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カテゴリ:きわめて私的な事
その昔オフイス街などにクイックマッサージなる店が出来ていた 頃、オレが40歳を過ぎた頃、肩の凝り症で、休みの日などは烏丸 あたりに出て行くと、特殊な椅子に座って15分ほどのクイックマ ッサージ、肩や腰などの凝りには、寝転んでの本格的なマッサージ が必要なんだが、15分程度のマッサージでも、終わってから店の 外に出ると、目の周りにマッサージの効果か、店に入る前と別世界 のように、周りの景色がくっきりと、はっきりと見える、散髪が終 わった後などにほんの僅かにマッサージ、散髪屋のオヤジが、「背 中に鉄板を入れているみたいですね」、と言っていた、現役をセミ リタイア以後は、多額の借金を抱えるわけではなく、納期遅れや、 不良品発生のプレッシャーも少なく、社員が17、8名、その家族 も含めると約50人ほどの生活も背中にしょっていた、そいうもの がなくなると、肩が凝る事が無くなった、ただ散髪屋のオヤジは今 でも、「すごく、肩が凝っていますね」、相変わらず同じ事をいう。 オヤジも物凄く肩凝り症で、月に一度は家へあんまを呼ぶ、東へ 5軒目の家、実に子沢山の家で家族は約10人ほどで、ご主人の叔 父に当たる、この盲目のあんままでが居候、あんまでの稼ぎの殆ど をそこの家の家計に入れていたのだろう、いつも感心していた事な のだが、揉みだしてから、揉み終わりまでが時計と同じほどにジャ スト、1時間、この正確さには驚いていた、あんま中の会話、オヤ ジは近所の事には疎く、あんまも近所の事には疎い、世間話といっ てもお互いの接点が無く、話が続かない、ところがお袋もたまに、 オヤジの後で揉んでもらう事もあった、お袋もあんまも歌舞伎好き、 だから話し出すと1時間の間、歌舞伎の話をしっぱなし、若い頃に は目が見えていて、その頃に好きな歌舞伎を見ていて、目が見えな くなってからは、ラジオで聞くだけ、耳で聞いて、何十年前の思い 出を思い出しながらお袋と話、あんまに行く先で歌舞伎の話が出来 る人は少なく、お袋を揉みながら歌舞伎の話をするのを楽しみにし ていた様子。 お袋も、オヤジの事、3人の子供の事をまず、自分の趣味や、楽 しみや、遊びは一番後回し、これが普通の時代でもあったが、年に 一度の年末の南座での顔見世、南座の正面に招きが上ると京女の血 が騒ぐ、と言うヤツで、最もお袋は純粋の京女ではなかったが、「 日ごろはチマチマと細かい事にケチって、年に一度の顔見世だけに は、パァ~と」、まさにその通で、夏が終わると、従兄弟の着物取 次ぎ屋が反物を持ってきて、「これは派手すぎひんやろうか、これ は地味すぎひんやろうか、これやと合う帯が無いないなァ~」、と 思案しながら顔見世に着ていく着物の準備、顔見世の切符の手配は オヤジの仕事、取引銀行の支店長に切符の手配を頼み、見に行く前 日には勿論のこと、美容院へ行って、当日は1人で、背筋をピンと 伸ばして、一張羅を着て、ウキウキと出かけて行く、南座の傍で幕 間に食べる弁当を買って、見終わってからは、松葉でにしん蕎麦を 食べて、夕食用に握り寿司を5人前買って、まるでつき物が落ちた ように、セイセイした表情で家に帰ってくる、着物を着替えて普段 着で台所に立つと、「サァ~、1年間始末して、また来年も」、独 り言。 ■「今日の言葉」■ 「 楽なことは明日に延ばしても 苦しい嫌なことは今始めよう 」 (自然社・平成22年・新生活標語より) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 3, 2010 02:10:24 PM
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