氷室ック自身によるBOOWY作品の解説(Part6)…
おはよん!ございます。きょうも都区部はスカッと晴天です。私はこれからルーティンのウォーキングの後、ラグビートップリーグのプレーオフ決勝を観に、秩父宮まで行ってこようかと思っています。さて、きょうは氷室ック自身によるBOOWY作品の解説第6弾で、オリジナルの5thアルバムの「BEAT EMOTION」です。BEAT EMOTIONは1986年11月8日に東芝EMIからリリースされました。前作から約8か月後という、超絶スピードリリースですね。いかにBOOWYの人気が凄かったかがよくわかります。このアルバムは、前作『JUST A HERO』でサウンド面で納得のいくアルバムを作ることができたメンバーが、今度は商業面での成功、「チャート1位を狙う」という目的で作ったものです。その結果、見事にオリコン初登場1位を獲得しました。名実ともに、BOOWYが日本のナンバーワンロックバンドに上り詰めた瞬間ですね。このアルバムのレコーディングには僅か18日間しか費やしておらず、ドラム・ベースのリズムセクションは最初の5日間程で録り終えたそうです。さらに、アルバムジャケットの撮影もレコーディング初日に行われたみたいです。いかにこの頃の彼らが多忙であったかが窺い知れます。このBEAT EMOTIONで商業面での成功をも手にし、「トップに立ったら解散する」というバンド結成当初の目的を果たしたBOOWYは、翌1987年にはバンド解散に向けてその活動をさらに加速させていくことになります。ちなみに、私はこのBEAT EMOTIONも単品アルバムではなく、『BOOWY COMPLETE』で持っています。この頃の氷室ック、カッコ良すぎます。それでは、以下は月刊カドカワVOL.9 NO.4からの出典です。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あっ、そうか、このアルバムが初めて初登場1位だったんだっけ。そうそう、『BEAT EMOTION』が出て、ツアーをもって、その後オレはロンドンに何か月か行っちゃったんだ。だからすごく忙しくなってた時期で、インタヴューやらヴィデオ・クリップ作りやら、いろんな仕事をやってた。とにかく『JUST A HERO』以降ってテンポがすっげぇ早く感じたな。オレからしたらやっぱり音楽の正しい姿ってのは『MORAL』とか『INSTANT LOVE』みたいに、何も決まってないっていうさ。発売日も決まってなくて、好きな時に曲作って、レコードはできたんだけどいつ出るのかなぁ、って(笑)。その快感が忘れられないよね。だから「先生、ひとつ早くお願いします」なんてのは、どうも駄目なんだよ(笑)。そういうもんじゃなかったし。ベルトコンベアに近い。何か量産的に作業をしなきゃ的な意識というか、別に周りが悪いとかそういうんじゃなくてね。自分の中でどんどん勝手に義務感めいたモノが膨らんでいった。もともと誰もオレのこと縛っちゃいないんだけどさ、縛られるのはイヤだっていう(笑)、被害者意識が強いんだよね。誰もオレのことは縛れねぇぜ!みたいな(笑)。オレは楽観的なペシミストですよって言ったのもこの頃だっけ? それは『PSYCHOPATH』(次作のアルバムです)の頃か。でもその兆候は出てるよ、徐々に。一般の人がBOOWYを捉えた時の聴き方って自分じゃ今ひとつピンとこないんだけど、やっぱり一般的にBOOWYって言ったらこのアルバムと『PSYCHOPATH』なんだろうなぁ。確かに『BEAT EMOTION』のほうが『JUST A HERO』よりキャッチーに聞こえるかもね。もちろん氷室京介っていう個人があって、その個人を形作るいろんな多面体の切り口ってあると思うんだけどさ、『BEAT EMOTION』もその中の1つでしかないし、『JUST A HERO』みたいな表現の仕方も1つでしかない。でもこれはベストの表現の仕方ではないなっていうところがあるわけでさ。自分じゃ2番目に好きなところをいちばん好きになられちゃうと何かヤダなって気はするよ。まぁ、諦めとは違う意味で割り切ってる部分もあるにはあるんだけど。みんな見ててもそうだと思うしさ。ユーミンとかだって、じゃああれが本当にやりたい音楽なのかなぁって考えたら、きっと違うかもしれないし。わからないけどね、話したことないから。でもそういう部分ていうのは誰でもあるんじゃないかな、クリエイティブな作業をする人にはさ。無理をしない程度の一種のサービスっていうか。宿命だよね。絵描きだろうが、文を書く人だろうが、曲を作る人だろうが、みんなそういう部分を宿命として持ってる。『BEAT EMOTION』は、いわゆる世間一般では“タテノリ・ロックの原形”って捉えられてるみたいだけど、タテノリの意味についてオレはよく理解していない。音楽的に言えば8分音符をベースで作っていく意味か、あ、そうか。別に客が縦に跳ねてるってわけじゃないんだね(笑)。いや、この間テレビ見てたら「タテノリバンドの何とかかんとかで・・・」とか言ってその後に「客が縦にノッています」なんて言ってたから。じゃあ、オレはタテノリの解釈を間違えてたんだと。客が縦に跳ねてりゃタテノリなのかと思って(笑)。そっちのほうが独特の解釈だよね。BOOWYの時は、客がピョンピョン跳ねるというよりかは、やっぱ拳を上げるパターンが多かったんじゃない? 拳といえばハウンド・ドッグのライヴが有名だけど、ドッグの方がまだリズムがゆったりしてる分だけ拳を上げやすいというかキレイに揃うんじゃないかな。松井のベースに合わせると“出遅れたら終わり”みたいなさ。合わずにずっと行っちゃう。あ、そうか。両手を交互に上げるのも1つの手だったよ(笑)。それをウリにして、BOOWYのライヴに行くとオーディエンスが両手を交互に上げるリアクションが見れるっていうの(笑)。何かそういうヘンなのがあってもよかったよね。オレ、何バカな話してんだろ(笑)。やっぱりバンドが大きくなると周囲とかいろんなことがまとまっちゃうよね。