カテゴリ:主に医療者向け
もうひとつ、長い間ずっと気になっていたことがあるので 立て続けの更新です。 【無知の知】という言葉があります。 簡単に言えば 「自分に知らないことがある、ということを知っていること、それが重要である」 といったところでしょうか。 わたしは、自分自身が「リハビリテーション関連職種」であることは大いに自覚し そのことに自信と誇りを持っていますが 「理学療法士」と名乗ることには甚だ自信がなく、内心は常に躊躇しています。 なぜなら、わたしの「遅咲きの臨床デビュー」は「リンパ浮腫」であり リンパ浮腫に関しては、死に物狂いで勉強し それなりに、胸を張って人前に出られる程度のものは身に付けてきたつもりですが 何しろ十余年のブランクを経て、の臨床デビューでしたから(それもリンパ浮腫限定) 一般的な理学療法士としての知識も、技術も、新卒のヒヨッコ理学療法士にも劣ると本気で思っています。 ただ、伊達に理学療法士免許を持っている訳ではないですから 自分自身でどうこうできなくても「理学療法士にならできる!」と、予想や判断が出来ることは多いので Her'sにお見えになる患者さまの、リンパ浮腫以外の気になる問題点が見えた時、或いはご相談を受けた時には 然るべきところへ受診を勧めたり、紹介するなどのアドバイスを差し上げることはしばしばあります。 同様に、リンパ浮腫のケア目的で通室されていても 単純にリンパ浮腫に留まらない、何か別の問題を感じた時、 例えば、原疾患(=癌)の影響かも知れないし、もっと別の思い及ばない「何か」かも知れないし、 とにかく、自身の手に負えないと判断した際には お隣の協力医や、かかりつけの主治医、さらにはリンパ浮腫の専門医に必ず受診していただくように促します。 Her'sでのそれまでのケアの内容とその経過や、問題を感じる点についてのお手紙を添えることもあります。 Her'sは、「リンパ浮腫ケア」に特化(限定)して、必ず、医師からの処方箋(または紹介状)をいただき それに従ってケアを行いつつ、必要に応じてご相談したり指示を仰ぐようにしています。 それは、もちろん「法令遵守(医師の指示のもと)」の責任に基づくということでもありますが それ以上に、自身の取り組みがどれだけ危険を孕んでいるかを自覚しているからに他なりません。 リンパ浮腫は、国内ではその発症の殆どが、癌の術後の後遺症です。 つまり、殆どの患者さまが、主要な背景として癌をお持ちです。 近年、【癌=死】というネガティブなイメージは変わりつつあり 癌は「闘える病気」「付き合っていく病気」になってきています。 しかし、どんな病気でもそうですが、特に癌は、安易に楽観できるものではありません。 場合によっては、やはり、死と隣り合わせであることもまた、事実としてあります。 リンパ浮腫に関わる時、リスク管理として、癌のことは最重要注意事項と言って良いとわたしは思っています。 余談ですが、リンパ浮腫に興味がある・学びたい・関わりたい、と相談を受けることがありますが 当然ながら、手技(リンパドレナージ)さえ身につければ良いというものではありません。 今なお「リンパ浮腫ケア=リンパドレナージ(マッサージ)」というイメージは根強く 受け身で施術のみを期待される患者さまや、施術によって改善を導けると想像している医療者は非常に多いのですが リンパドレナージはあくまでケアの一部分に過ぎず リンパドレナージを含めた「複合的治療」を、個々の患者さまによってどのようにカスタマイズしていくか そのプログラムの構成能力が、セラピストに最も求められるものであり そこには必ず原疾患のリスク管理(癌のタイプや治療経過と予後予測など)が必要になります。 わたしは、理学療法士としての能力は極めて乏しいと思っています。 そして、リンパ浮腫そのものはともかく、癌との関係性を考えたとき 癌治療のスペシャリストとしては、医師の足下にも及ばないことを重々承知しています。 しかし、わたしの一番の強みは 「自分が知らない、ということを、知っている」 この一点に尽きると、これは、一見不条理かも知れませんが、それだけは自信を持っています。 (後編につづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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