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著者である鈴木大介氏は私が好きなルポライターのお1人です。
が、8年前脳梗塞を患い、その後遺症として高次機能障害となってます。 その後は自身のこの障害についての体験記を綴られており、それらも読んできました。 そして、今回は体験記というよりは「高次機能障害」の症状にだけ焦点化した著書『この脳で生きる。脳損傷のスズキさん、今日も全滅』を刊行され、それを読了。 著者はこのような著書を出版されていますが、治ったわけではありません。 8年かけて「ゆるやかに回復しつつある」だけで、脳梗塞を発症する前に戻ったわけではありません。 どの程度回復したのかということも含めて本書には記されています。 本書を読み終わっての感想は先天性の「発達障害」と同じような感覚なのではないだろうかということ。 それが全てではありませんし、そことは被らない独特の症状というのも間違いなくあります。 それでも、一つ言えるのは「本人は日々の生活すら苦労しているのに、第三者からは全く分からない」というのは両者は同じような気がします。 被らないというところでは、「高次機能障害」ですので、後天的なものです。 すると、障害を持つ前までの「手続き記憶」があるということです。 いわゆる「長期記憶」というもの。 なので、現在、かつて作っていた料理は作れるけど、新たにレシピを見て作るという作業はできないそうです。 また、ルポタージュを書いて本を上梓していましたので、本1冊分の文章(8~10万字)は書けるけど、コラムのような4000文字程度の文章が書けないそうです。 短い文字数設定だと不要な部分をカットしていったり、どの部分を主軸にもっていくかという選択をしなければならなくなると脳みそが混乱を起こすと綴っていました。 「高次機能障害」を理解してもらえないとか誤解を生む部分というのはまさにここにあり、なぜ本1冊の文章が書けるのに、コラムが書けないのだというのが第3者の目線となってしまうとありました。 確かに、それだけの文章を書けるのにコラム程度が書けなかったら、そして第3者が高次機能障害について全く知識がなかったら、それは「怠惰」にしか映りません。 料理だってかつて作ったものは手際よくやれるのに、新たなレシピを渡されたら料理の完成に至らないとなったら、「俺のレシピの料理は作れんというのか!」と喧嘩の火種にもなりかねないという事です。 このギャップだけでも当事者としてはかなりストレスになるのは明らかです。 細かな症状は是非本書を手にして理解してもらいたいと思いますが、あえてここに著者が強調していることを引用します。 高次機能障害はひとりでは決して生きていけなくなる障害であり、様々な資源に恵まれていない当事者は「必然的に社会的孤立・貧困状態に陥る」。そしてその状態から脱出するのも難しくなる。(p124) 本書1冊を読めば著者が上記のように訴えていることが素直に理解できると思います。 とりわけ症状が出ている時のイラストがとても秀逸で文字以上にこのイラスト1で10を知ることになると思います。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年12月15日 07時00分10秒
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