を引き受けながらも、彼の存在が気になって仕方なかった。　　 　　「ねぇ、ヘンな人がいるよ」　討伐隊には加わってない戦乙女が突然言った。　自分の近くに彼女はいないはずだが、自分以上の変わり者がいるとも思えない。　　「狩っていたら、そばに来てシャウトしてくれるんだけど・・・　弱いからすぐに死んじゃうの。でも、何回も生き返ってくるの。　すごく変な格好だし・・・」　「ああ、さっきみんながお世話になった方だよ。」　「ヘンな人に悪い人はいないよ。」　「漢だよなぁ・・・」　「ネタに生きてる感じだね。」　「なんだか、我が社向きの人材だね。」　　 　　気付くと、口々に語る同僚たちの視線が自分に注がれていた。　　いや・・・　　「実は、もう体験入店しないかと、口説いている最中なんだ。」　店内は大笑いに包まれた。　　　かなりの階級まで達した杖遣いの戦乙女だったらしい。　哀しいほどに闘えなくなっていく己を封印し、戦乙女を守護することだけに生きる戦士に生まれ変わったと言う。　　「どうせ営業するなら、派手で、　信用のある看板を背負った方が客受けもいいんじゃないかい？」　「なるほど。」　彼は笑顔で旗を受け取った。　　 　　個人商店制度が出来て以来、物売り集団としての我が社は、その存在意義を失ったという声もある。　けれど、体験入隊してくれた戦士のように、物を売る以外にも人との繋がりを拡げる商売のネタはあるのだ。　　元より『儲ける』という言葉とは無縁の物売り集団である。その御代として欲しいのは、何よりも人の笑顔だ。　少しばかり、原点に立ち返って考えてみないといけない。　大切なことを脆弱にして心優しき守護神は教えてくれた。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月05日

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  心願成就

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　彼の可憐な戦乙女がついに旅立つ。あんなにも切望していた、懐かしい旗を背負って。　　１人で全てを背負う決意をしたことを知った時、この日が来ることを理解だけはしていた。　　 　　けれど、さすがに目が潤む。　高熱のせいか、それとも、まぶしすぎる旗のせいなのか。　　贈る言葉は一つだけだ。　いってらっしゃい。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月04日

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  仕事が人を育てていく

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　重い重いと言いつつも、しばらくこの旗を背負うことになりそうだ。　　１ヶ月の休暇が明けた同僚が復帰してきた。　先だってのイベントスタッフもまだ入店したままになっており、かなりの大所帯に驚かれたかもしれない。　　ただいま、と気楽に帰ってこられる場所があって良かった。　「おかえりなさい」の大合唱を聞く彼を見て、つくづくと実感させられた。　　 　　イベント催事場へ出向中の我らが最愛の戦乙女から、諸事により１ヶ月ほど不在時間が増えるとの連絡があった。　ゆえに、もうしばらく長の旗を背負って欲しいと。オーカイだ。彼女の頼みだけは絶対に断れない。　　短期間であっても、この旗を手渡された以上、受け取った時そのままのいい状態で返さなくてはならないと思っている。　　しかし、わずかに１ヶ月程度の代理であっても、こんなに神経を使うのだ。二代目以降となった長は、似たような、自分以上の重圧を持っているだろう。　　初代がこの大陸から去ったのなら、なおさらだ。「誰々さんの何々」、そんな初代が作り上げたイメージや幻影に、日頃からさいなまれ、追いかけられがちだろう。　　自分が立てた旗なら、下ろす決心も自分次第だ。けれど、二代目となるとそうはいかない。　どう伝統を守っていくのか。どう自分のカラーというものを出していくのか。　　 　　そんな重圧について考え込んでいる最中、長期休暇に入る同僚がやってきた。初期メンバーの１人であり、同じ時期に入店した経理部長だ。　訣別ではないけれど、しばしの長い別れとなる。我らが最愛の戦乙女が不在の今、自分は何をすればいいだろう。　　「店長だったら、どうするかな・・・」　自分のやり方というよりも、やはり、彼女が培ってきた我が社のやり方で考えてしまう。　　彼との思い出というと、やはり合成祭りであるが、残念ながら懐も寂しい所だ。　　「そうだ。マルスへ行こう。」　初期メンバーで、いっぱいいっぱいになりながら日参した場所、紅蓮の火山地帯が頭に浮かんだ。　　 　　経理部長を務める聖騎士を拉致し、ついでに火山地帯最強の討伐戦も引き受けた。　　「歩いて行きますよ」　倹約家の『ケチパラ』の異名を持つその人はにっこり笑いながら言った。　　２人だけで歩いたその地は、嘘のように楽な狩場と化していた。　「私たちも、いつのまにか強くなったな」　「本当に」　初期メンバーで命からがら闘っていた頃とは、雲泥の差がある。死へと誘う最強の敵に囲まれながらも、余裕があることに驚いた。　　その上、コエリス神は素敵な贈り物を投げて寄越したのだ。　　 　　碧色のビーズを経理部長から手渡された。これからはこいつを御守り代わりにして行こう。　　「いってらっしゃい」　取りあえずは「おかえりなさい」と言える場所を守り続けること。　　欲を言ってはきりがない。それどころか、これだけで精一杯かもしれない。　　けれど、椅子が人を育てるという。旗の重さもきっと自分を育ててくれるだろう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月03日

