スタイル
今日もまだ調子は良くない。抗生物質は飲み始めたけど、血圧も脈も熱も上がりっぱなしで辛い。しんどくても何か食べないと・・・と思い起きて朝食を摂ろうと思ったが、液体しか受け付けなかった。風呂も訓練もキャンセルして寝る。 寝ていて先週末の2次会3次会を思い出した。その時はウインドサーフィンについて、今思う事を大先輩と語り合っていた。自分の感じた事だが、彼は随分と悩んでいたのではないかと思う。何のために大会に出るのか?これまでに他の人にも相談していたのかもしれない。だとしても答えを出す事のためらいがあったのかもしれない。自分だけでは出せなかったのかもしれない。そう察する事ができる。なぜなら大会の同じクラスで優勝する事を目指し続けた唯一の仲間。チャンピオンとして表彰台に立った男と怪我により再起不能と診断された男。いつかはいっしょに表彰台へ・・・。そう言いながらも楽しむ事を忘れずに練習に明け暮れた日々。どんなコンディションでも楽しく乗りこなし笑顔を忘れなかった彼を、私は誇りに思いその笑顔を忘れる事は無いだろう。様々な思いを抱えながら、ひとつうえのセミプロもいるクラスへランクアップしなくてはならず、オープンクラスチャンピオンという目で見られることと、本来の自分の求める物との狭間で板挟みになっていたのだと思う。 この日聞けば、今年度の大会は出なかったそうだ。闘うかどうかは自分自身で決める事。それでいい。出ろ!勝て!そう騒ぐのはその人を理解せずに自分の気持ちを押し付ける愚かな取り巻き達だ。俺たちはプロじゃない。アマチュアだとしてもプロのような意識を持って闘う事は大切だが、それで糧を得て飯を喰う生き方をしているのではない。優先順位は高くても一番であってはならない。全てを捨てる覚悟で建て前の為にアマチュアが挑んではいけない。それは何年も闘い、挫折し、その結果多くの物が見え、辿り着いた俺の重い言葉だ。 建て前と誇り。勝ったからステップアップ。それは競技者として当然の想いと道。だけど、好きだから競技にも出る(楽しみ方のひとつ)のと、競技に出るのが好き(自分を試す事が楽しい)のは違う。前者でありながら実力が伴えば、勝った後のプレッシャーは本人しかわから無い苦しみだろう。でも、仲間といっしょに波に乗ったときに気付いたそうだ。何のためにウインドサーフィンをしているのか?大会に興味が無い人に聞けば、100%こう答えるだろう。楽しいから!そう!それが基本! 誇りとは、勝った事をベースに生きる事ではない。自分のスタイルを貫くことが誇りだと思う。だから自分の店には誇りに思える先輩がゴロゴロしている。みんな自分らしさを持っている。大会には出ていないが、楽しむ為に、原点に戻る為に、新しくランクダウンしてボードを買った仲間がいる。普通腕が上がると、上のレベルの道具を買うのが当たり前だ。でも、その道具で無いと出来ない状況も有り、今まで見落としていた大事なものを見つけたようだ。それは心のレベルアップに違いないと感じる。それに気付き、自分のスタイルを確立しようとしている親友を俺は誇りに思う。 じゃあ大会に没頭していたお前はどうなんだ?って話。残念ながら、過去を知っている人に聞けば驚く事になるだろう。年間通し全てを大会に向けて集中していた。何処のゲレンデで乗ろうと勝つことに繋げる為に練習していた。壁を見てはボトムターンのイメージトレーニングをしていた。意識だけはプロのレベルを持とうとしていた。サポートなんてなにも無い。道具が必要なら働いた。高速代がなく御前崎まで片道8時間の日帰りもした。一度海に出ると風と波のある限り乗り続け、頭サイズの波の日ですら5時間も帰ってこなかった。しかも上手くなればなるほどハードに攻めるのに、無駄な力を使わないからどれだけでも乗れた。嬉しい事に上手くなると失敗が減るから、波に巻かれて浜に上がる事も片手があれば数えられた。あらゆる状況で、自分の力を100%出せる事を目標にしていた。でも、そんな乗り方が一番最高に楽しかった。それより下は自分じゃなかった。常に100%、テンション上がれば120%で攻め続けた。それが俺のスタイルだった。だから過去に悔いは無い。あれだけの時間(人生)で、あれほど楽しんだヤツはそう居ないだろう。だから色々な事を受け止め理解して話せるんだろう。そして、大会に対する姿勢を間違うと、気付かないうちになくすものが多いよ!本当にあなたが幸せを感じる乗り方は何?と、聞けるんだと思う。まさかこんな形で付き合っていくとは思いもしなかったけどね。