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2023年07月28日
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カテゴリ:発達障害

平成25年「第17回教育長杯島根県高等学校スピーチコンテスト」最優秀賞受賞

「前向きに生きる」
石見智翠館高等学校2年 河上 光

障害者と言うと、多くの人は、知的障害者や身体障害者を思い浮かべると思います。
でも、そうした障害以外にもうひとつ、発達障害というのがあるのを、皆さんは知っていますか?
こうしてお話している僕自身、実は、ADHDと高機能自閉症という二つの障害のある当事者なのです。

発達障害というのは、見た目ではわかりにくいため、誤解をされたり、いじめの対象になったりすることが多いです。
ここで、「発達障害って何?」と思っている方のために、少し解説をしておきたいと思います。
発達障害とは、その文字どおり、脳の発達の仕方が偏っていて、生活に支障があるという障害です。
僕たちの日常生活での困難さを、わかりやすく説明すると、例えば、平仮名の、「ま」「み」「む」という字を書いてみてください。特に問題はなく書けますよね。
ところがそれを、
「左右逆に書いてみてください」
そう言われると、戸惑いますよね。
僕たちの困難さは、わかりやすく言うと、そんな感じです。
日々の生活の中で、このような戸惑いの場面が、けっこうあるのです。

さて、僕の障害のひとつ、ADHDは、注意力散漫、多動、衝動性があり、しかも自分でコントロールすることが難しいという障害です。だから落ち着きがなかったり、思いつきで行動したりします。
実際に僕自身も、こんな自分にちょっと困っています。
でも、そんなADHDも、長所はあります。
人より発想力が豊かだったり、好きなことにはとても集中できたり、気持ちの切り返しが早かったりします。
そして、僕のもうひとつの障害、高機能自閉症は、一般的な自閉症の中で、知的障害がないものを言います。
物事に執着したり、特定の物や音に不快を感じたりします。
こうした発達障害は、病気と勘違いされてしまうことがありますが、決して病気ではありません。

さて、解説はこれくらいにして、中学校の頃の話をしようと思います。
僕が通っていた中学校では、総合学習の時間に、身体障害を含めた障害についての学習をしていました。
僕は、その学習は自分を知ることだけではなく、クラスの人たちにも、発達障害を知ってもらうチャンスにもなると思いました。
そんなある日のことでした。
発達障害について調べた班の友人が、こう発表しました。
「発達障害にある原因の多くは、母親にあります」
僕はこの言葉を聞いて、ちょっとカチンときました。
なぜなら、発達障害の原因は、母親ではなく、先天性のものだからです。
このことをわかっていた僕は、もちろん手をあげて言いました。
その時は勇気が必要でしたが、先生のフォローもあったおかげで、なんとか間違った情報を正すことができました。
こうして僕は、自分の障害を理解し、向き合っていく中で、僕の障害は、個性なんだと考えるようになりました。
そして、発達障害を知らない人たちに、正しく知ってもらおうと思うようになりました。
それから僕は、高校へ入学して、文化祭で行われた弁論大会で、自分自身の障害についてカミングアウトし、発達障害への理解を呼びかけました。
そして、もし僕と同じように、発達障害がある人がいたら、悩んでいるのは自分ひとりだけではないということ、仲間として励まし合おうということを訴えました。
このことで、僕の周辺は変わりました。
ひとつめは、僕の日頃の行動に対して、周囲にいる人たちから理解が得られるようになったこと。
ふたつめは、僕の弁論を聞いた同じ障害のある先輩から、話がしたいという申し出があったことです。
その人は、障害をネガティブに捉えて、学校を休みがちになっていたのです。
僕と話をすることで、自分が変われるかもしれないから・・・と言っていました。

このようなことは、障害のある人だけに言えることではありません。
皆さんの中にも、相手のことをよく理解しないで判断したり、自分の抱えている問題を、悪く捉えて落ち込んだりしている人はいないでしょうか。
人は、物の見方を少し変えるだけで、変わることができます。
そして、理解をしてもらう努力をすることで、周囲の目は変わってきます。
障害のある人も、そうでない人も、そこは同じです。
お互いに対する理解と、自分自身の努力により、自分の置かれている状況を変えることができるのです。
こう考えてみると、僕は発達障害と出会って、良かったと思います。
僕は僕の障害を個性にして、今後も、前向きに生きていきたいと思います。









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最終更新日  2023年07月28日 17時39分52秒
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