|
|
|
Feb 27, 2010
カテゴリ：カテゴリ未分類
繊維製品のメーカー時代、自家工場を持たない、１００％が外注 工場での委託生産のメーカー、当時テーブルメーカーといわれてい て、明らかに自家工場を持っているメーカーに比べて、納期面、品 質面に劣り、一段下のメーカーに見られていた、所が世は高度成長 期、仕事はいくらでもある、繊維の縫製の仕事に新しく従事する人 がいない、人手不足の時代が長く続く、自家工場の従業員は長年の 勤務、毎年の昇給により高賃金、その結果高齢化、それによりコス トは高くつくが、生産性がダウン、それだけではなく縫製技術は低 下、天気の悪い日などに黒色の製品を縫製している時、ミシンの糸 が切れて黒い糸をミシンの針の穴に糸を通すのに、ミシンの針の穴 は見えない、通そうとしている黒い糸の先も見えない、工場のあち こちでミシンが止まったままの状態、こういう事が四六時中起きて いた、そしていつしか自家工場での生産は融通が利かない、品質面 での優位性がなくなる、やがて、自家工場での生産と外注工場での 委託生産の差がなくなり、テーブルメーカでも納期の遵守、品質の ばらつきを抑えて、品質の安定した、いい品質の製品さえ供すれば、 自家工場の有無が問われなくなった。 その代わりに年がら年中、納期遅れと、工場への仕事の投入に追 いまくられていた、オーダーを受けてから工場探しというような、 ギャンブル製造のような事は毎度の事である、ある年のこと得意先 が日本人のデザイナーでフランスで活躍する有名デザイナーと肌着 とナイトウエアーのライセンス契約、大きな売り上げ規模である、 そのナイトウエアーの製造メーカーに指名、ビッグチャンスである、 １番懇意にしている高知県の安芸にある外注工場をその製品の専用 工場にするために念入りに打ち合わせ、展示会サンプルを作成して、 展示会、受注は好調、プレスで翌年の２月１日に各デパートでの売 り場展開を発表、やがてオーダーが来て生産開始、ところが１ケ月 が経っても、２ケ月が経っても製品が上がって来ない、すると工場 のオヤジさんが、この類の製品の縫製はうちの工場では無理だ、細 かい部分で拘りの製品のために、極端に生産性が悪い製品、この製 品を手がけるとかえってそちらに迷惑をかける、だったらサンプル の製造の時点でそういってくれれば何とかなる話、とはいうものの それは後の祭り、納期が半分経過した時点で問題が発生、慌てて代 替工場を探すが見つからない、何度も工場探しのために、四国へ出 向く、それでも断られる、帰りの飛行機の中で、もう万策は尽きた、 得意先には迷惑がかけられない、白旗を掲げて別のメーカーを探し てもらうように頼みにいくしか方法がない、或いは、この乗ってい る飛行機が墜落するか、そんなところまで追い込まれていた。 来週に白旗を掲げて謝りに得意先へ行こうと思っているや先に、 知らない松山の工場から電話、工場探しのときに中小企業振興公社 へ工場募集を依頼、当初はわが社は１０番目くらいに記載、工場が 見つかったところは次々と工場募集を取り下げ、丁度わが社が一番 上に記載されるようになって、その松山の工場のオヤジさんはそれ を見て我が社へ電話をということだった、「長い間の得意先が生産 の打ち切りで、今週一杯で仕事がなくなる、来週から出すぐに縫製 できる仕事があるか」、こちらの窮状を見かねて電話がかかったの ではないかと思えるような、信心深くはないが、まるで神様が引き 合わせてくれたのかと、少々声を上ずらせながら、「何人くらいの 工場ですか」、「ミシンを踏むのは１０人くらいで、下場仕事に２ 人」、「得意な製品はどんな製品？」、「特殊ミシンは殆どないが、 本縫い仕事の多い製品が得意」、「今日の佐川急便で、サンプルと 仕様書、裁断地を送るから、明日の午後にそちらへ行きます、それ までに１０枚ほど縫い上げておいてください、後ほど飛行機の便と 到着時間を連絡します」、すぐに明日の松山行きの飛行機のチケッ トを手配、サンプルと仕様書と裁断地を荷造り、飛行機の便名と到 着時間と発送の荷物いの問い合わせナンバーを電話して、明日の午 後に松山へ出かけることに。 空港まで出迎えに来るという手筈になって、ただ旨い具合に空港 で出会えるか、当時は携帯電話がなかった時代、さて松山空港に到 着して出口に向かう、出迎えに大勢の人、その後ろのほうのオレよ りも年配の、背の低い、がっしりとした体格のオヤジが、白い巻き 紙のようなものを両手いっぱいに広げると、「歓迎、○○様」、と 太い大きな字で書いてある、「オーイ」、と声をかけてオーバーに その巻紙を指差す、オレに気が着いたらしく、紙をより高く持ち上 げて合図、それはオレだというようなジェスチュアー、お互いに、 「やあ、こんにちは」、と挨拶をして、がっしりと握手、背は低い が手はオレよりもがっしりと大きく、力のこもった握手、小型のワ ンボックスカーで、空港から工場へ向かう、車の中でお互いの立場 の状況説明、このように初対面の人と話がかみ合い、気まずい沈黙 もない、こういう出会いはきっとうまくいく、工場に着くまでにこ の工場のオヤジさんに世話になろとオレの腹は決まり、この工場の オヤジさんも我が社と付き合おうという気持ちになっていた、気が かりは昨日送った裁断地のサンプルの縫製の具合だけである、工場 に着くと、充分に設備の整った新しい工場ではなかったが、工場の 奥さんがサンプルを１０枚持ってきて、机の上にその縫製サンプル を広げる、当時のオレはその工場の品質レベルはそこで縫い上げた サンプルを一目チラッと見ただけで、そこの工場の大方の縫製技術 は見抜く事が出来た、しかし、この工場とは長い付き合いになる、 じっくりと見てから、言いたい事があれば先に言っておこう、ひっ くり返したりしながら、裏から製品を見たり、細かい部分を丹念に チェック、そして、「縫製はこれで結構です、同じデザインで、希 望は月産２、０００枚、縫製工賃は裁断地渡し、縫製、ボタン穴か がり、ボタンツケまでで、○○○円、裁断地は明日に、２、０００ 枚発送可能」、「まあ、こんな頑固オヤジやけど、仕事は誠実にや らせてもらいます、よろしくお願いします」、ものの半月もすれば 製品がコンスタントに上がりだし、得意先に前もって２月の納品は 少し数が少ないですが３月には追いつきますと連絡すると、この製 品は得意先の自家工場での生産が３分の２で、我が社が３分の１と いう計画だったが、自家工場の生産が伸びずに、逆に半分の生産を 受けてくれないかと頼まれる事に、このピンチを切り抜けたお陰で 約１０年間は、売り上げ利益とも会社のドル箱製品となった、とい う事でここの工場は会社を整理する時までの付き合いで、会社を整 理するときにオヤジさん夫婦も高齢につき廃業する事となった、こ の工場とピンチの時に出会った、オレはオヤジから社長を引き継い だ日からぷっつりと賭け事をしなくなった、人には多少の多い少な いはあるがその人の生涯のツキの回数は決められていて、賭け事で ツキを使いたくなく、ツキを仕事にだけ残しておきたかった。 ■「今日の言葉」■ 「 愛情を持って叱る事は 我が子と最良の交流となる 」 (自然社・平成２２年・新生活標語より） お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
|
