ヘンリーの国際関係学

「呼吸を観客と合わせる」

演劇が終わった後、母が僕に話した。
母も舞台人である。

舞台では、息の使い方も重要な要素。
観客と同じリズムで演じる－

僕はそこまでの域には達していないが、
それが大事なのは分かる。

演劇はあくまで「客のため」に演じるのであって、
「自分のため」には演じないからだ。



「お客さんに理解してもらう為の『間』が必要だ
笑う為に『準備』をしてもらわないといけない。」

一日目を終えた後に、演劇の大先輩からそう助言された。

今回の演劇は、お笑い要素がたっぷりの劇だったのだが、
笑わせる為には「勢い」だけでは足りないのだ。
面白さを分かってもらう為に、役者は準備をする。



演劇は難しい。

だが、根底にあるのは「観客のために演じること」であるという単純なことだ。

「悲しい気持ちを押し殺した怒りを表現したい」と思っても、
単に怒っているように見えたなら、その役は怒っているだけなのだ。
役者がどう考えていようが関係ない。

観客の主観が全てだ。


だが注意すべきは、「自分が見せたい思い」ばかりを先行させてはいけないことだ。
仮に、自分の演じる「運命に抗う男」に共感して、そのことばかりを考えて演技をしてしまえば、
感情がうまく流れない。

それでは、伝えたいものも伝わらなくなってしまう。

「思い」はあくまで、自分がやるべき演技を通して、間接的に見せなくてはならない。
「結論先にありき」ではならない。

受け止め方は客に依存するのである。


観客の感じるものと、自分の見せたいもの・伝えたいもの。
その誤差を少なくするために、役者は努力する。



好いよね、演劇。





注）あくまで僕の意見なんで、役者の一般的意見かどうか解りません。






＜演劇を超えてシリーズ＞
（１）悪役を演じる
（２）心は演じない
（３）台詞は言うより聞く方が難しい。