2018/12/11(火)10:15
「不知火小僧評判記 鳴門飛脚」・・・(6)
お武家さん、またお目にかかりやしょ
四人は夜になって宿場町に入りました。おろくと阿波藩の侍達が入った宿を見ていて、弥太が、「俺たちもあそこにするか」と新三にいいますと、新三は「へえ」と一旦は同意したのですが、宿の二階にお豊の姿を見たから大変
新三「おうっ、兄貴、兄貴、あそこんちは方角が悪いや、方角が・・おっ、こっち
にしやしょう、こっちに、えっ」
新三の言う隣の旅籠に泊まることになります。
宿に入った新三達が夕食を取っています。
一本ずつ付いたお酒を「飲めないんだろう」「身体に毒だから」と言って弥太に取り上げられてしまい、あきれて食事をする気もなくなっている新三に、弥太が新三にこんな話をしてきます。
弥太「夜中にな、俺と猪之とがな、・・(ここは無言で・・・向こうの部屋へ行っ
て、証文を盗んでくるからと、手の指をまげます)・・お前、待ってろ。
どじ踏むといけねえからな」
新三「へえっ」
猪之「新米にはちょっと難しい仕事だからな」
新三「へっ」
寝静まった頃、それぞれが動き出します。
お六も、行動を共にしていて真木三之助からどのようにして証文を盗るか狙っています。新三がおとなしくしているはずがありません。黒装束の不知火小僧になり証文を盗みに動き出し、隣りの宿へ忍び込みます。
障子が開いている部屋を注意深く覗き、十手捕り縄があるのを見て薄ら笑いを浮かべていると、向かいの部屋から「いい加減に引取ったらどうなの」とお豊の声がします。
お豊が鉄蔵に「前から好きだった」と絡まれ危なくなったとき、鉄蔵の首に捕り縄がかかりお豊は助けられます。お豊と鉄蔵が廊下に出てみると誰もいません。
弥太と猪之は侍達の部屋に入りどじを踏み見つかってしまい、「曲者だ」との声に、別の部屋にいた真木が目を覚まし、目の前にいたもう一人の曲者にびっくり、その曲者の方もびっくりします。
その真木の部屋に忍んでいたのは不知火小僧でした。
真木「誰だ」
新三「ちえっ、あいつら、とんだ時に騒ぎを起こしやがって・・・お武家さん、ま
たお目にかかりやしょ」
真木の太刀をかわし逃げる不知火小僧を追い廊下に出た隙に、お六が証文を盗っていきます。
真木達が「泥棒」と騒ぎだしたので、弥太と猪之が慌てて部屋へ戻ってきます。
すると、新三はとっくに戻っていてお夏坊と一緒に寝ていて、二人が戻ってくると、今までぐっすり眠っていたかのように振る舞い、起きて
新三「おい、兄貴、首尾よくですかい?」
と、人差し指を曲げながら言うと、二人は顔を見合わせシュンとします。
その時、お夏坊が夢を見て飛び起きます。
新三「お侍がおとっちゃんを・・」
新三はお夏坊に、それは夢だ、夢を見ていたんだと言い、寝かしつけます。
猪之がお夏坊に「こわいことはねえよ。おじちゃん達がついているから・・」
と言って寝るのを見て、新三は猪之を見て飽きれた様な顔をし、笑いを浮かべます。
新三はお夏坊が安心して眠るように、子守唄のメロディーを口ずさみます。
お夏坊の目から涙が流れているのを見て、新三の胸の中に・・やりきれない思いがするのです。
(橋蔵さま、本当に綺麗ですね)
翌日、弥太と猪之は、宿の客が夕べの話をしているのを聞いて、証文を盗ったのはお六と見て、お六を追いかけることに決めます。お豊と鉄蔵は喧嘩別れ、とまたまた忙しくなる道中模様です。
(ここで、例の軽快なメロディーがずっーと流れます・・このメロディーは滑稽で楽しくなってしまいます))
街道を急ぐ弥太、猪之、お夏をおぶった新三がいます。こっちのみちが近道だとか、何をそんなに急いでいるのでしょう。
(お夏をおぶっている新三が可哀想ですね)
道を下ってきた時、下の道にお六の姿が見えます。猪之が「しめた、追いついた」と言い、
弥太「いい潮時だ。幸い、辺りに人はなしときた」
と言って、新三の方を見て、「怖―いことになるんだから、子供をつれてあっちへいってろ」「新米は足手まといだ」と新三に言い、二人はお六が来る道の方へ行きます。新三は、面白そうな様子です。
さあ、これからあのおっちょこちょいの二人は何を起こすのでしょう。そして、新三も、証文を盗ったのがお六では黙って引っ込んでいるわけがありません。
この街道で決着をつけられ、お夏坊のため証文を手に入れることは出来るのでしょうか。
続きます。