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  公私の公

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　どこまでも自分に枷をはめるのが好きらしい。　　長期休業に入る同僚、経理部長から我が社の資産の引継ぎを受けた。　捻りのない名前の倉庫番を３名用意し、同じく捻りのない名前を持つ経理部長の倉庫番から、南瓜祭りの時に集めた資産を一つ一つ受け取っていった。　　噂には聞いていたが、ここまでの資産を保有していたのかと心底驚いた。　　 　　あれは、南瓜祭り最後の日だ。　初期メンバーである５人しかいない仲間の中で、唯一失敗を続け、南京大王帯も南京女王帯も手にしていない経理部長を前にして、我らが最愛の戦乙女が言った。　「とにかく、＋１ペンとネク、お面と人形を集められるだけ集めよう。それさえあれば、後から何とでもできる。」　仲間たちは狩り場に散り、素材集めに奔走した。　　果たして、その後地道に工芸石を集めた経理部長は、４回の失敗の後に南瓜大王帯を完成させていた。　そして、今なお莫大な資産が我が社には残されていたのだ。すでに南瓜用品は暴騰し、信じられないような値をつけている。　　我らが最愛の戦乙女の先見性を改めて認識した。　　 　　これだけの資産を管理していくということで、荷の重さをまた感じる。　私蔵品ならいい。　どんな不測の事態があろうとも、売り払おうとも、その責は自分だけのものだ。　　けれど、時間切れまで各地を走り回った仲間たちの想いが、３人の倉庫番でも持ちきれない品物の中にぎっしりと詰まっている。　　これを取り出すときの約束事を、早い時期に決めなければいけないと思う。　もはや、初期メンバーだけのものではない。これは【大バーゲン】という名の共同体の共有財産だ。　個人の意向で軽々しく取り扱うことの出来ないものだ。　　 　　役職に対してもそうなのだが、公私の別に対して、どうしても自分はより厳しいものを求めてしまう。　　私蔵していた南瓜用品がわずかにあったため、それらを持っていることで公有財産の横領と思われるなど、いらぬ誤解を生みたくない。　そう考え、私蔵のものを仲のいい暗黒の聖騎士に提供した。　残念ながら、彼は大王帯を手にすることは出来なかったが、私蔵品を整理して、気持ちが軽くなった。　　　とりあえず、店内で修行を重ねて、ある一定の階級に達したものに必要最低限の素材を手渡す。　そんな形態を考えてみた。　工作石と資金はもちろん自前でやってもらうことになるが。　　 　　理論上の最低必要数を割り出しながら、ふと思った。　こうしたものを渡すことが、仲間たちを縛ることやいらぬ競争心に繋がったりしないか。これ目当ての加入者が生じたりはしないか。　　堂々巡りする思いと向き合いながら、倉庫番たちを見つめている自分がいた。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月02日

