どんなことをしようとも、自分のすることを愛するんだ
フィリップ・ノワレ氏が11月23日に亡くなっていたというニュースを僕は、ミンスク国際映画祭から帰国した後の12月1日に知った。奇しくもそれは「映画の日」、もうひとつのニューシネマパラダイスと呼ばれた「明日を夢見て」が、映画生誕100周年を記念して銀座で100円で公開された日だ。いつか会いたい、いつか一緒に仕事をしたいという夢は途絶えてしまった。もう映画の中でしか、会えない。『どんなことをしようとも、自分のすることを愛するんだ。 おまえが小さい頃、映写室を愛したように…。』これは映画「ニューシネマパラダイス」のアルフレードの言葉だ。イタリア、シチリア島からローマへ出て行くトトに、アルフレードは語りかける。その言葉はまるで、自分自身に語りかけるように、息子に何かを託すかのように、力強く、そして愛にあふれている。そして、更に彼は言う。「二度と帰ってくるな、電話も手紙もするな。おまえが帰ってきても俺は会わない。 何があってもおまえのやりたいことをやりとおせ。」時々、僕はこの言葉を思い出す。多少、セリフに間違いはあるかもしれないが、忘れられない言葉だ。結局、トトもアルフレードもその後アルフレードが死ぬまで一切連絡をとらなかった。本当は会いたかっただろうに…、ほんとに映画みたいだなと、僕はバカみたく思った。フランス映画の最高賞であるセザール賞の主演男優賞を2度にわたって受賞したフランス映画界の名俳優、亡くなったフィリップ・ノワレ氏は76歳だった。 役者人生約50年の大ベテランで、1988年の「ニュー・シネマ・パラダイス」では、映写技師のアルフレード役を演じた。「イル・ポスティーノ」では、詩人パブロ役を演じるなど、心温まる演技で人気を集めた。 フランスのシラク大統領は声明で「偉人が去った。舞台、映画界において、我々を魅了した一流の俳優だった」と、その死を惜しんだという。 初公開年月は1989年12月6日東京・シネスイッチ銀座。史上空前の40週間に及ぶロングランをはたし、200数席のたった1館のみの公開で27万人以上を動員。興行成績3億7000万円を記録。これは17年たった今でも単館興行成績no1であり、おそらく今後も破られることのない奇跡の上映だったといわれる。(1995年12月にリバイバル上映)年内にもう一度「ニューシネマパラダイス」をみたいと思う。出来れば映画館でみたいが、無理なら、事務所でスクリーンに映して観たいと思う。この映画の監督トルナトーレ氏、音楽のモリコーネ氏にも、早く会わなきゃなと思う。会いたい人に会うことって幸せだから。会えなくなってからでは、遅いんだ。何度でもいうが、いつかニューシネマパラダイスみたいな映画を創りたいと今でも思っている。そう強く思っている。一生に一本でいい。僕はやる。