2009/09/03(木)08:48
『七つの人形の恋物語』ポール・ギャリコ著読みました。
ポール・ギャリコの作品を読んだのは初めてですが、収録されている二作品、
「スノーグース」「七つの人形の恋物語」、どちらも「素晴らしいっ!!」の一語に尽きまする。
登場人物が持っている純粋さ、無垢さ、その美しさが読後一層沁み入ってくるようです。
「スノーグース」はたとえ現世で壊されてしまっても、その美しいものの残滓や想いが
読後により鮮やかに蘇ってくるという一篇。
「七つの人形の恋物語」は、どれだけ傷つけられ、悪意に曝されても汚されることの
ない主人公の純粋さ、心の強さに胸打たれる一篇。
どちらの作品も好きですが、とくに「七つの…」の方は物語の構成がすごいと思う。
七つの人形が持っている人格、個性は幼少期を悲惨な状況で過ごした扱い手の
生み出した多重人格なんだろうか…それとも本当に魂を持っているのか??なんて
想像を膨らませつつ読み進んでいくと…このラスト!
身投げをしようと考えていた孤独な少女ムーシュが人形一座に拾われて…という物語。
七つの人形と、ムーシュとの間に交わされる心のこもった会話と、
座長であるキャプテン・コックから受ける残酷な仕打ちとの対比のさせ方が鮮やかー。
あまりに痛々しく、読むのが苦しい場面もありますがこのラストにはまるごと救われる
心地がします。
孤独であるが故に、ただ優しくされることに飢えていたり、
愛するが故に憎しみが増してしまったり、
本心を明かすことに怯えるあまり正反対の行動をとってしまうような
そんな不器用さに思わずほろりとさせられてしまいました。
美しいものに触れたいときに、お薦めの作品ではないかと思います。
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