暑気払い本その1「赤い人」
やっと梅雨が明けて、夏本格的!失業中をいいことに、すっかり「家虫」の私。読んで涼しくなる本をご紹介します。タイトル:赤い人・講談社文庫著者:吉村 昭出版社:講談社、初版:1977年価格:495円(税別)残念ながら表紙イメージを入手できず。明治初期、北海道開拓に酷使される囚人達と彼らを管理する役人の物語。赤い人というタイトルは、囚人達が着ていた囚人服が赤かった事に由来する。読んでいて、すごく寒くなる。暖かいお茶が欲しくなる。ノースリーブなんか着ていられない!北海道の原野を開拓する内地(北海道以外)から護送された囚人達。夏は薮蚊に悩まされ、冬は靴下(足袋)を許されない。疲れを取るはずの寝床も、冬でも毛布2枚(最初の年はそれすらも無かった)。栄養状態も最悪。餓死者や病死者が、続出する。脱走を試みる囚人達。そしてそれを阻止しようとする役人達。囚人達の生活も厳しいが、それを管理する役人達の生活もまた厳しい。やがて、収容所という点が、村という面になり、道という線で他とつながっていく。そして、北海道は拓かれて行く・・・。史実に基づいた当時の役人名や、報告書などが多くて少し読みづらいが読み進めていくうちにこちらまで、寒くて寒くて辛くなる。明治維新というこれまでにない環境の変化によって、「蝦夷地」という未踏の地へ…。囚人も役人も普通の開拓民(維新がなければ彼らも存在しなかっただろうが)も、必死に生き抜こうとする。そんな彼らのあずかり知らぬところで、旧各藩派閥によって運命を左右される北海道。10年ぐらい前、私は現ダンナと愛知県犬山市の「明治村」を観光したことがある。その中に、北海道から移築された「刑務所」を見学した。頑健な門や塀に囲まれた、板張りの粗末な囚人房。その房の中にも入ることが出来た。行ったのは2月だったので、結構寒い。きちんと防寒していたのだが、寒い。もちろん昼間だったが、やっぱり寒い。これが北海道で、薄い綿入れ一枚で、しかも夜だったら??? 思い出しても、さぶい!!この本を読みながら、明治村との思い出と共に、さらに寒くなった。明治維新というニッポン最大級の環境の変化…。明治維新の英雄譚もいいが、こういうのも是非、ご一読を。ついでの感想。この本の冒頭に、明治になっても数年間は八丈島などに「島送り」が行われていた事にびっくり。ちょんまげのお役人様が、ある日ズボンをはいて洋装して囚人を護送に来た日。島の人は、どう思ったのだろうか?