2008/01/22(火)02:22
サキの一歩
お尻を丸出しにして挑んだブロック注射でしたが、効いていたのも翌日まで。
昨日から、再び痛みに襲われています
損傷してしまった椎間板ですから、そう簡単に治るわけはないですね。
週に一度の注射を続けながら、この腰痛とこれから長く付き合っていく道を探すつもりです。
そんなわけで、今日はどこまで書けるかわかりませんが、娘サキ(中1)の近況報告を書いてみたいと思います。
小5で昼夜逆転の睡眠障害、不登校になって以来、長い時間をかけながら少しずつ睡眠を調整してきた娘ですが、明け方3時頃寝て、お昼頃目を覚ます、というリズムが定着してきていました。
年末から私が腰を痛めて寝たきりになったこと、同じ支援学級に通う中3の先輩たちの受験に向けての動きを見ながら、自分自身の将来について不安を抱き始めたことで、サキは精神的にとても不安定になってしまい、自分でも理由が分からないまま泣き続けることが多くなりました。
これまでも料理や買い物など、部分的に家事を手伝ってくれることはありましたが、一日中の母親の仕事を一人でやることがなかった娘は、
「ママ、こんなに大変なことを今までずっとやってきてくれていたんだね。
サキがもっとお手伝いしていれば、ママは病気にならずにすんだかもしれないのに…
サキのせいだね」
と、泣くわけです。
何でも人のせいにする弟とは正反対です。
(同じ親から生まれた姉弟なのにねぇ~。
2人を足して2で割ればちょうどいいのかな?)
「サキは、今のままの生活を続けていたら、きっと高校へも行けないよね。
勉強だって、今のままじゃ、きっとどこにも合格できないし…
どうしてこんなに頭が悪いんだろう」
もらった通知表は5段階評価ですが、「1」や「2」が目立ちます。
出席日数が少ないこと、課題の提出もできていないものが多いこと、そしてテストの点数が取れないこと。
英語は大好きなはずなのに…
聞けばちゃんと答えられるのに…
何度書いても、練習しても、単語が頭に入らない。
小学生の頃から苦しんできた漢字と同じで、やればやるほど劣等感が募るようです。
大好きなアニメやマンガに出てくることなら、何でもあっという間に暗記しちゃうのにね。
これが、LD児の持つ現実。
「サキ、あんまり深刻に悩んじゃダメだよ。
ママだって人間だから落ち込むことはあるんだけどさ、
サキよりちょっとだけ長く生きてきた経験から言わせてもらうとね、
悩んで問題が解決したためしがないもん。
悩むんだったら、解決の方向へ向かって、実際に一歩でも歩き出す方が気持ちが楽になると思うよ」
“まずは睡眠のリズムを整えて、ちゃんと学校へ通えるようにしよう!”
ということで、思い切って支援学級の先生から紹介していただいたメンタルクリニックへ2人で行ってきました。
まだ13歳の娘。
睡眠薬に抵抗を感じていたのは、娘だけではなく、私も同じでした。
(副作用があるんじゃないかな?
癖になってしまうんじゃないかな?
将来、妊娠したときなどに胎児への影響はないのかな?)
クリニックの先生は、見るからに好々爺という感じの、とても物腰の柔らかい方でした。
これまでの経過をざっと説明したところ、
「それは大変でしたね。
それで、今、学校へは?」
「学校までは電車とバスで通うのですが、もう長いこと娘が目覚めてから、私が車で送って行っています」
学校の先生には、
「なるべく自分で登校できるようになるといいですね」
と言われていたので、同じような答えが返ってくるかと思いきや、その先生はサキに向かって、
「ああ、そうですか。
それなら安心ですね」
と、にっこり。
この一言で、サキはすっかり先生が大好きになったようでした。
(なるほど。そうきたかー!
さすがは精神科の先生だわ~!)
