カテゴリ:古典文学
『延慶本 平家物語』原文版 巻九 三十の05
ヲリシモ御 遊ノホドナリケレバ、ヤガテ御前ヘ参リ給テ、ナニトナク被遊ケルホドニ、 此文ヲ落シ給テケリ。女院ノ御目ニシモ御覧ジ出テ、御懐ニ引入サセ マシ<テ、女房達ヲ召集サセ給テ、「ヤサシキ物ヲコソ求タレ。人々コレ御 ラムゼヨ」トテ取出サセ給タリケレバ、此御文ナリケリ。女房達、「我モ 不知<」トノミ、神仏ニカケテ被申ケレハ、小宰相殿カホケシキカワリテ、 P3167(八四オ) 涙ノウクホドニゾミヘラレケル。「小宰相殿ノ落シ給テケリ」ト負給ニケリ。 女院文ヲヒラキテ御ラムゼラルヽニ、妓爐ノ煙リナツカシク、蘭麝ノ匂 フカクシテ、筆ノタテドモナべテナラズ、優ニ由アリテゾ被書タリケル。 「我恋ハ細谷川ノマロキバシフミカヘサレテヌルヽ袖カナ フミカエス谷ノウキハシウキ代ゾト思知テモヌルヽ袖カナ ツレナキ御心モ中<今ハウレシクテ」ナムドカキタリ。女院仰ノ有ケルハ、 「是ハアハヌヲウラミタル文ニコソ。イカニ思ナルベキ人ヤラム。中宮亮ノ申トハ ホノカニ聞シカドモ、細ニハシラズ。アマリニ人ノ心ヅヨキモ身ノトガトナル<モノ ヲ。コノヨニハマノアタリアヲキ鬼トナリテ、身ヲイタヅラニナシ、ヒトリ行ミ チニ行合テ情ナキ事ヲカタリ、後ノ世マデノサワリトナリテ、世々ニ身ヲハナ P3168(八四ウ) レヌトコソキケ。人ヲモ鬼ニナシテモナニカハセム。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年12月23日 20時14分29秒
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