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  それぞれの到達点で

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　魔術士の愛弟子が還暦を迎えた。　　自分が還暦を迎えた日、突然、我らが最愛の戦乙女に呼び出された。　ターラの倉庫前で、無造作に手渡された小さなナイフ状のもの。　それを見た瞬間、思わず涙が溢れ出てきた。あの喜びと感動は忘れられない。　　 　　自分が感動したから、他人もそうだろうと思うわけではないのだが、以来、親しい人の何かの節目には、何かをプレゼントするようにしてきた。　両手斧の愛弟子には、アゴンメイスを作ってみたし、戦史編纂作家の世界での弟子にも、同じものを渡した。　　この所、魔術士の愛弟子は、ウーノス島で着々と修行を重ねていた。ところが、渡したいものの素材が集まるより早く、還暦の報せが届いてしまったのだ。　　慌てて、同僚たちに声をかけ、最後の一つの素材を譲り受けた。しかも、急なことで合成の資金も工作石もないときている。　両手斧の愛弟子を脅すように資金を略奪し、合成の準備を整えた。　　 　　ああ、だけど・・・　　今夜も人生横丁には涙がこぼれただけだ。　　　二人の弟子に立ち合わせての挑戦だった。こんな時こそ、さくっと成功して、無造作に渡したかった。　　二人の弟子を残し、自分は自分を見つめ直す旅にでた。　　辛いことを忘れたい時には、ただ黙々と駆り続けるのがいい。　　 　　そして、そのまま深夜の火山帯で狩りを続けた。言動は粗暴だが、誰よりも心優しい聖騎士が一緒だ。　　気がつくと、自分自身ももう一つ階級を上げていた。　　いよいよ、近頃ではまったく会えない師匠の階級の一つ下に、ついに到達したことに気付く。　このままだと、次に会う時は、縁が切れてしまいかねない。　　しばらくは抑制するべきなのか、それとも・・・　　 　　愛弟子たちに囲まれるのは嬉しい。　だけど、今しみじみと師匠に会いたいと思う。　　背負うものの重さとか、何もかも忘れて、少しだけゆっくりと、師匠に甘えてすごす時間が欲しい。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年02月01日

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  企画屋始末記

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　久しぶりの徹夜となった。　　２１時、１００名を越える参加者がクロノス城を尋ねてくれた。　そして、５時間後の決勝終了。ウーノスには５０名近い参加者が残っていてくれた。　　序盤戦における進行管理の不手際がありながらも、予定したプログラムを半分削りながらも、何とか乗り切った。　　けれど、運営管理をしていた自分自身も、共に企画を練り上げ、司会進行をしていた我らが最愛の戦乙女も、ただ、やり切れない思いでいっぱいだった。　参加者の皆さんに、そして、遅くまで運営に携わってくれた仲間たちに、本当に申し訳なかったと思う。　　力が足りなくて、本当に恥ずかしい。　今はただ、ごめんなさい。それしかない。そして、そんな中でもいてくれた貴方に、ありがとう。　　　 　　司会役の彼女と朝まで語り合った。問題点をそれぞれの役割や分担した作業という側面から考えてみた。　　我らが最愛の戦乙女が記していない分野について言及したい。　兎にも角にも、危機管理を軽視した役割構成と情報の取り扱いの拙さ、この２点に尽きると自分は考えている。　膨大な量の進行表を配布し、延べで７時間以上にわたる２回のリハーサルを行った。　役割分担表や参加者管理表、問題一覧表の配布、問題管理番号での辞書登録による出題の簡素化など、事前準備は先ず先ずだったと思う。　　しかし、何らかのトラブルが生じた場合のフォロー、バックアップ体制が見事に抜け落ちていたのだ。　問題の報告経路、対応についての意思決定から全体への伝達経路、そうした情報集約と伝達についての詰めが、あまりにも弱すぎた。　　 　　○スタッフへは、ギルド【大バーゲン】のギルドチャットで連絡。　○勝ち抜けした参加者にはギルド【ラピス催事場】のギルドチャットで連絡。　○【大バーゲン】以外のスタッフ３名については、進行管理ＰＴチャットにて連絡。　○参加者はブレーンＰＴ内で状況やルールを伝達。　○参加者への各種説明は【ラピス催事場】のギルド連絡に明記。　○出題や簡単な説明については、シャウト及びノーマルチャット。　　以上が情報伝達経路として用意していたものだ。　進行管理ＰＴチャットをルーターと考えればわかりやすい。他のネットワークからの情報を受け取り、適切なネットワークに受け渡す役だ。ここに集まった情報が利用され、必要な場所に回されるはずだった。　　ところがあるトラブルが同時に発生したため、（複合理由によるイベントギルド定数以上の予選通過＋敗者復活なのだが）突如、進行管理ＰＴはトラフィック状態に陥った。　この場合のサブ・ルーターを置いていなかったために、そちらの対策に追われることとなり、それぞれのネットワークはある一定時間、孤立した状態になった。　　情報がない状態では何も判断はつかないし、疑心暗鬼が生まれもする。特に、情報が少ないネットワークの末端では空白の時間が生まれた。　ノーマルチャットやシャウトという、全てに伝わる経路を利用する道もあったはずだ。　緊急時にそこに切り替えることが出来なかった自分が情けないが、ユニオンウォー用の同盟チャットのようなものがあったらとも思う。　　 　　ああすれば良かった。これがあれば良かった。　ただ後悔したり、言い訳をしたり、謝るのは簡単なことだ。　　何よりも難しく、そして、やらなくてはいけないことがある。　二度と同じ轍を踏まないよう、二度と苦杯を嘗めることがないよう、納得のいくものを今一度作り上げることしかない。　参加してくれた方にとっても、スタッフにとっても、そして、自分自身にとっても・・・　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年01月31日

