還暦雲巣管理人独言（還暦を過ぎたウエブマスターの独り言）

　商売をしていた頃は、年が明けて約１週間ぶりに夜の祇園に出かける口実

のように、「えびすさん」、にお参り、それも１月の１０日まで待ちきれず、

大体、８日の宵々えびすあたりにお参り、西宮、今宮、と並んで京都のえび

す神社も３大えびす神社といわれているが、小さくて、狭く、宵えびすや、

十日えびすともなると、大和大路が大混雑、拝殿までたどり着くのに一苦労、

鐘を鳴らして拝もうと思ってもぎっしりと行列、横手の方から、お賽銭を放

り投げて、適当に拝むだけ、元々信心の深い方ではない、端から、「商売繁

盛」、「家運隆昌」、なんてこちらの都合の良いことばかりを聞き届けても

らえるなんて思ってはいない、一応、お参りに来た事にしておこう、その程

度であった、１週間ぶりに遊び仲間に新年の挨拶と、お酒を飲むことのほう

が目的であった。


　今年も今日の十日えびすに昼から出かけてお参り、お参りよりもむしろ福

娘さんの写真を撮る方が目的、大和大路に混雑を避けて、川端通りを四条か

ら下がり、久し振りに宮川町を通り抜けて、えびす神社より下のほうから大

和大路に出てみたが、連休明けの昼間という事もあって、両側の露店が並ん

でいるこの通り、思っていたほど混雑していなかった、それでも３つある鐘

を鳴らそうと思うと鳥居のところから行列、小銭入れから１００円玉を取り

出して、賽銭箱に狙いをつけて例年通り、横手の方からポイ、商売もしてい

ない事だし、「家運隆昌」、だけをお願い、後は福娘さんを狙ってシャッタ

ーを押すだけ、どうも福笹が顔の邪魔をする、しょうがないかァ、彼女達は

それが仕事だもんなァ。


　このえびすさんにお参りにくると、いつもチョッと気になる事が、もう２

０年ほど前のことになるが、大学の同窓会名簿を調べての１通の手紙、オレ

と同じ大学の卒業生の人が、滋賀県で知能に障害を持つ人たち、及びその家

族の人たちが共同生活をしている学園を運営、その運営資金の募金のお願い

の手紙であった、こういうのって、「はいそうですか」、といつも、いつも

お付き合いさせてもらうというわけにも行かず、むしろ殆どが読むだけ読ん

でそれっきりという事が多いのだが、ここのだけは少し違っていた。


　その手紙の文章が素朴であるが、学園の状況の説明、また学園の運営の熱

意、それがストレートに伝わってきた、特に知能には障害があるが、絵画な

どにおいて優れた才能を持つ子供さんもいて、本にしたり、ポストカードに

したりして、絵画の創作活動に力を入れており、カラフルな色使いのシンプ

ルな力強い、どこか心の惹かれる、好きな絵画のポストカードが１枚同封さ

れていた、それとたまたま、仕事にも、気持ちにも、余裕とゆとりができた

時に来たこの１通の手紙、飲食では、あっという間に無くなるような金額の

お金で人に喜ばれ、しかも誰かの役に立つ、ふとそんな事してみよう、そん

な事をして見たいと思うことがある、喜んでお金を送らしてもらった、そし

てお礼の返事がまた感謝と喜びに溢れたものであった、それからというもの

は、毎年１２月になると僅かばかりのお金を送金、学園の人たちのクリスマ

スプレゼントの足しに。


　それが何年か続いていたある年の、えびすさんのお参りに行った時の帰り

道、夜は混雑のために、表の正面が入り口専用、拝殿の横の、えびすさんは

少し耳が遠いために、どんどんどんと板をたたいて大声で、「えびすさん、

お参り来ましたで、今年もたのんマス！」、大声をかけると直ぐに裏出口、

こちらが出口専用の一方通行、この裏出口の両脇に白い募金箱を持った女性

が立って、募金活動をしている、薄暗がりで小さな字は読めなかったのだが、

大きい字で書いてあった学園名、それは滋賀県のその学園の名前であった、

その学園の事を知る切っ掛けになった、最初の募金依頼の１通の手紙以後、

募金のたびに送られてくるお礼状の、心からの喜びに溢れた、年に一度は必

ず募金をしよう、素直にそのような気持ちなれる心のこもったお礼の言葉、

この学園とのお付き合いはこの手紙のやり取りだけであった、それ以外の事

は何も知らないのであるが、オレの抱いていたこの学園のイメージと、えび

す神社でのこの街頭の募金活動、そのギャップの大きさに少なからず驚かさ

れた。


　この学園というのは、重度の知能に障害を持つ人と持たない人とが、全く

一人の同じ人間として、何の分け隔ても、差別も、偏見も無く共に暮らすこ

とが出来る共同生活の場である、障害を持つ人のみならず、障害を持たない

人にとっても、理想郷のような場所である、しかしながらここを運営する経

費捻出のために、寒風吹きすさぶ中、違和感さえ感じさせられるえびすさん

の日に、えびす神社の正面と裏門に立って募金活動をしなくてはならない、

いまや世は、極局部的にマネーゲームによるバブルの様相を呈してきている、

一瞬の機械の操作ミスで数百億円の損失を出したり、そのミスに乗じて数百

億円の利益を上げる、そのことを思う時、参拝の人たちが小銭を募金箱の入

れるたびに、心を込めた表情でお礼を言って、頭を下げている募金活動、少

なからず、憤りさえ感じることを禁じえないのである。



　※今日の日記で、「えびすさん」、の事をどの字を使って良いのか

　　分からなかったので日記には平仮名で書きましたが、「えびす」

　　の標記に、「蛭子」、「戎」、「夷」、「恵比須」、「恵比寿」、

　　「ゑびす」などある中で、この京都えびす神社は、正式には漢字

　　で「恵美須」です。




■「今日の言葉」■


　　　　「 いったん決意した事は迷わず

　　　　　　　　　　　　貫かなければ成果は生み出せない 」