消費税率5%から8%への引き上げの日の2014年4月1日が迫っているなか、ハカリ(質量計)、ガソリン計量器など燃料油計、タクシーメーター、電気、ガス、水道などのメーターので税率引き上げ対応準備がそれぞれに進められている。
計量器によっては料金計算処理をするレジ機の設定変更だけでよいものもあるなか、この変更に手間と費用を要するものがあるなど、消費税率引き上げは一大事の様相がある。
東京都八王子市の駅前のビルの地下で営業する鮮魚店の調理場には魚介類を計量包装するハカリが一台設置されている。このハカリの税率変更処理は、税率引き上げの直前に事業者が来訪して設定をするのだと、店員が話していた。ハカリは1台で車の値段ほどもするといい、設定し直しには何やかやで40万円ほどの出費になると話す。
鮮魚店調理場の計量包装ハカリは、計量法の規定にある非自動ハカリと自動ハカリの分類のうち、自動ハカリに属するものであった。非自動ハカリは検定と検査の対象になり、自動ハカリは対象外であるものの、この鮮魚売り場でのこのハカリは自動ハカリであっても魚介類の質量(一般には目方というが厳密には質量である)を計量し料金を表示する。この種のハカリは非自動ハカリも自動ハカリも使用の実際は変わらない。
百貨店や鮮魚店で使われている計量包装値付けハカリは、計量法の規則に従って非自動ハカリに分類されたり、自動ハカリに属したりする。どちらに属するかということは計量行政の職員として定期検査の現場に立っていて、その後に百貨店で計量士として現場の計量の責任者として業務を遂行している者にも判断ができない。メーカーがこれは非自動ハカリであるといえばそうであり、これは自動ハカリであるといえばそのようなことだと、受け止めている状態である。
客の面前で計量し料金表示をする百貨店などの多くのハカリは非自動ハカリであり、検定と定期検査の対象として取り扱われている。こうした多くのハカリは消費税率の変更を4月1日の前に設定しておき、日付が変わると同時に新税率で使用できる。あらかじめこうした機能が組み込まれたハカリは、使用者が税率変更のための設定をしても計量法の違反規定に引っかかることはない。
百貨店の計量士が自社保有の0.5%ほどと表現する一部の古い検定付のハカリは設定変更のためには電気回路の内容を変える処理をするために、ハカリの電気回路部品を買って、この取り替えと再設定を、計量法上のハカリ製造事業者もしくはハカリ修理事業者に依頼して行うことになる。この処理をした後にはその旨を役所に作業した事業者が知らせる手続きをする。国は、古いハカリの設定変更がハカリの使用者に不利益を及ぼさないように、計量法上で特別措置をしている。
『日本計量新報』の論説欄で取り上げた京都市のコーヒー豆の販売店に設置されている料金表示をする電気式ハカリは30年ほど前に製造されたハカリでであり、電気回路の取り替えなどの処理をして対応することになる。税率変更に対応させて使用し続けるためには多額の出費を要するが、客足が引いた商店街のコーヒー豆販売店ではその出費を補うことは難しい。この店には針が回るダイヤル式のばねハカリがおいてあるので、これは使い続け、料金表示式の電気ハカリは使用を止めることになるかも知れない。 税率変更に費用をともなうハカリをどうするかと、ハカリを買っている取引事業者に問うと、買い換えた方が安く済む、という回答がくるという。
消費税率変更というお金の動き方の変更は、料金計算をする計量器を使う現場には大きな事件にも似た状況をもたらしている。
(『日本計量新報』論説員 横田俊英)