カテゴリ:ラグビー本・資料他
今年も、この季節がやってきました。
10日後の4月23日は、本をプレゼントする『サンジョルディの日』という事で、昨年に引き続きオススメのラグビー本を全2回(程度の予定で)紹介させて頂きます。 ------------------------------------------- 今回は、『Number88号』と、馬場信浩さん著『栄光のノーサイド』です。 馬場さんは、(ドラマ『スクール・ウォーズ』原作本)『落ちこぼれ軍団の奇跡』の作者という事もあり、ご存知の方も多いかと思います。 どちらも、「大西ジャパン」と「日比野ジャパン」の活躍を通し、ラグビー・日本代表の輝かしい日々を記した内容です。 『Number88号 ラグビー特集』 (1983年・12月5日号) 「大西鐡之祐インタビュー」 「北島忠治インタビュー」 「ウェールズ遠征レポ・松尾雄治インタビュー」 「ウェールズ遠征・随行記者による対談」 「<ドキュメント>1968年・NZ遠征」 内容が重なっている為、コチラは詳細を割愛します。 ------------------------------------------- 『栄光のノーサイド:日本ラグビー3つの死闘』 (1984年・文藝春秋社) 1章:1968年オールブラックス・Jr戦 2章:1971年イングランド戦 3章:1983年ウェールズ戦 この作品は、関係者の証言を基に綴った、上記3試合のドキュメンタリーです。 1章で描かれる、大西ジャパン・伝説のNZ遠征記は、「大西一家・奮闘記」と形容したくなる内容。 日本ラグビー史上、初めて計画的に強化育成をした大西監督率いる日本代表が、「世界と戦う日本人のラグビー」を体現すべく行った、ラグビー強国への初遠征。 勇んでラグビー王国・NZに乗り込んだものの、言葉も通じず食事も合わずで、慣れない生活がたたり、力を出し切れないまま、いきなりの4連敗。 修正練習をしようにも、2名一組でNZ中を民泊(ホーム・ステイか?)し、家々で手伝いをしながらの転戦の為、朝2時間の全体練習以外は、時間を取れず。 追い討ちをかけるかのように、記録的な豪雨やマグニチュード7の大地震に襲われ。 職場や家族の理解があって実現した長期の遠征だけに、「このままでは、日本に帰れない」と思い詰める選手達が、大西監督・尾崎主将の下に覚悟を決め一致団結し、そこから連勝を続けて、強豪オールブラックスJrを破るまでの話です。 これは、前述の『Number・88号』掲載の「オールブラックスJrを破った25人の男たち」に、更なる検証を重ねて加筆したものです。 続いての2章は、先のNZ遠征で世界的な好評価を得た日本代表が、ラグビーの母国イングランドの「協会設立100周年を記念すべき相手」として選ばれたところから始まります。 NZ遠征から2年が過ぎ、稀有な指導者の下に再び集った、個性溢れる選手達。 知の限りを尽くした智将・大西監督が、僅かの合宿期間で対イングランド用のチームを完成させて、決戦に臨むまでが前半部。 後半は、日本国民の期待を背負いながら死闘を繰り広げた花園と秩父宮の2試合を通し、大情熱で選手を率いる大西監督の猛将の面を選手の回想を基に描き、その後の選手達の足取りを追った内容です。 3章は、それから10年後、日比野監督・松尾主将の頃のウェールズ遠征についてです。 大西監督が退いた後の日本代表は、韓国やオランダに敗れるなど、強豪国にも大きく水を開けられてしまい、結果だけを見れば低迷・・・。 それでも、試合内容に訴えるものがあったからか、ウェールズ協会より「費用は全額出しますから、是非来て下さい♪」(趣旨)との、遠征招待状が突然届く。 協会幹部は躊躇するも、日比野監督の「もう一度、日本のラグビーを世界へ」という想いに押される形で遠征決定。 (そういえば数年前、豪州協会からワラビーズの遠征を打診され、日本協会は尻込みして断ったという噂がありましたが・・・。) そして、「日本人のラグビーとは何なんだ?」と熟考した日比野監督は、「倒されても倒されても、勇猛に襲いかかる飢えた狼の軍団たれ」(本文より)という理念を基に、『狼飢作戦』と名付けてチームを構築。 当時はまだ珍しかった「計画的な筋力トレーニング」を取り入れたり、水分の多いウェールズの芝を想定して「水に浸したボールでパス練習」など、大西ジャパンの戦術をベースにしながらも、新たに開発した戦術や練習メニューで強化を図る。 「全敗覚悟」で臨んだ遠征ながら、強豪クラブのニース(注:最近では、シェーン・ウィリアムズが在籍するクラブ・チームです。スワンジーと混合で「オスプリーズ」としてハイネケン杯に出場中。)と引き分け。 最終戦では、その年の5Nで3位だったウェールズ代表に善戦惜敗。 2勝2敗1分で遠征を終えた、ウェールズ遠征をまとめたレポートです。 この本の素晴らしさは、「単なる観戦記」の枠を超え、大西・日比野両監督を筆頭に敵味方の選手・スタッフ、現地大使館員の方など数百名にも及ぶ登場人物、はたまた観戦したファンまでも、見事に描ききっている点が挙げられます。 機会ございましたら、是非ご一読下さいませ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.04.12 23:42:48
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