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玉藻

玉藻

後白河院政の研究

後白河院政の研究

下郡 剛氏著(吉川弘文館)
(平成11年8月10日・第一刷発行)



【内容】
摂関・院政期、陣定の再検討
後白河院政期における国家意志決定の周辺
公卿議定制に見る後白河院政
奏事に見る後白河院政
後白河院政期における奏事の一側面
国家意志決定連絡合議に見る後白河院政
院政下の天皇権力
後白河院政期の公家新制 など



後白河院政期というより、その前時代の白河・鳥羽院政及び、堀川親政から、非常に丹念に各日記文書を調べあげ、院伝奏の実体やその変遷について、とても詳しくかつ分かり易い事例を上げて述べられています。とても読みやすくまとめておられるのが、まず印象としてありました。
読み手側にとても配慮してくださった日記文書の例や、簡潔で順を追った年表は、感激の溜息がでるほど丹念に作られていて、本当に勉強になります。
陣定・奏事・在宅諮問といった国家意志決定の手段の変遷。それに伝奏の近習や蔵人の役割に関しても、細かな記録の隅々に神経を行き届かせておられるので、後白河院政期の政務の取り方が手に取るようにわかりました。
院・天皇・摂関という三者による合議が、後白河院政期になるとスムーズに運んでいく形態になった事が、奏事目録というものを介し確立した事もわかり、興味深かったです。
特に院の近習という人々は、終始近習であり続けるのではなく、疎遠になったり、復活する例があることは、はじめて知りました。寵臣として位を進んだ人の中にも、陣定に参加することができなかった人がいるとは。公私を分けているということなのでしょうか。特に、成親・資賢・泰通などの院近臣達が、陣定に参加しなかった事実は衝撃的でした。
反目し合っていたとばかり思っていた、後白河院と九条兼実に関しても、確立された合議制に則して話し合いが行われていたのは意外で、そう言えば『玉葉』の中で、とにかく兼実が院に対して何度も遣いを交わしているように思えたのは、このことであったかと、今更ながら確認したのでした。
本書の中で、仰っておられるように、この研究を“後白河院政”だけでなく、その後に続く“後鳥羽院政”に関しても継続・発展させていただきたいです。




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