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カテゴリ:ジャズ
ジェーン・モンハイトのコンコード移籍第一作。 ソニーでは結局2枚しかアルバムを作らず、最初の意気込みはどこへ行ったと思っていました。とくに2枚目のクリスマスアルバムは酷い出来でした。 コンコードへの移籍は青天の霹靂でした。 今回のアルバムではそれが功を奏していると思います。 全編ストリングス入りの豪華なバックを得てのびのびと歌っていると思います。 今回はスインギーなナンバーはなくバラードとボサノバそれに何故かムーンリバーという組み合わせです。 総じてソニーでのデビュー盤と甲乙付けがたい出来ではないでしょうか。 ジャズ度は下がっていますが、彼女の力量は確実に上がっています。 ■従来のべたべた感が一掃された爽やかさ トゥーツ・シールマンス、イヴァン・リンス、セルジオ・メンデスという豪華スペシャル・ゲストを迎えての収録です。 以前ボサノバのアルバム(Brazilian Nights)でフィーチャーされていたときと比べると、彼女特有の歌い方の癖やべたべたした感じが無く、ボサノバ本来の質感がかなり上手く表現されていると思いました。 1曲目はボサノバの「If You Went Away」。この曲は個人的にはサラ・ボーンがデフォルトですが、あれほどねっとりしていません。 モンハイトはゆったりとしたテンポでムードたっぷりに歌っています。 リズムはあまり強調されず、ボサノバであることを忘れてしまいそうになります。 2曲目は表題曲「Surrender」。 Peter Eldridgeのオリジナルで、カントリーフレーバーを感じさせる曲です。 彼女はエルドリッジが教えていた学生の一人で、「レインボー・ボール・ルーム」でのライブでも彼の作品「Around Us」を取り上げています。 このアルバムの中では少し毛色が異なります。 3曲目はイヴァン・リンスとのデュオ「Rio De Maio」ポルトガル語の発音もそれらしく、かなりいい感じです。 特に情熱的にクレッシェンドしていくところしびれます。 彼女の新しい面を見たような気がしました。 4曲目のドリ・カイミの名曲「Like A Lover」。 かなりゆったりとしたテンポで、切なくも美しいボーカルが聞かれます。 途中で若干シャウト気味になりますが嫌味はありません。 彼女の歌声を聞いているとラテン系の男性歌手のの引き締まった歌声を聞いているような錯覚に陥ります。 5曲目は「So Tinha De Ser Com Voce」(君なしではいられない)。 典型的なボサノバ・タッチで、ポルトガル語で歌われます。 ストリングスは入らず、ギターとパーカッションののりがとても心地よいです。 ■So Many Starsが良い セルジオ・メンデスの名曲「So Many Stars」。 これは以前のアルバム「Come Dream With Me」(N-CODED MUSIC)でも歌われていました。その時はテナー・サックス、トランペットを含むコンボの伴奏で、ジャジーな雰囲気でした。 今回は柔らかい表現と濃厚な表情のコントラストがなかなか見事です。 あざとくなる一歩手前でとどめている、その微妙なさじ加減が絶妙です。 表現方法は違いますが、私の好きなナタリー・コールの歌にかなり肉薄する出来と聞きました。作曲者のピアノ・ソロもムードを盛り上げています。 ヘンリー・マンシーニの名曲「ムーン・リバー」。 たおやかなハミングと涼しげなストリングスの音色がベストマッチして、とても爽やかな「ムーン・リバー」に仕上がりました。 ピアノとストリングスと一体になった演奏を聞いていると、映画の一場面でも見ているような感じになります。 ボサノバとバラードの間にあってこのアルバム唯一のミディアムテンポのスティービ-・ワンダーの名曲「Overjoyed」が入っています。 これもボサノバにアレンジされていて、他の曲との親和性に問題はありません。 ここでの歌唱は、バックコーラスとの絡みを含め、かなり自由な展開を見せています。 ここで聞かれるバックコーラスは彼女のアレンジによるものです。 トゥーツ・シールマンスのギターをフィーチャーした「Caminhos Cruzados」。 ここでは「Rio De Maio」もポルトガル語で歌っています。 アルバムの中では比較的淡々とした歌唱を聴かせます。 トゥーツのハーモニカは相変わらずいい味だしています。 今年85歳になりますが相変わらず元気そうで何よりです。 ストリングスの透き通った響きからブラジルの浜辺を思い浮かべてしまいました。 最後は、ジョニー・マンデルの映画「「殺しの逢びき」の主題歌「A Time for Love」が情感豊かに歌われます。 ピアノ・トリオにストリングス主体のバックで、時折聞こえるフルート、ホルンがこの曲にピッタリです。 アルト・サックスのムーディーなソロも綿上花を添えます。 ■進歩の跡が見える歌唱 今回は彼女特有の癖や気になっていた発音のきついところが解消され、洗練度は確実にアップしてしています。 ■心地よいアレンジ アルゼンチン生まれの作曲家でアレンジャーのホルヘ・カランドレリのアレンジが実に素晴らしい洗練の極みです。(「So Many Stars」はセルジオ・メンデス) バーブラ・ストライザンド、トニー・ベネットなどのアレンジを手がけていて、クラッシク作品も作曲しています。その方面ではかなり有名な方のようです。 ■これからの季節にふさわしい素晴らしいアルバム ということで、これは素晴らしいアルバムになりました。今の五月のそよ風、文字通り「ブラジリアン・ブリーズ」、のような爽やかさを感じさせます。 これは今年のSJジャズ・ディスク大賞ボーカル部門では確実に上位に入る出来だと思います。できるだけ多くの方に聞いていただきたいですね。 ■インタビューとライブの映像が見られる You Tubeで今回のアルバムについて語っているインタビューを見ることが出来ます。 Jane Monheit "CNN Pipeline" Interview 以前からその兆候はありましたが、すっかりデブに成り下がってしまっていてがっくり。 横幅は前の1.5倍は優にあります。 これでは映像での登場は期待できません。 それとも、この若さで2代目サラ・ボーンを目指しているんでしょうか。 もっともサラは若かった頃はとてもほっそりしていましたが。。。 また、AMAZON.COMでは「Surrender」と「So Many Stars」のヴィデオ・クリップを見ることが出来ます。 ロケーションがどこかのレストラン・バーのようなところです。お客さんの入っていない状態です。 ピアノトリオ+ギター+テナーサックス?のバックで歌っています。テナーは映らないので音だけでの判断です。 バックが異なりますし、サウンド的にも厳しい条件ですので、CDでのリッチな雰囲気とはほど遠く、あまり参考にはならないかもしれません。 曲は「PlayList」のボタンをクリックすると選択できるようになっています。 Jane Monheit:Surrender(Concord 0888072300507) 1.If You Went Away 2.Surrender 3.Rio De Maio 4.Like A Lover 5.So Tinha De Ser Com Voce 6.So Many Stars 7.Moon River 8.Overjoyed 9.Caminhos Cruzados 10.A Time For Love Jane Monheit(vo) Recorded at Capitol Studios,Holywood,CA(except So many Stars) Recorded at Wild West Studio,Malibu,CA(So many Stars) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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