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カテゴリ:クラシック音楽
サイモン・ラトルがロンドン交響楽団の音楽監督に就任して2シーズン目の2018年のライブ録音。 曲目はポピュラー系の選曲で、管理人的にはゴリホフの「ナザレノ」に注目した。 この組曲はゴリホフの「マルコ受難曲」をもとに、『2008年にラベック姉妹の依頼を受けたベネズエラのゴンザロ・グラウが、2台ピアノとオーケストラの編成に編曲した』とのこと。 タイトルの「ナザレノ」はイエスが子供時代を過ごした地、ナザレに由来する言葉。 因みに、グラウは原曲の一部を共作してるという。 この曲は管理人も何度か聞いたが、今では全く記憶にないので、聞き直した。 ラテン・パーカッションと合唱が入り、これが受難曲?と思うほどにぎやかな(うるさいとも言う)曲だった。 アルゼンチンを中心としたラテンの土俗的な要素がふんだんに織り込まれ、クラシックというジャンルからは(いい意味で)大きく逸脱している。 これが2台のピアノを主役にしたシンフォニック・スタイルのダンス音楽に編曲されている。 バーンスタインの「シンフォニック・ダンス」を思い出すが、あの曲ほど成功はしていないのはメロディアスな曲が少ないからだろう。 サウンドが洗練されているためか原曲の持つ沸き立つようなリズムとダイナミズムには到底かなわない。 また熱気や土俗的な雰囲気も、あまり感じられない。 せっかくラテン・パーカッションを使っているのに、編曲がそうなのかプレイの問題なのか、全くあとなしいもので、これでは宝の持ち腐れだろう。 中ではトロンボーンを中心に金管のパリッとしたサウンドが目立っていた。 弦は曲に全くあっていないので、なくてもいいような気がする。 ラベック姉妹のピアノは、打鍵が弱く、リズムに乘りきれていないため、もどかしさを感じる。 第3曲はキューバのダンス音楽のワラチャとマンボが使われていて、ノリも良く楽しめるが、少し上品すぎる。 4曲目の「Sur」はラテンの悲しみが聞かれ、悪くないが、原曲(Agonia(Aria de Jesus))のソプラノによる濃厚な歌に比べると薄味であることは確か。 最後の「Procesión」も懸命の演奏なことは分かるが、カロリーが低く、原曲を知っている者には物足りない。 なお、管理人の耳が正しければ、編曲版と基となった曲との関係は下記の通り。 (編曲版) (原曲) 1.Berimbau→1.Vision: Bautismo en la Cruz 2.Tambor en blanco y negro→2.Danza del Pescador Pescado 3.Guaracha y Mambo→8. Por que? 4.Sur→19.Agonia(Aria de Jesus) 5.Tormenta y Quitiplá→ 23.IIISoy Yo (Confesion) 6.Procesión→30. Comparsa、31. Danza de la Sabana Porpura-Manto Sagrado ストラヴィンスキーの「エボニー・コンチェルト」は新古典主義の曲だが、もともと曲想が暗い。 それでもアンサンブルが優れていて、ハープがくっきりと表に出てくるところなど、アンサンブルの醍醐味が味わえる。 バーンスタインの「前奏曲、フーガとリフ」はオーケストラ・バージョンのため、オリジナルのジャズ・バンド版の活きのよさが薄まって、あまり面白くない。 「リフ」のソロはLSOの首席クリス・リチャード。 そつなくこなしているが、線が細く、もっと表に出て来てほしい。 Spotifyをチェックしたら、この曲の録音はあまりなかった。 管理人が持っているのはマイヤー兄妹とパッパーノの録音。 バーンスタインは録音はコロンビア・ジャズバンドとの一種類のみだったが、これが一番面白かった。 こういう曲の場合、クラシック畑のミュージシャンの音楽は押しが弱い。 例えば1楽章のトランペットのシェイクは弱弱しく、パンチに欠ける。 きれいではあるが、あまりエネルギー感が感じられない録音のため、だいぶ損をしている。 細かいことを言うときりがないが、珍しい曲の録音として希少価値があることは確かだろう。 Simon Rattle:NAZARENO! Bernstein, Stravinsky, Golijov(LSO Live LSO0836)24bit 96kHz Flac 1.Leonard Bernstein: Prelude, Fugue & Riffs for Solo Clarinet and Jazz Ensemble (1949) 4.Igor Stravinsky: Ebony Concerto (1945) 7.Osvaldo Golijov(arr. Gonzalo Grau):Nazareno (2000, arr. 2009) Katia & Marielle Labèque(p track1-3,7-12) Chris Richards(cl track 1-6) Gonzalo Grau, Raphaël Séguinier(perc.track7-12) London Symphony Orchestra Sir Simon Rattle Recorded live in DSD 256fs on 12&13 December 2018 at the Barbican, London お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022年06月10日 17時51分42秒
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