東宝版『RENT』11月9日(日)マチネ
<東宝版『RENT』11月9日(日)13:00 @シアター・クリエ>〔CAST〕マーク : 森山未來 ロジャー : K(Wキャスト)ミミ : Jennifer Perri(Wキャスト)コリンズ : 米倉利紀 エンジェル : 辛 源(Wキャスト)ジョアンヌ : Shiho モーリーン : Mizrock (Wキャスト)ベニー : 白川侑二朗 安崎 求 Eliana Junear 彼方リキト 中村桃花 戸室政勝 YOKO 高良舞子 田村雄一 〔Creative〕脚本・作詞・音楽: ジョナサン・ラーソン 演出: エリカ・シュミットシアター・クリエで東宝版『RENT』を観てきました。舞台は観たことがなく、映画を随分前にみたきりだったので筋は知っていますが、細かいところは忘れてました。作品を作ったジョナサン・ラーソンがプレビュー公演がいざ明日!というときに急死、というあまりにも劇的なできごとは伝説的ですね。友人が取ってくれた3列目センターだったので、帝劇ならともかくクリエでは、役者さんが近すぎて恥ずかしいくらいの距離です。しかし4人中3人が祐ファンでもあり、つい話が「レベッカとは全然違う劇場みたいね」という方向に(笑)。たしかにマンダレーであったことなどまるで信じられない、殺風景な若者の街になっていました。「私生活」は観なかったので、「デュエット」振りでしたが、作品ごとに変わる舞台装置は面白いです。NYの街というか、曇ったガラスの一部が割れて修理もできず紙を貼り付けてしのいだようなアパートの一室を中央のモチーフに、背景はほとんどないに等しくシンプルですが上をみると天井がやけに高い、。カンカンと昇る音がしそうなさび付いたような鉄条網のついた階段などが左右にあるくらいでしょうか。階段の上の踊り場は主人公たちに電話をかけてくる女たちが主に使ってました。(ただしメインの中央と両サイドにいっぺんに目を走らせるのは難しいので、その場面、あまり階段上はよく観察できず)恥ずかしながら名前を知っていたのは森山未來くんくらい。キャストのプロフィールをみて驚いたのですが、外国の血の入った方、海外育ちあるいは海外を中心に広く活躍されていたり、メイクでダークにしている方もあり、人種の坩堝と言われるニューヨークだよ、と言われてもなにも違和感がないようなインターナショナルで多様性に満ちた舞台空間。普段慣れ親しんでいるミュージカルの世界とは異質のソウルフルな歌声やストリート系のダンスは新鮮でした。セリフが少なくほとんどがレミゼのように歌中心に話が進むのですが、マイク音量が大きく、歌は早口で重なりあうことも多く、前半日本語なのに(英語もはいりますが)何故か聞き取りに苦労する部分が多かったです。ストーリーを全然知らない人には難解に感じるかもしれません。客席降りは少ないですが、森山未來さんが降りてきて最前列、そして2列目あたりまで顔をぬっと突き出すようにして話しかけたりするシーンがあるので、近くの友人はおおーっ!となっていました。マーク役の森山未來くんは役を作っているというよりは未來くんそのものにも見えましたが、黒い前髪がスダレ状にかなり長く顔を覆っているので見ていて鬱陶しくないだろうか?と気になりました。未來くんはいつも手に撮影用に日本じゃあまり見ない型のビデオカメラを回しており、ダンスシーンもありますが、タンゴのシーンは短めで残念。ロジャー役のKはソウル出身。顔を斜めにして伏せ目勝ちで歌うことが多いようで俳優というよりミュージシャンという感じ。Exileなどを思い出す、かすれたようなそれでいて響くような不思議な声で独特のこぶしがあります。ロジャーの恋人役のミミ役はJennifer Perri。ハワイ出身ということで体は小柄ですがぷりぷりっとした感じで、大胆な露出のある衣装を着こなし、表情も豊かでとてもキュートで印象的でした。ですが、目のふちに浮かぶ死の影がやはり気になります。同性愛のコリンズ(米倉利紀)とエンジェル(辛源)ですが、エンジェルがとても愛らしくて女装をしても魅惑的で背も高いせいか、ドラッグクイーンの姿もインパクト絶大で、舞台上では目がいつも離せない魅力がありました。映画のエンジェルのイメージに近いかも。とてもこれが初舞台とは思えない素晴らしい演技でしたね。ロンドン出身、神戸育ちで韓国にも留学。けっこう気になる俳優さんになったかも。