「ヤス!上がって来い!お前は志半ばにして倒れた勤王の志士だ!」
ある日の日記に、このあまりに有名な倉岡銀四郎の台詞を書いて以来、銀ちゃんが頭の中から離れない。
「蒲田行進曲」の続編としてかかれた「銀ちゃんが、ゆく」という戯曲がある。(ともに作者はつかこうへいさん)今思えば、hakapyonが戯曲好きに至ったエポックメイキング的な作品である。
泣けて、笑えて、あまりに面白くて・・・この一作ですっかりつかファンになってしまい、その後、熱にうかされるようにつかさんの戯曲を読みまくり、初期のものから最近のものまでほとんど完読してしまった。
(「作品を深く読み込みたいのなら、その作家の作品を全部読むことだ」と短大の教授に教えられた)
舞台は役者の生き様を観に行く場所だということ、役者がいかに業の深いイキモノなのかということ、「才能は目に出る」ということ・・・すべてつかさんから教わった。
戯曲の言葉は印象に残る。
深い思想を含んでいながら簡潔で美しい言葉が多いし、口にして語呂がよく気持ちいいのだ。
作品の中で銀ちゃんが幼い娘・ルリ子(映画「蒲田行進曲」のラストに小夏が生んだ子です)に語りかける台詞がある。
「男と女が惹かれあうのは宇宙の謎です。
この謎を解くために、人は此の世に生まれてきたのです」
ルリ子は病魔に冒され、このままでは余命残りわずか。
当然、この「謎」を解けないままに死んでいく運命。
そんなルリ子の目の前で、降りしきる雪の中、ひとりセックスのポーズをしてみせる銀ちゃん。
「これがまた気持ちいいのです。何故こんなに気持ちいいのかは・・・宇宙の謎です。あなたはそれを知らぬままに死んでいきます。残念でなりません」
この後、銀ちゃんはルリ子の運命の逆転を願い、自ら犠牲となって自身の「階段落ち」を決行する。
銀ちゃんを斬るのは、沖田総司に扮した小夏。(このあたりはつかさんの「幕末純情伝」とリンクしている)
父と母の、娘への愛をかけた「階段落ち」である。
愛する者を守るために階段を落ちていく銀ちゃん。
なんとも強烈な「愛のかたち」である。
当時、かなりのインパクトがあった作品であったが
ずっと忘れていたのに・・・
自分の発した言葉で、記憶の深い部分にスイッチが入った。
今、外は雪が降っている。
銀ちゃんがルリ子に「愛のかたち」を伝えたのも、こんな寒い雪の夜だった。
【追 伸】
ちなみにこの「銀ちゃんが、ゆく」は過去に何度か舞台化されている。
だがそのころのhakapyonには「東京まで舞台を観に行く」などという発想はまったく無かったものだから「いつかドラマ化してくれないかな」と思っていた。
そうしたら数年前、なんと「とんねるず」でドラマ化された(笑
タカさんが銀ちゃん、ノリさんがヤス、小夏が南果歩(←この頃の彼女って「女優魂」炸裂してたなあ)娘が安達由実。西岡徳馬さんが銀ちゃんの先輩の大御所の役で出てた記憶がある。
これが意外と結構良かったんだよね・・・
ほら、とんねるずってよくコントで「蒲田~」やってたから、二人の銀ちゃんとヤスにも違和感なかったのさ(笑
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最終更新日
2005.02.01 18:12:25
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