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ブックアドバイザー木村綾子の日々の徒然

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2023年11月08日
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誰もが納得できる14座について書かれている『山岳霊場御利益旅 』。



ガイドブックという形ではあるのですが、登山道などが書かれているのではなく、それぞれ14座の歴史的・社会的・文化的背景が画像入りで示されています。
14座に絞っていますし、国内では「霊峰」と誰もがイメージする山ですので、全てを知らなくても数座くらいは知っているはずで、そこだけをピックアップして読んでも十分ではないかと思いました。

私の場合、いちばん気になったのは比叡山で、開山した最澄のことが書かれている部分。
密教を切りひらき、日本仏教の大きな転換点となった空海と最澄ですが、この二人お互いに遣唐使として唐に派遣されたりしておりますが、案外私の視点だと全く異なる場所にいるように感じていました。
なぜこんなに2人が対照的なのだろうと思っておりましたら、そのヒントになるようなことが書かれていたという訳です。

比叡の山上に草案を設けた最澄が主尊としてまつったのは、自刻の薬師如来像と伝えられている。奈良仏教において形骸化していた出家僧が受ける戒律を最小限に定め、さらに十二年間、山を下りないで修行を重ねる籠山行を、最澄は僧侶養成の教育システムとして基本に据えた。(p54)


なるほどねーと思いました。
最澄は比叡山を拠点とし、そこで弟子を育てたかった訳ですね。
そして実際に育てている。
それに対して空海は、四国や小豆島からも分かるように自ら移動して密教を説いています。
広くに、誰でも……という点においては空海ですが、自分が確立した宗教をきちんと下に伝えようとしたのが最澄。
これが、今ではツートップとして歴史に名を残しているのですから、どちらのやり方もある種正しかったと今は評価できるというわけです。
人のやることは長い目で見なければ分からないという訳ですね。

まぁ、それにしても奈良仏教が形骸化している……なんて、と思いつつ、もしや役行者の時代には形骸化がスタートしていたのでは……と推測することも出来ました。

14座全てを読んでいると山によるそれぞれの文化的背景がことなりながらも現在もこうして霊峰として崇められる存在となっているという事実というのは、いかに日本人は山に対して特別な思いを抱いていたのだろうということも改めて感じました。


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最終更新日  2023年11月08日 06時34分47秒
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