2023/05/16(火)19:55
清水港に来た男・・・(2)
政吉は豪雨のなかを清水の町に駆け込んできて、ある長屋の入口の軒下で雨宿りをしています。
政吉「清水港ってとこは天気まで意地悪く出来てやがるぜ」
そういって濡れた着物を拭いていると、長屋の奥の方で「あら、おすきさん」と呼ぶ声の方に政吉がひきつけられます。
真向いの家のおかみさんが、おすきに雨の中何処へ出かけるのか聞いています。この雨で主人の六助が帰るのに困っているだろうから、むかえに行くところだと小走りに走って行きます。
政吉はおすきが出て来た家の前に行き、何となく格子越しに家の中に目をやると、ちゃぶ台には夕餉の支度がしてあり、晩酌用のお銚子まで用意してある。お腹の空いている政吉には目の毒・・「ああっ・・」と唾をのんでしまいます。
政吉「ちきしょう、世間さまは夕飯時ときやがる、・・・」
さっきから隣家のおかみさんが政吉の様子を見ていますので、何気ないふりをし表札をながめ、
政吉「松原の六助・・」
何か納得したように頷くと、さっきから末吉の様子を見ている隣家のおかみさんに「留守ですかい?」・・・そうだと聞くと、「何処へいったんです?」・・・清水の親分の家にという返事に、「あぁあぁああっ」と。
そして、あのご馳走、猫にでも食われたらどうする、といわれたおかみさんは呆れて家に入ってしまいます。
すると、政吉は六助の家の方に動きながら、こういいます。
政吉「おれ、きっと猫に食われると思うがなあ・・・もったいねえなあ」
政吉「食われても、おらぁ知らねえよ」
といい、玄関を開けると、それからが大へんなお芝居?が・・
政吉「あっ、いけねえいけねえ、シーシーシーシー、この泥棒猫め、シーシー
シー」
と大騒ぎ。隣家のおかみさんもびっくりしてしまいます。
そのころ、六助は迎えに来たおすきと仲良く帰ろうとしていました。
続きます。