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  無限大の三角

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　一時とはいえ、重くて仕方がない。　　イベントギルド【ラピス催事場】に、我らが最愛の戦乙女が出向することになった。　留守宅を守るべく、組合長を示す旗を受け取る。　　 　　こんなにも重たいものとは、思いもしなかった。全ての生殺与奪権を与えられたようなものだ。　ちっぽけな三角形の布切れ一枚、どれだけの大きさかと実感させられている。　　かつて、彼の戦友に言われた言葉を思い出した。　「この重さは、背負ってみなければわからないよ」　　 　　魔術士の愛弟子が長の旗を背負った時のことを考えてみる。　愛弟子は、深夜に１人立ち尽くしていた。旗の重さを嘆きつつ・・・　　弟子の気持ちに近づきたいと、あえて師匠の代理として、固辞していた副店長代理の席に座ったことがあった。　「副」がつくだけで、本当の旗の重さとは比べ物にならなかったのだと気付く。　　よくぞ、この重さに耐え、愛弟子は仲間たちを守り抜いている。　　 　　この旗は、同僚たち全ての思いに責任を持つという証なのだ。　そして、この旗に恥ずかしい真似は出来ないという、わが身に科せられた戒めでもあるのだ。　　我らが最愛の戦乙女や彼の戦友も、そして魔術士の愛弟子も、いつも単独で荒野を歩く長は多い。　　誰かが呼べば、いつでも動ける場所に自らを置いているのだ。　そして、誰かのためだけに動くということを決してしない。　　 　　困ったものを背負ってしまった。とにかく重くて仕方がない。　辛いわけじゃないのだけは確かなんだが・・・　　とりあえず、クロノス大陸横断ウルトラクイズを無事に終えて、我らが最愛の戦乙女が戻るのを待とう。　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年01月30日

