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カテゴリ:風の言葉
第253回 贈り物はむずかしい。 それは誰もが知っていることだ。 知人に何か贈ろうと思って、何がいいかと何日も考えるのだが、 これという一品がなかなか決まらない。 とりあえず、店に行って探すことにして、 デパートの中を何時間もうろうろし、 候補を何店かに絞り、まだ迷い、 最後は目を閉じて崖から飛び下りるつもりで一点に決めて買う。 気に入ってくれるかどうか心配しながらおそるおそる相手に手渡す。 その場で喜んでくれてもまだ不安が残る。 何週間かしてまた会った時、 「あの時のあれは本当に嬉しかった。ありがとう」 と言われてはじめて、ああよかったと思う。 衣類や装身具ならば、相手が身につけているのを見て、 よく似合っているなと思い、ようやく安心する。 こういう場合、贈ったのは実はその物ではない。 何にしようかと一所懸命考えた時間、 相手がふだん身につけているものの趣味や人柄についてもう一度よく思い出す時間、 店にいっていろいろとまよっている時間、 そういうこと全部に注ぎ込んだ思いを贈っているのだ。 いってみれば、 贈り物はその気持ちを入れて運ぶ器なのである。 『明るい旅情』池澤夏樹
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キトラボックスを読まれたなら、古代史もお好きでしょうね。
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。) 読み通すには一頑張りが必要かも。 読めば日本史の盲点に気付くでしょう。 ネット小説も面白いです。 (2018.09.16 21:23:44) |