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ヘンリーの国際関係学

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August 20, 2005
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その2-1の続きです。まずはそちらを一読下さい。



>居住権について
>「国際人権規約13条」
> 合法的にこの規約の締約国の領域内にいる外国人は、法律に基づいて行われた決定によってのみ当該領域から追放することができる。

>合法的に入国しても法の決定により追放することは人権違反とは認められないようです。
>同様に非合法ならば法の決定どおり追放しても人権違反にはならないと考えられます。


国際人権規約のうち市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)13条を引用していますが、
そこからの「非合法ならば法の決定どおり追放しても人権違反にはならない」という解釈については、疑問があります。

この人権規約が生まれた背景を鑑みれば、「○○すれば、追放してよい」というのが趣旨ではなく、「○○しない限り、追放してはならない」というのが、この条文の言いたいことのはずです。

つまり、この条文は、「法律に基づくことが、追放に必要不可欠な条件」を提示しているのみで、「法律に基づくことが、追放する十分条件」ではないと解釈するほうが、合理的でしょう。

(「合法」「不法」の問題については、他の資料を用いて後ほど論じます)



しかしながら、ここまで言っていながら、現実はそうとは限りません。

これは東京地裁1995年9月27日判決です。
非正規入国後、日本に生活基盤を形成するに至った外国人についての「居住権」を、認めないという判決が出ました。
そこで、裁判所は以下のように述べました。

「日本人が自由にわが国内に居住し生活できるのとは異なり、外国人の場合は当然にはわが国に入国し国内で生活できる権利を有しているわけではなく、わが国の主権に基づく許可を受けその許可の範囲内でのみわが国で居住することができるに過ぎないのであるから、
外国人がわが国内のおいて社会生活を営み、活動することができるためには、その前提として、適法にわが国への入国したものでなければならないことは当然であって、
不法入国者のように、わが国への入国が許されず国内に留まることができない立場にある者が、わが国において、適法に生活全般の活動の中心となる場を持つことができると解することは困難・・・・である」(近藤、63p.)

さらに、
かかる「不法」外国人が、「本来、わが国への入国それ自体が許されない違法なものだったのであるから、当然、その後のわが国での滞在ないし居住も法律上容認されたものではないのであって、
かかる不法入国者は、もともとわが国内に生活全般の活動の中心となる本拠を置くこと自体が容認されていない立場にあることからすると、
このような[外国人]について、単にその違法な入国を基礎として作られた居住の事実状態だけをとらえて、そこに『住所を有する』と評価することは躊躇を感じざるをえない」と述べました。(近藤、67-68pp.)

つまり、乱暴に言うと「不法で入国してたんだから、退去強制しても仕方がない。そんな不法なやつらに居住する権利は与える必要は無い」といった感じでしょうか。


でも、それでいいとはやっぱり思えません。
ここで、再度、人権という立場から考えてみるために、資料を紹介します。

先ほど挙げた国際人権自由権規約。
それに基づいて自由権規約人権委員会が設置されたのですが、
その委員会が、規約の解釈の指針を示すために提出した一般的意見(規約上の外国人の地位)の中で、次のように述べているのです。

「規約は、締結国の領域に入り又はそこで居住する外国人の権利を認めていない。
何人に時刻への入国を認めるからを決定することは、原則としてその国の問題である。

しかしながら、一定の状況においては規約の保護を教授することができる。
例えば、無差別、非人道的な取り扱いの禁止又は家族生活の尊重が生起するときがそうである(5項)」

つまり、この規約人権委員会の考えは、
「外国人の入国については、締約国は原則として自由裁量権を有するが、
しかし差別的な入国政策や非人道的な取り扱い、家族の離散を生起する入国政策は、規則に違反する」
というものです(近藤、247p.)


一方、日本の入管法には「家族の離散を生起する」節があります。
(「家族の結合する権利」は、自由権規約17条・23条だけでなく、子どもの権利条約9条・10条でも保障されている基本的人権である(近藤、241p.))

1999年に改定された入管法で、
「不法在留罪」が新たに罪に加わり、不法入国者または不法上陸者が日本国内に居ること自体が「犯罪行為」になり、
退去強制された者について、その後の日本への上陸拒否期間を従来の「1年」から「5年」に延長しました。

これにより、「日本人や永住者などと結婚したり、子どもが出生した場合であっても、その外国人配偶者や外国人の親は、オーバーステイなどの不正規の在留資格であれば、退去強制処分の対象となりうる」ことになり、
「いったん退去強制処分がなされれば、最低5年間は日本に入国できず、5年後の入国も法務大臣の自由な裁量として著しく困難となる」のです。

それだけでなく、「不法在留罪」の新設によって、
「一旦不正規に入国・上陸した以上は、日本社会においていかなる生活基盤を築こうとも、刑事罰の対象」となり、居住権が常に脅かされます。
もし、刑事裁判において、1年以上の懲役刑を受ければ、たとえ執行猶予付きであっても退去強制処分を受けると無期限の追放になってしまいます。(近藤、240-242pp.)






その2-3「人か国家か」へ続く。


<2-2のまとめ>
・日本の入管法は、外国人の家族を離散させそうだ
・日本の外国人政策は、人権規約に違反してそうな部分がある






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Last updated  August 22, 2005 01:57:14 AM
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