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  花咲く戦乙女たちは何処へ

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　戦乙女たちへの風当たりが強いらしい。　　現実の世界から解放されて、この大陸に降り立つことが出来るのが、連日２３時近くという一週間だった。　借金返済だけを目的に、両手斧の愛弟子と歩くのが唯一のストレス解消だった。　　おかげで、戦史の編纂も滞りがちだし、芳名録に記載していただいた方への謝辞も放置してしまった。　本当に申し訳ないことと、頭を下げることしきりだ。　　 　　その上、企画したイベントの期日は刻々と迫ってくる。　　ようやく、時間を作り、我らが最愛の戦乙女と打ち合わせを重ねた。　リハーサルでのすり合わせ、変更を繰り返しては、各種文書の訂正や作成をしていた。　　そんな最中に、いつもなら数多の戦乙女たちに囲まれている聖騎士を見かけた。巨大な両手剣を携えた姿には、王者の風格すら漂っている。　ところが、信じられないことにたった一人で立っているのだ。　　 　　彼を取り囲んでいた戦乙女たちはどこへ消えたのだろう。　　そう考えているうちに、決して弱音を吐かなかった我らが最愛の戦乙女、店長が近頃、ぽつりと言っていたことを思い出した。　　新しい冒険者が大陸を訪れないこと以上に、自らの職に限界を感じて去っていく人が多いのだと言う人もいる。　転職がもっと容易な世界であればいいのかもしれないが、「仲間うちでお荷物となりそうで、気が引けるの」と語っていた戦乙女もいた。　　特に大陸の冒険者が高齢化するにつれ、職ごとの力の格差は大きくなっている。　　彼が嫌われたわけではない。　愛する人の負担になることを恐れて、戦乙女たちが姿を消しているようでならない。　　 　　誰かが損をするとか、誰かの負担になるとか、そんなことを考えないでいいんだ。　　そこに華やぐ貴女がいる。ただそれだけで。　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年01月29日

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  いつもと同じという選択

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　その夜の街は、近頃には珍しく混雑していた。　　耳を澄ませば、引退を惜しむ声や、「さよなら」を告げる声が聞こえる。　けれど、人込みの中に入っていく気にはなれなかった。　　とにかく、今必要なのは、借金返済のためのいい稼ぎ口だ。　いつものように、仕事斡旋のリストに目を通していると、死に誘う赤い巨神の集団討伐があった。　歓声を上げただけで、両手斧の愛弟子が駆け寄ってくる。　　 　　以前ならＪＶ、ジョイントベンチャーとして名義貸しをしてもらい、単独で行くことが多かったこの仕事だ。　いつのまにか、愛弟子が同行してくれるようになった。それどころか、彼の方が仕事を見つけて呼び出してくれる。　　まぁ、自分の暴走を止めてくれていた唯一の相手が、暴走に加担するようになったわけだ。　　 　　赤い巨神狩りを続けているうちにも、別れを告げる声が届いた。　　「さよなら」は言わない。　　ただ、いつものように「いってらっしゃい」と返すだけだ。　　 　　大陸から去っていくこと。　これが一体何なのだろうと思う。　　去る人は去っていく。　残る人は残る。　ただ、それだけのことでしかないのに。　　 　　誇り高き聖騎士が突然の失踪を遂げて以来、引退式と称した時間にどれだけの意味があるのかと思うようになった。　別れの挨拶をすることに、どんな意味があるのかとも。　　考えてみると、葬儀というものがちょうど同じ性質のものだ。　訣別の儀式は、残される者のためにあるもので、去っていく者には意味がない。　　 　　先だって引退を決めた聖騎士は、ある思いを手渡すために来てくれた。　我らが最愛の戦乙女の師は、最後の合成を強要するために来てくれた。　　お世話になりました、そんなことを伝えるためではない。　いつものように馬鹿騒ぎをして、いつものように消えていった。　　けれど、彼らが託した想いを受け取る行動の中で、彼らとの別れを受け止めていくことができていたように思う。　　 　　別れの場が必要なのは、残される側で、誰かが消えていくということを受け入れるための通過儀礼に他ならない。　　彼の聖騎士が突然消えた時、この通過儀礼がないがために、多くの人々が怒り、混乱し、数々の憶測が生まれた。　　あれからどれだけ経っただろう。　少なくとも、日々の暮らしの中で混乱は収拾し、誰もがそのことを受け入れている。　　 　　大陸から去っていく人がいる。　ぼんやりとしながらも、次の楽しいことを探している自分がいる。　　いつものように過ごしていれば、いつしか、みんな思い出になるだろう。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年01月28日

