ヒーローテニス

母の日になるといつも思い出すんだよね、
遠い日の思い出を！

母のお腹の中で、目覚めてきた僕に
穏やかな声で、語りかけてくれる、
寂しい時は、擦ってくれる
まだ見る事はできないけれど、きっと優しい母だね、


もう直ぐ生まれる前に、母の大きな悲しみと共に
僕の身体が締め付けられた、意識が遠くなりかけた時
足でお腹を蹴り上げると、身体が解かれ、命を感じた、
これが父の死だと、後で聞かされた

貧しい幼児時代だったけど、心は幸せだった
お婆ちゃんと、叔母さんと、母さんとの４人ぐらし
だけど、仕事で出稼ぎに行くと、一月も逢えない日が続く

ある３歳の朝、母を訪ねて３０００里じゃないけど、
５ｋｍの道のりを歩いて逢いに行った、
海沿いに行けば、大きな街がある事を知っていた
お弁当持って、テクテク歩いた、くたびれても歩き続けた、
日が暮れる頃、やっと街について、一目散に母の働いてる店へ
母を見つけて駆け寄ると、バッシーンとビンタが、
その後、抱きしめられ、心配の大きさを知ったよ

６歳の時に、母は再婚、新しい父には２人の姉と１人の兄
２人の妹がいたよ、

母が僕とお話しただけで、
『いつも、一人だけ可愛がって！』って怒られるのが嫌で
家に帰るのは、食事の時だけ、一人ぼっちの日が何日も続いた

新しい環境にも、時は和らげる力を持ってるんだね、
友達が１人、２人と増えてきて、外に愛を求めていく

中学、高校と自分の力で働き、生きる力を蓄え、
恋もし、運動もし、青春に輝き、挫折もし、
感情の爆発を繰り返し、母に迷惑をかけた、

母と父の間に、女の子が２人生まれ、８人兄弟姉妹になった
子育てに、仕事に、一生懸命だった母は、
３３歳のある日、病気になった、

子宮筋腫や腎臓病、肝臓、心臓、血圧、
五臓六腑すべてが病で侵された
それでも、見舞いに行く度に、元気を分けてくれる
笑顔をくれる、心遣いをしてくれる、

そんな母も６１歳で亡くなった、
『もう、頑張らんでもいいよ、ゆっくりお休み』と言った、
その後、しばらくして父も後を追うように亡くなった、

血の繋がらない、兄、姉２人、妹２人、
半分だけ血の繋がった妹が２人、そして僕、
みんな、仲良く暮らしてるから、心配しないでね、
血の繋がらないテニス仲間も親友も、みんな一緒
これからも、幸せに暮らしていかないと申し訳ないよね