福島第一原発
ここ数日、金曜日の大地震から、その後の大津波、福島原発の事故と、なにか壮大な映画でも見ている錯覚を起こすような出来事が相次いでいる。繰り返しテレビで流される津波の映像にも目を疑ったが、福島第一原発3号機の水素爆発の際に白煙が天に向かって昇っていく様は、小学生の頃によく見た、ヒロシマの原爆投下のシーンが頭をよぎり、ぞっとした。 遠く離れた地でテレビを見ていてもそうなのだから、現地付近にお住まいの方にとっては、それは気が気ではなかったことだろう。もちろん、今現在もその危機が去ったわけではないのだが、東京電力などの会見を見ても、どこか危機管理の認識が欠落しているように思えてならない。しかし、実際にそこまでヒステリックになる必要もないのかもしれない。 BSのテレビを観た。原子力の専門家が穏やかに、時に笑みを浮かべながら喋っている。放射能(放射性物質)というのは花粉症と同じようなもので、現時点では鼻や口から吸い込まなければ影響のないレベルだと言う。しかも、離れれば離れるほど大気中で薄まるので、30km程度離れていれば問題はないと言う。その専門家の見解では、1kmだか2km離れるごとに、放射能の量が半分になっていくそうだ。つまり、いま公表されているような高い値であっても、10kmも離れれば、その数値は100分の1になっていると言う。 20km、30kmと離れていれば、もっともっと数値は小さくなる。なるほど。そう思えば、広島の中心地に原爆が落とされた時も、その周辺にいた何十万人の人に被害はあったものの、30kmほど離れたウチの実家近くでは、両親にも何の被害もなく、いま現在、私も健康に暮らせている。 つまり、避難さえしていれば大丈夫なのだ。原発のまわりでは草木も生えないのではないかと、心配されておられる方もいると聞くが、広島では青々と草木も生い茂り、道端には綺麗な花が たくさん顔を見せてくれている。チェルノブイリと重ね合わせる人もいるが、今回の事故とチェルノブイリの事故とでは、根本的に異なる点が2つある。ひとつはチェルノブイリの原発には、原子炉を守る格納容器と呼ばれる強力な耐圧容器が無かった。 そのため直接、大量の放射能を大気に放出することになった。日本の原発には、原子炉圧力容器の外側に、鉄製の頑丈な格納容器が存在する。もうひとつは、チェルノブイリの事故は、原子炉が稼働中に起きた事故だということ。今回の福島原発は、地震直後に原子炉は停止をしており、水位の問題はあるにせよ、これまで4日間、少しずつとはいえ、燃料棒は確実に冷却されている。 放射能レベルは低くなっている。もっと言うと、そんな過酷な状況でメルトダウン(燃料溶解)したチェルノブイリでも、圧力容器(燃料が下に溜まる部分)は溶けて壊れることはなかったという。そんな高温(おそらく2800℃以上と思われる)にも耐えることのできたチェルノブイリの圧力容器である。 それよりも確実に温度の低い 今回の福島原発の燃料が溶けたとしても、圧力容器が壊れることはない。 さらにその外側には頑丈な格納容器もあるのだ。内部の圧力を適度に下げておくことが出来ていれば、深刻な事態には陥らない。付近の人たちは大変 不安であるだろうが、冷静な対応が国民にも求められている。