Mr. Jim McEwan
スコットランド・グラスゴーからプロペラ機で西へ1時間。モルトマニアが聖地と呼ぶIslay(「アイラ」と読む)島に着きます。皆さん、とくに日本人はマニアの人が多いらしく、その業界では本当に聖地のように語られることが多いですが、そのアイラ島最古のボウモア蒸溜所は所有者が転々と変わって現在は日本のサントリーが親会社です(これ本当)。さて、そのボウモア蒸溜所で蒸溜長を務め、その後同島で閉鎖となっていたBruichladdich(「ブルックラディ」と読む)蒸溜所の復活に情熱を傾け、成功に導いたのがMr.Jim McEwan(ジム・マッキューワン)氏です。そのジムを取り上げるのは、本日2013年8月1日がジムの引退日だからです。現地時間の午前10時ころ、「じゃあな」と言って後姿で片手を振り蒸溜所を後にしたでしょう。ジムは日本びいきで有名で、ボウモアの親会社であるサントリーの山崎蒸溜所で働いた経験があり、東京のこともよく知っていてカラオケ大好きな陽気なおじさんです。私が蒸溜所を訪ねていって秘密の話を打ち明けると、お前はブルックラディのNo.1スーパースターだ、と言ってくれました。その秘密は、いつか明らかにしようと思いますが、それよりもIslay Original Maltと標榜し、現在でもフロアモルティングを行なっているボウモアでウィスキー造りを身につけ十分に立派な地位を気づきながらも、同じ島内で長らく停止していた名蒸溜所の復活プロジェクトに飛び込み、そして次から次へと新しいアイディアのウィスキーを商品化して新たな名声を築くあたり、ウィスキー作りを知り尽くした現代ウィスキー造りの神様と言っていいでしょう。その神様が今日引退します。長年の経験が乗じて神様になったのだから、永遠に辞めないでほしいと思うのはこちらの我儘ですが、余人をもって代えられないとすれば、我儘を越えた伝説で称えてしかるべきが相当というのでしょうか。いずれにせよ、かつてボウモアにあり現在はブルックラディにある、人が作ったウィスキーの繊細さは、今後もよき伝統として永遠に引き継がれてもらいたいものです。ジム、長い間お疲れさまでした。Slainte Mhor, Jim!感謝!