と、感心する一方で、
(ってことは、まだ当分は私が送っていかなくちゃならないなぁ…)
と、痛む腰をさすりながら、覚悟を決める私。
「では、あまり効かないかもしれませんが、まったく副作用の心配のない、一番軽い睡眠薬を少し使ってみましょうか?」
一度に2錠ずつ飲んでも、サキにはあまり効かないかもしれない、という2種類の薬を処方されました。
「最初は1錠ずつ飲んでみて、眠れないようでしたら2錠ずつにしていただいて結構です」
その夜、早速1錠ずつ飲んでみたのですが、眠くなるはずの「15分」が、サキには「3時間」かかってしまい、翌日は2錠ずつにしてみると、今度は12時間眠っても目が覚めない。
試行錯誤を繰り返しながら、19時ころ1錠ずつ飲み、22時ころ眠り、翌朝7時に目が覚める、というリズムが、ようやく見えてきたところです。
夕食を終えて20時を過ぎると、全身がだるくなったり、頭がぼんやりしてきたりするので(事故でもあったらいけないので)、娘と数年ぶりに一緒にお風呂に入るようになりました。
女どうしの秘密のおしゃべりも、お風呂でしたりして…(笑)
私にとっても、思いがけず楽しい時間が増えました♪
睡眠の問題がひとつ解決すると、とたんに意欲的になってきた娘。
腰が痛くて、足を持ち上げながら車に乗り込む私を気遣ってか、一人で電車とバスで通学をするようになりました。
「ママ、まずは通知表から、1と2をなくすことを目標にしたから!」
と、本屋さんで一番大きな文字で分かりやすく説明がしてある英語と数学のテキスト(小3の算数と漢字の問題集も)を買って来て、自分から勉強も始めました。
「わからないこともいっぱいあるけど、少しでもわかることが増えると、やっぱり嬉しいよね」
とにかくサキは、高校へ行きたいそうです。
セーラー服を着たいし、アルバイトをしたいから、とか。
「ずっと美容師の資格が欲しいと思っていたけど、
サキはキャラクターデザインやファッションデザインの仕事にも興味があるんだ。
将来、自分でちゃんと仕事をして生活ができるようになりたいから、まずは中学の勉強をしっかりやってみようと思う」
これまで家ではマンガやアニメを見たり、絵を描いたり、のんびり過ごして勉強をすることなどなかったのですが、私もサキが学校の勉強が苦手になる過程をずっと見てきていただけに、「やればできるんだから」とか「努力が足りない」とは言えず、そんな娘を黙って見守ってきました。
(まぁ、昼間の高校へ行けなくても、通信制でも夜間でも、本当に行きたければいろんな方法があるだろう。
人生は長いんだから、すぐに答えが出ないことだっていっぱいあるよ。
サキの持っている豊かな感性を大切にしようね♪)
私の方はそんな気持ちでいたのですが、高校受験を目前にした先輩たちを目の当たりにして、いよいよ自分で「何とかしなくちゃ!」と、思ったのでしょう。
タイミング良く学校では、最近娘が読み始めた「ドラゴンボール」のマンガを全巻持っている先生が、
「サキに一冊ずつ貸してくれることになったんだよ!
一冊ずつにすれば、学校へちゃんと通うだろうから、って。
それが終わったら、今度は“北斗の拳”だって!楽しみ」
(そうなんです、娘は少年漫画の方が好きみたいです)
“先生からマンガを借りたくて学校へ行く”なんて笑っちゃいますが、親としては、そうやって少しでもサキの気持ちに寄り添ってくださる先生がいらっしゃることが、とてもありがたいと思えるのです。
小5~小6でお世話になっていた適応指導教室。
市内の不登校児の受け皿としての教室ですが、サキが通っていた頃は、小学生はサキ一人、中3まで入れても全部で6~7名という少人数でした。
ところがその教室が、今では20名以上の子どもたちで溢れているそうです。
学校へ通えない子どもたちが、どんどん増えています。
そんな話を聞いたサキは、
「学校がダメだったら、みんなあの教室や、うちの学校の支援学級に来ればいいのにね」
と、さらりと言います。
そんな娘のさり気ない一言に、その教室や支援学級が、娘にとっていかに居心地の良い場所であるかを感じます。
頑張っては挫折したり、ダウンする、を繰り返してきたサキですから、これまたいつまで続くかわかりませんが、いつかサキ本人が自分について言ったとおり、
「サキって、
“100歩進んで99歩下がる”
って感じだよね~」
でも、一歩はちゃんと前進しているし、その一歩をすんなり踏み出せる人よりも、いろんな風景を見たり、ゆったりとした時の流れや心の動きを感じたりできるのなら、そんな歩みもサキらしくて、いいんじゃない?
と思って、今回もまた見守りつづけようと思っているところです。
いつも私にとっての“不思議ちゃん”の娘サキ。
バレンタインのチョコレート作りあたりで、またサキの新たな感性が炸裂しそうです
ひなたまさみ