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カテゴリ:読書
11月3日文化の日は今年は金曜日。三連休だ~♪
とはいっても何も予定はないので 「この連休は引き続き初級テキストの音読でもしようかね。」 と予定していました。 が、ポチっていた巴金《第四病室》がちょうど木曜日に届いたので予定変更。 連休はこれを読んで過ごすことにしました。 《第四病室》だけを収録した本が見つからず、仕方なくすでに読んでいる 《寒夜》と一緒に収録されている本を買いました。 しおりは「こわいもの係シリーズ / 角川つばさ文庫」ね。 昨日(11月3日)の午後から読み始めて、今日の夜読み終わりました。 長編ではないのでがんばって集中すれば1日で読み終わるかも。 お話は、胆のうの病気のため入院することになった「私」の日記形式となっていて、 彼が入院した三等病室(入院費が一番安い最低クラスの病室)で起こる様々な出来事が 描かれています。 1940年代の中国の病院。 病院とはいえその環境は劣悪です。 入院患者は動くことができない者もいるので、尿瓶(いわゆるポータブルトイレね) で用を足すのですが、この尿瓶は病院に雇われている雑役夫たちが決まった時間に 各ベッドの尿瓶を回収して中身を捨てて戻してくれることになっているみたいです。 尿瓶にはもちろんフタなんてないから病室には常に悪臭が漂っている。。。ヒィ~ 印象に残っているのは、尿瓶に尿がいっぱいになっているのに意地悪な雑役夫が 知らんぷりし尿を捨ててきてくれないとか、患者が大便をしたいから大便用の器を 持ってきてくれ!!と叫んでいるのに雑役夫がまったく来てくれないとか、 大や小に関する出来事ばかりで、読んでいる間中「ううっ…臭い…汚い…。」 という思いがずっとつきまとっていました。 糞尿を始末する雑役夫たちは入院患者に食事を配る仕事もしていますが、 「この人たち、ちゃんと手を洗っているのだろうか…?」 と関係のないことが頭から離れませんでした 笑。 三等病室ということで、入院患者はお金に余裕のない人たちです。 また、病院では包帯を固定するテープやトイレットペーパーや治療に使用する薬は その都度患者がお金を出して買わなくてはならないというシステムになっています。 主人公と同室の11号ベッドの患者は会社での仕事中にけがをしたにもかかわらず 会社は「本人の不注意で怪我したんだから会社は治療費を出さない」と、 彼の治療費を出そうとはしません。治療に必要な薬を買うことができないので 11号ベッドの患者はいつまでたっても治療を受けることができず、毎日毎日 生理食塩水の点滴をされるだけ… 2号ベッドの老人が入院する際、彼の息子はあちこちから借金をしてやっとのことで 入院費を納めました。医者は「あなたのお父さんは栄養のある食事が必要だから、滋養の あるスープを食べさせなさい。」と指示します。(病院の食事は粗末なもので、お金のある 患者は自費で病院外の食堂から出前を取っています。) それを聞いた老人の息子は「私一人の給料で家族全員を養っていて余裕が全くなく、父の 入院費もやっとのことで払ったのに、このうえ滋養のある食べ物を買うお金なんかどこに あるのか…」と途方にくれます。 主人公の隣の6号ベッドの患者は、左腕の骨折で入院していましたが、入院中に伝染病に かかっていることが判明し、しかし治療に必要なお金を払うことができず、ほったらかし にされ… と、いう感じで、とにかくお金、お金。お金の話。 医者も看護師も「お金を払わないと治療できないよ。お金を借りられる友達とか 親戚とかいないの?いないなら仕方ないねぇ。」ってな感じでサクッとクールです。 今すぐ治療しないと命に係わるのに、お金を払えないからと患者を放置。 また、雑役夫たちも三等病室の患者にはかなり乱暴な対応です。 いくら呼んでも来なかったり、苦しんでいるのにわざと見て見ぬ振りしたり。 途中で主人公が偶然お金持ちが入院する一等病室を見かける場面がありますが、 そこは地獄のような三等病室とは別世界。当然個室で、入院している人は立派な服を 着ていて、何なら専用の召使までいる様子。 乱暴な雑役夫もこういうセレブの前だとペコペコと丁寧な対応をするのかなぁと 想像しましたが、粗暴で不潔な雑役夫たちなんてまずお金持ちのお世話役には選ばれない でしょうね。 というような病院の中で唯一楊医師という女性の医師が三等病室の患者にも真摯に 向き合い、主人公の「私」とも心を通わせます。 この楊医師がこの物語の「希望」とされているみたいです。 物語の中ではこの楊医師が最後どのような道を歩むのかは明らかにされていませんが、 理想を追求し、立派な医師へと成長していくんだろうなというような希望を読者に 抱かせるような流れになっていますね。 この物語は今まで読んだ巴金の作品の中では比較的ハッピーエンドな雰囲気でした。 《家》とか《憩園》とかはラストでお金持ちの没落の予感が感じられたし、《寒夜》 はタイトルどおりめっちゃ暗かったですもんね。 巴金の小説は《家》を最初に読みましたが、これはお金持ちの豪華で浮世離れした 生活風景が描かれていました。この《第四病室》それと対極で「ザ・現実」といった 印象でした。 《家》は1933年の作品、《第四病室》は1946年の作品。 10年以上の時を経て作風がガラッと変わった?とも思いましたが、 文中で使用されている成語などで両作品共通のものをいくつか発見したので やっぱり巴金の作品だなぁと思ったのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.11.05 11:42:35
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