コリンズ役の米倉さんは映画とはイメージが離れていて歌はとてもよかったですが、年齢が落ち着いてみえ表情もわりとおとなしめにみえました。でもエンジェルの死のあとソロを歌うシーンはついもらい泣きしました。カーテンコールでエンジェルがにこやかに登場したときはほんとに嬉しかったですね。同性愛ということで男同士のキスシーンもありますが、抵抗感はなかったです。モーリーン(Mizrock)&新恋人のジョアンヌ(Shiho)。こちらも同性愛ですが、あまりベタベタしたシーンはなく、どちらかというと口論が多いのですが、そのあとふっと抱き合ったりするのがホッとする感じで、いやらしさはなかった。ジョアンヌ役のShihoさんは、舞台のメイクと髪型、衣装は弁護士というより日本のわりと落ち着いたファッションデザイナーのようで、メイクもコピーライター時代の林真○子さんみたい。演技も声もぜんぶ強烈なインパクト!!モーリーンはとってもキュートで目がくりっくりっとして威嚇的にもみえるほど。抗議パフォーマンスショーを繰り広げるシーンは、ひとり露出が多い衣装で頑張っちゃう空気が痛々しさがよく出ていて、こちらが気恥ずかしくなるほどでした。そのとき使った紙のお面(口のところが穴になってて自分の口を見せてしゃべる)が使用後に座席まで飛んできました。偽の紙幣やスイーニートッドのパイのようには回収されなかったので(笑)隣の席の人とあとで観察しました。座席にはきらきらの紙吹雪の破片もたくさん飛んできました。そういえば、舞台上には雪も降ってきましたっけ。ベニー役の白川さんがミミに執着するシーンはミス・サイゴンの石井トゥイに一瞬見えて、そうなるとミミがキムに見えてきたり、ミミが瀕死になってロジャーに抱かれるところなどはレミゼのエポニーヌとマリウスに見えてきたり・・身軽に飛んだり跳ねたりする森山さんを見ていると、森山ヴォルフとミミ役の子のコンスタンツェをちらっと想像してみたり・・脳内はいろいろな演目が咲き乱れつつ・・。音楽が印象的で心揺さぶられます。2幕最初にキャストがずらっと舞台に1列に並んでSeasons of Love を歌うところは圧巻!他の曲もみなソウルフルでいい曲ばかり。RENTという作品で問題になる同性愛、貧困、AIDSなどは今の私たちとは無関係にみえてしまうけれど、困難に負けずに生き続ける、ほんとうの愛を持ち続け夢を追い続けること、愛・信頼・友情というテーマは人間に共通した課題でもあり、決してその時代のNYだけに限定されるテーマでなく、誰もが共感や感動を得ることができるものだと思います。そしてNo day but today.というフレーズのとおり、今日1日がかけがいのない時間であることをどれだけ意識して真剣に生きているか、それを見るものに常に問いかけてきます。そうそう、テナルディエだった安崎さんはあちこちにいろんな役で登場されるので、ファンの方は楽しめるかもしれません。大きなソロはないけれど、美声は聞こえてきます。廃品が入ったワゴンみたいなのを見ていたら、つい脳内で「み~るく!み~るく♪」と聞こえてきたり、モーツァルト!の野菜売り娘たちを思いだしたり、どれだけ脳が東宝ミュー化しているのでしょうか(笑)。聞き取りづらかった箇所なども2度3度とリピートすればきっと理解が深まるのでしょうけれど、この2ヶ月はエリザ月間なので(笑)、もう1度みるのは無理だし、エンジェルシート(最前列の約10席が毎回当日券として5000円で販売されています。貧しい学生さんなどでも観劇のチャンスとを、ということでオリジナルから採用されているシステム。でも向こうでは、20ドル=2000円~3000円くらい?だからもっと安いですね)に並ぶのも大変ですし、おそらくこれっきりになりそうな気がします。クリエはやっぱり幕間にちょっとおしゃべりしようとするといい場所がないですね。壁にもたれて立ち話しかないなんて、悲しすぎます。こういうとき帝劇や日生はいいよね、とやっぱり古きよきものを愛する私たちはつい思ってしまうのです。新作のチラシがおいてあったので、もらってきました。こう並べてみると、あのお2人がほんとにあそこから退団されたのね、と実感が湧いてきます。退団第1作というのは気になるので(保坂さんはデュエットでみましたし)、石丸さんもイーノック(朗読劇)の方はともかく、クリエは観にいこうかな、という気持ちになりそうです。有楽町は心が弾むんです♪