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  カイラ前でつかまえて

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　無理をするのはもうやめた。　　ここしばらく、両手斧の愛弟子との距離感がうまくとれずにいた。意識的に別行動などもしていたが、どうもしっくりこない。　　そんな中、コエリスの地に住む、神宿る手の画伯から、両手斧の愛弟子との新たな肖像が２点届けられた。　　そのうちの一つを見た瞬間、動揺を隠せなかった。　　 　　ああ、気持ちを隠そうなどと思う方が馬鹿だったのかも知れない。画伯には、すっかり見透かされていたのだ。　あえて一般に公開しないまま、直接に送ってくれた配慮が嬉しかった。　　もう無理はやめよう。　　弟子ばかと言われようとも。　Ｒ師弟と呼ばれようとも。　　　「もうきたか？」　魔術士の叛乱に参加するために大陸に舞い降りると、すぐに聞きなれたささやき声が響いた。　こちらの行動パターンはすっかり判っているらしい。　　魔術士の側に寝返ることは認められている。有無も言わさずに、愛弟子を抱きかかえた。　　そうなのだ。　彼以外の誰にこの身を任せられるというのだ。　　 　　イベントを終えて棲み処に戻ると、我らが最愛の戦乙女の師が待ち構えていた。　ついに引退を決意した彼女は、弟子や同僚たちを次々と拉致し、涙に濡れた人生横丁、合成屋の前へと誘った。　　師に強要されながら、蒼い塊を作る店長の姿に、次々と同僚たちも触発されていく。　　愛弟子も例の如くに、魔術士の魂たる両手杖を蒼い塊に変えていた。　　昨年暮れの聖夜以来、すでに莫大な財産をつぎ込んでいるはずだ。こんな自分のために。　　リベンジか・・・　　自分は倉庫番の元へと走った。　　そして、当然のように１回目は蒼い塊が手渡された。　　 　　底をついた資金の融資を同僚から受け、ようやく２回目にカイラから受け取ったものを弟子へと手渡す。　　「本当は自分で作ってあげたかったんだ」　ぽつりと彼が言う。　　「２人で作ったのさ」　ふたたび彼から受け取った銀色の両手杖を握り締めて答えていた。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年01月27日

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  ふたたび魔術士の『氾濫』

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　これほどの魔術士が大陸にいたのかと心強かった。　　多くを語る必要はないだろう。　ただ、楽しい時間だった。　　『両手職推奨、プロテクタースタッフは特に激しく推奨』　そんな呼びかけに、次々と楯を投げ出す魔術士の姿があった。　　裏切り者の名を汚名をあえて受け、伝説の鎧に身を包んだ愛弟子もずっと傍にいてくれた。　　 　　主催者の説明を受ける間には、小隊の中で様々な会話が弾んでいた。　　何に特化しているのか。　どんな育ち方をしているのか。　　どの魔術士もみな個性豊かで、日頃から大陸での狩りを楽しんでいる様子がうかがえた。　　身の回りに同じ職の冒険者が少ないだけに、こうした機会は本当にありがたい。　　そして、戦闘開始。　　戦乙女に死の口づけを受け、何度も倒れては戦地に駆けもどる。　つくづくと、魔術士の最大の敵は戦乙女だと実感する。見えない所から攻撃され、気づいた時には地に伏していることもしばしばだ。　　 　　膠着状態の後に、大将戦。　もっぱら、大将の周辺で迎撃を受け持っていたが、やはり、支援役として寄り添ってくれる愛弟子の存在が大きかった。　もう駄目かと思う瞬間には、体力が回復している。　安心して身を任せていられる相手がいることで、攻撃だけを考えて動いていられる。　　　そして、前半の膠着状態が嘘のように、早々に連合軍の大将が倒れたという報せが届く。　　ああ、祭りは終わりか・・・　　わざわざ屍の上で乱闘を繰り広げたり、名指しで襲い掛かってきたり、人を踏みつけにやってきた友がいた。　祭りでのことだ。怨みはしない。　決して忘れることはないが・・・　　 　　大規模な対人戦として、単なる強さ比べとか、自己満足的なものと考える人もいるようだ。　　けれど、多くの人が来たのはただ闘うためなんかじゃない。　こうした祭りの時こそ、人が動き、大きな交流の場所となり得るのだ。　　『ハレ』と『ケ』があればこそ、世界は面白い。　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年01月26日

