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カテゴリ:クラシック音楽
小川範子のエリック・サティのピアノ独奏曲全集の第4集を聴く。 今回はバレエ音楽特集といっても、短い曲が多くなんと51トラックもある。 昔から親しんでいる「ラ・ルーシュ(本日休演)」が入っているのが嬉しい。 このアルバムでは第1幕と第2幕の音楽の間に『「本日休演」のための幕間「シネマ」のための音楽』という16分ほどの曲が入っている。 「本日休演」の初演で幕間に上映された「シネマ」という映画の音楽だそうだ。 この「シネマ」は、巨匠ルネ・クレールが監督した最初の作品で、『らくだが引いた霊柩車からジャン・ボルランが飛び出したり、テラスでマン・レイとマルセル・デュシャンがチェスをしたり、空からエリック・サティとフランシス・ピカビアが降りてきてパリめがけて大砲を撃つなどといった、全くストーリー性のない作品となっている』wiki この映画はニコニコ動画で観ることが出来る。 埃っぽいヘタウマ?サウンドが古臭いへんてこな映像にマッチしていて、なかなかシュールだ。 他の作曲家だったら、こういう味わいは出なかっただろう。 今回の小川の演奏は打鍵が強く、メリハリがある演奏。 残念ながらそれがサティーにはそぐわなかったようだ。 サティーの音楽が実像より大きな音楽になってしまった。 「本日休演」では音価を変えてわずかにぎくしゃくとした表現をとっているところがある。 実際のバレエの伴奏としては、許されるだろうか。 1890年製エラールが以外に重厚なサウンドで、全体的に腰が重い表現。 演奏は立派だが、サティの軽さとシニカルな笑いがいまいち感じられないのが惜しい。 「メルキュール」はお初にお目にかかったと思っていたが、カルタンバックとナンシー響のNaxsos盤を所有していた。 この盤には「本日休演」と「シネマ」のための音楽も含まれていて、ピアノ版との比較にもってこいだ。 カルタンバック盤はこじんまりとした表現で、オケを鳴らすこともないが、さっぱりしていてサティらしさが味わえる。 「メルキュール」は管弦楽版のほうがカラフルで親しみやすい。 ピアノ版はダイナミックスの幅が大きく少し角張った表現。 演奏によるのか、原曲の持つふんわりとした表情がさっぱり見えてこない。 演奏時間はピアノ版のほうが長いのだが、あっけなく終わるという感じがする。 「シネマ」も管弦楽版のほうが雰囲気が伝わってくる。 サティの明るくコミカルな面を表している『メドゥーサの罠』は、短いながらも軽やかで文句なしに楽しめる。 「蝿氏の死への前奏曲」もなかなか小粋だ。 「びっくり箱」も聞いたことのない曲だったが、サティ節が聞ける。 代表作の「パラード」のピアノ編曲版は入っていないので、次回以降のお楽しみということだろう。 サティの最も長大な「ソクラート」もケージによる連弾用の編曲があるが、今回のシリーズは独奏曲全集と謳っているので、録音されないかもしれない。 ということで、小川フリークの管理人としては辛めの評価。 少し力が入りすぎていた気がする。 「牛刀割鶏」という言葉を思い出してしまった、といったら言い過ぎだろうか。 小川典子:ピアノ独奏曲全集 第4集(BIS BIS2335)24bit 96kHz Flac サティ: 1.バレエ音楽『メルキュール』(1924) 14.風変わりな美女(1920)(ピアノ・ソロ版) 16.操り人形は踊っている(1913) 17.操り人形は踊っている(1913)(初稿版) 18.蝿氏の死への前奏曲(1900) 19. 『メドゥーサの罠』~ピアノのための7つの小品(1913) 26.びっくり箱(1899) 29. バレエ音楽『ルラーシュ(本日休演)』第1幕 40.シネマ(1924) 41.バレエ音楽『ルラーシュ(本日休演)』(1924)第2幕 小川典子(ピアノ/エラール1890年) 録音 2018年8月東京音楽大学、Jスタジオ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021年07月23日 18時17分17秒
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