【1日1冊!】猿のごとく読み、人のごとく考える

2018/03/25(日)08:12

【猿のごとく読み、人のごとく考える・その385・378冊目】『氷点』三浦綾子著

小説・フィクション(139)

【猿のごとく読み、人のごとく考える・その385・378冊目】・紹介する本​ 氷点(上) (朝日新聞社の文庫版シリーズ) [ 三浦綾子 ]​・サノーさん一言コメント「繰り返される愛と憎しみの連鎖。それが原罪かと問いてくる著者の魂魄」【サノーさんおすすめ度★★★★★】・ウノーさん一言コメント「複雑な人間の感情を、数奇な運命をたどる少女と共に学びます」【ウノーさんおすすめ度★★★★★】・サノーさん、ウノーさん読書会サノーさん(以下サ):読んだ直後のコメントは「ここまでやるか!」というものだった。ウノーさん(以下ウ):徹底的に、人間の「裏と表」「愛と憎しみ」「罪と罰」「絶望と希望」を描き切っています。サ:出発点は辻口家に起こった「悲劇」からだ。ウ:全ての「歪み」が、そこからスタートします。妻の夏江の不義の間に、次女・ユリ子が殺され、その犯人である「佐石」も、留置場で自殺、行き場がない父・啓造の怒りと憎しみは、妻に向かい「最初の復讐」が実行されます。サ:そこに向かう葛藤、人としての罪の意識も、全ては「伏線」となる。ウ:その「始まり」からは、「殺人犯の娘・陽子」が軸となり、「許し」を得られない登場人物たちの「愛憎劇」が繰り広げられます。サ:凄いのは、全ての行動や事件が「単に愛情」「単に憎しみ」から起こるのではなく、その裏にある「人間の矛盾」が見事に描かれていることだ。ウ:「人間は生まれながらにして罪びとなのか」という問いかけが、クリスチャンである著者から迸っています。サ:陽子を巡る人間模様、それぞれの「事情」が複雑に絡みながら、「罪びとたちの行進」は続いていく。ウ:啓造が「洞爺丸」で遭難したとき、物語は終焉に向かうのか、と思いきや、そこからまた、新たな展開が繰り広げられます。サ:「許しを得ない」ということが、これほどの連鎖を生む。これは、けっして、フィクションのなかの話だけではない。ウ:そして「高木の告白」に、全ての人が驚かされるわけです。サ:この本は、愛憎劇のドラマとして読むこともできるが、複雑に絡み合った伏線が一点のフィナーレへと結びつく「ミステリー」としても読むことができる。ウ:そして、「許し」へと昇華する「希望」を見出す物語でもあるわけです。この点が、傑作としての賛辞が集まる理由だと思います。【了】https://amzn.to/2pD9N20

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