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  分岐点

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　目の前に分かれ道があった。　　立て続けに知人たちが還暦を迎えたり、黒衣や骨董衣へと姿を変えている。　個々の思いに濃淡はあれ、目標としていた場所にたどり着いたことに違いはないだろう。　　問題は、『そこからどこに向かうのか』ということだ。　　 　　久しぶりに黒衣を纏い、落雷と毒気の荒野に狩りに出た。この地は初めてだという同僚、伝説の鎧を着た聖騎士も一緒だ。　　出来るだけ多くの敵を集め、召喚した魔族の力で殲滅する。　入店して間もない同僚にしてみれば、まともな狩りをする自分を見たのは初めてだったろう。　　以前、まだ集団行動に慣れていなかった蒼き聖騎士、（もっとも、最近はスケベディンと呼ばれているらしいが）彼とカイヌを歩いた時に言われたことがある。　「いつもの碧眼さんじゃないっ」　　両手斧の愛弟子を無理矢理に支援役にして、黒衣のための荒修行に出た時などは怒鳴りつけられた。　「回りのことをもっと考えろ！」　　それ程に荒っぽく稼ぐことだけを目的に、集団行動に特化した狩り方を本来の自分はしてしまう。　　 　　生まれて初めてパーティを組んだ日、今は伝説となった週末だけ舞い降りる魔術士がいた。　彼に集団行動を叩き込まれ、彼の記した戦史や戦略研究で学べたため、正統派の魔術士の闘い方が、無意識のうちにも身についているらしい。　　また、この大陸で骨董衣や骨衣となった名だたる冒険者たちがまだ黒衣の時代、火山地帯をいつも彼らと共に歩いていた頃があった。　軟弱ではあるものの、『廃人』と指差されるような闘い方、それが身に染み付いているのも事実だ。　　単独で死へと誘う赤い巨神と渡り合うのは、自分の力を確認したいという、虚栄心を捨てきれないからだろう。　　 　　けれど、ここに戦史を綴ってきたおかげで、折につれ、この大陸になぜ自分がいるのか、どこに行くのかを考えることが出来た。　　南瓜大王帯を作り上げた時　同業組合の愛と友情の指輪を手に入れた時　そして、同盟戦争にどんな立場でかかわるべきかを考えた時・・・　　少しづつ、ここにいる意味を考えながら歩いているうちに、気がつくと今いる場所に立っていた。　ただ、強ければいいとか、上位にあがれればいいという気持ちは消えていた。　　そして、振り向くと、遥か後方に分かれ道が見えた。　　同僚たちが、弟子たちがいなければ、今ごろはとっくに骨董衣でも纏い、引退の道を選んでいただろう。下手をすれば、蒼き衣のままで辞めていたかもしれない。　　 　　どこにいようとも、どんな『ゲーム』でも良かったのだと思う。この大陸である必要もなかった。　　たまたま行き会った仲間たちと馬鹿騒ぎを繰り返し、笑いながら歩くうちに今の道を選択していただけなのだろう。　　とりあえずこの道にはまだ行き止まりがない。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　　

  2004年01月25日

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  欲しいものは手に入らない

  現実逃避の日記なのか、もしくは廃人修行の記録であるのか。　　不思議な夜だった。　　何人もの聖騎士たちに話しかけられた。　　と言うか、聖騎士以外から話しかけられることが少ないのだが、やけに拉致されたり、絡まれる夜だった。　　 　　出張から戻り、コエリスに降り立って、しばし歓談。　　 　　ある人へのプレゼント素材のために、目立たぬように過ごしていれば、立て続けに捕まる。　　 　　しかも、愛弟子は昨日付けの戦史を読み、近くに寄って欲しくないのだと思ったらしい。　うまく説明できない自分が不甲斐なくて、再びコエリスへと出かけて、気持ちをクールダウン。　　 　　そして、気を取り直して愛弟子と挨拶すれば、引き続き、やけに人から絡まれる。　　 　　次から次へと人が集まってくる。　　 　　ようやく遠慮がちに絡んでくる愛弟子は、もう半分がた眠いらしい。　　 　　とりあえず、形だけのパーティであっても、彼の祝福を受けるのは嬉しい。　　 　　そして、落雷と毒気の荒地に出向き、ストレス解消のように狩りを続けた。　　 　　言葉に言い表せない時もある。　　手に入らないものだから、欲しいと思うのだろうか。　　まぁ、今を楽しむ他にないわけだ。　

  2004年01月24日

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