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ブックアドバイザー木村綾子の日々の徒然

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2023年09月27日
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とりわけ古代からある寺社に関しては「民話や伝承」が引っ付いているものでそれをそこの風景と共に構成されているのが『​民話と伝承の絶景36 ​​』。



「はじめに」で著者はこのように綴っています。
三年前から民話や伝承の舞台になった土地を訪ね歩いた。その目線で風景を見つめてみると、湿潤な風土​が培った日本人の精神性が見えてくる。~略~ なにより印象的なのは霊魂の存在である。このことが日本独特の風俗文化をはぐくんだ原点ではないだろうか。生と死の繰り返しを見詰めつつ、肉体は滅びても霊魂はこの世に止まり、生前に未練を残しながらも成仏を願う想いである。(p2)

確かに伝承の背景には「成仏」という思いがあるように感じます。
それが数々の物語を紡ぎ出す原点なのかもしれないなーと考えながら、このはじめにの言葉を読みました。

そして、36の場所になるのですが、そこには寺社があり、今で言う名所だったりと様々ですが、面白いのが、その地域で点在する物語が線で結ばれていたり、同じ場所でありながら、時代が異なると別の物語が生み出されていたりと、漠然と感じていたことではありますが、こうして明文化されるとそれがよりくっきりと表れてきます。

やはりこの36の場所でいちばんに挙げとかなくてはならないのは、「吉野山・金峯山寺」でしょうか(笑)。
ページを開くとがっつり役行者の物語でした、なぜ吉野は桜の名所になったかという。
そして、壬申の乱。
後の天武天皇となる大海人皇子が吉野山で出家していたのに蜂起して大友皇子を倒したのか。
それは雪が降る吉野山に満開の桜が咲く夢を見たから。
この夢を大海人皇子は吉夢と信じたのですね。
これを吉夢と思ったから彼は天武天皇になった訳ですけど、真冬に桜なんてありえないことだから、不吉な予感がする……なんて解釈したら、大きく違う方向に歴史が動いていた訳で。
伝承と言われていますが、これもまた一つの歴史を紡ぐ物語ではあります。

役行者や山岳信仰などを除いて、自分の中でほぉーーと思ったのは、最初の日高二風谷平取町の物語。
ここはアイヌの聖地ということで有名な場所ですが、なんとここには源義経北行伝説が残っている所なのだそうです。
実際に義経神社もあるそうで。
アイヌと義経。
全く線になる要素がないこの二つがしっかりと根を下ろしているのですから驚きです。
しかも、地図を見ると義経神社は現在の平取町役場のすぐ側。
つまり平取町の中心部に鎮座されているということになります。
もし仮にこれが史実だったとしたら、アイヌの人たちはどのような過程を経て義経を受けいれていったのでしょうか。
まさにこれを夢想することがロマンですね。

このような意外性のある伝説も他の寺社や地域にも掲載されています。
それに関連する画像がなかなかに胸を打つものなので、写真集として眺めてもらってもよいのかなーと思いました。


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最終更新日  2023年09月27日 06時38分17秒
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