テーマ:東海テレビのお昼ドラマ(184)
カテゴリ:昼ドラ
敬吾が迫る。「お前はどっちにつくつもりだ?俺か、親父か」
俺はきっぱりとした口調で答えた。「私はもちろん、川嶋さんと同様です」 敬吾「何?」 驚く敬吾の後ろで、川嶋さんが少し感心したように俺を見た。 その時、澪が部屋に入って来た。怒ったような顔つきで澪は言う。 「槐、あなたにお客様よ。吉野尚美さんて方。大事な話があるそうよ」 吉野尚美・・・? 敬吾の振りをした俺に近づこうとして、敬吾と安易に寝た女。 そして俺が冷たく突き放した女。 今になって一体何を? 玄関に向かうと、類子が尚美に話しかけていた。 「貴女、確か・・・」 すると、歩いてきた俺に尚美が気が付き、俺に声を掛けた。 尚美「あの、沢木さんを・・・」 槐「彼はちょっと用事が。ここでは何ですから」 訝しげな顔をする類子を残し、俺はボートハウスに尚美を連れて行った。 ボートハウスに誰もいないのを確かめる、尚美中に入れる。 尚美は以前よりも一層深刻そうな顔。「あの、敬吾さん・・・」 敬吾のふりをして俺は尚美に言う。 「秘書の沢木とはもう会わないほうがいいと言ったでしょう」 尚美「わかってます。でも一人ではどうしようもなくて・・・」 槐「沢木のことなら当てにしても無駄です。 会社の金を使い込んでクビになるかもしれません。 残念ながら、彼はそういう男なんです。しかしこんなところまで来るなんて」 尚美は哀しそうに言う。 「だって、どうしようもなかったんです。私、赤ちゃんが・・・沢木さんの子です」 俺は一瞬、耳を疑った。 敬吾の子供と言うことは、不破の遺産を引き継ぐ人間という事になる。 そうなると、類子と不破を結婚させて、更に敬吾を殺して財産を全て奪うという計画は 最初から練り直さなければならない事になる! 槐「産むつもりですか?」 尚美「それは・・・。だって私まだ大学生だし、親には言えないし。沢木さんに相談したくて」 槐「・・・分かりました。秘書の不始末は私の責任でもあります。 早速、信頼できる医者を紹介しましょう。あなたの将来を考えたらそうした方がいい。 何もなかったことにするんです。沢木には私から伝えておきます。いいですね」 俺は尚美の肩をしっかりと支え、その目を見つめて言う。 「大丈夫、私がついてます」 コクン、と尚美はうなずき、その目に涙を湛えて肩を振るわせた。 俺は尚美の肩を抱き、耳元で囁くように言い続ける。 「決して産んではいけません。あなたの将来に傷がつくだけです。 あんな男の子供は産むべきではありません・・・」 決して産ませてはならない。でなければ、計画が狂う。 尚美を帰して山荘に戻ると、階段の手前で敬吾が待っていた。 「尚美は?」 槐「今帰りました」 敬吾「あいつ、何だって」 槐「大したことじゃありません。最近あなたと連絡がとれなくなって心配したようです」 敬吾「まさか俺が、秘書じゃなくて不破の息子だってしゃべったんじゃないだろうな」 槐「ご心配なく。秘書の沢木は仕事をサボったり、金を盗んだり、 信用できない人間だと言って追い返しましたから。2度と訪ねてはこないと思います」 敬吾はニヤリと笑って言う。「やっぱりお前は頼りになる。 では俺は一旦東京に戻るが、また親父の容態が急変するようなら教えてくれ。 ・・・ただし、医者を呼ぶ前にだ。きっとだぞ」 槐「はい」 これでいい。尚美が妊娠したなんて知ったら余計な騒ぎを起こすだけだ。 人知れず、子供の命を闇に葬り去るだけでいい。 地下の部屋に戻り、医者にメールをしようとノートパソコンを立ち上げると、 隠し部屋の扉が開いて類子が顔を覗かせた。 入り口から中に一歩入って類子は言う。 「いいの?このままで。澪さんはあの女性があなたの恋人だって思ってるわ」 俺は返事をせずにメールを打つ。 類子「隠してないではっきり言えばいいじゃない。 敬吾はあなたの名前を使って女と遊んでる。 御曹司と分かってあとあと面倒なことになるより、後腐れが無くて便利だから。 あいつはそういう卑劣なやつだって・・・」 俺は少し苛立って言う。「言ってどうなる!誰が得するわけでもない」 類子「そうかしら。あなたが得するんじゃない? 澪さんのこと愛してるんでしょう?澪さんだって、事実を知れば・・・」 俺は立ち上がって言う。 「・・・よしてくれ!言ったはずだ。 俺はあんた同様、愛だの恋だの、そんなものは欲しくない。俺が欲しいのは金だ。 それも、はした金なんかじゃなく、人の心を動かせるような大金が欲しい。 俺の望みはそれだけだ」 類子「・・・本当にそれだけ?」 槐「他に何がある。現に、目の前には大金がある。それを手に入れるだけの知恵もある。 あとは、確実にやり遂げる度胸と覚悟だけ。 それを持たない不完全な人間ほど、愛というあやふやな物を欲しがる。違うか?」 類子「・・・その言葉に嘘は無い?」 俺は怒って言う。「疑ってるのか」 類子「だって、貴方をみてると、まるで・・・」 槐「・・・まるで?」 類子「・・・いいえ、よすわ」 ・・・この女は何が言いたいんだ。 俺は今どうやって自分の計画を崩さずにゲームを進めるかで頭がいっぱいなのに。 それには澪の存在だって、ある意味邪魔なんだ。 澪がどう思おうと、澪にどう誤解されようと、俺には、そして俺のゲームには全く関係ない。 俺の目的はゲームに勝つ事。ただ、それだけなんだ。 何故それが分からない?類子。 槐「彼女のことはいい。それより、不破の方はどうなってる? あの怪物を落とすには、体が弱ってる今がチャンスだ。 ぐずぐずして、また発作でも起こされたら事だからな」 類子「勿論、ぬかりはないわ。今は、加奈子になんか目もくれずに 時間さえあれば私とチェスをしたがってる。断るのに苦労するくらいよ」 槐「それはいい傾向だ。ただし、勝ちすぎてもいけないし、負けすぎてもいけない」 類子「3度に1度は負けてやるくらいでいい。でしょ? ・・・言ったでしょ。私はバカなお人形ではない。 男を飽きさせない方法くらい、ちゃんと心得てるわ」 槐「・・・流石だな。看護師をやめたあと、パチンコ店で働いてただけのことはある」 類子「そうよ。・・・澪さんとは違うもの」 嫌味を嫌味で返され、俺は本気で腹を立てた。 槐「何故いちいちその名前が出てくる?言っとくが、彼女は・・・」 イラついて類子に近づいたその時、類子が唇に指を立てた。 「シーッ!・・・誰か来る」 扉の向こうから足音がする。類子は隠し部屋に入って扉を閉めた。 ノックの音。 槐「どうぞ。開いてます」 扉を開けたのは加奈子。 槐「何か御用ですか?」 加奈子「・・・レイさんから聞いてると思うけど。」 槐「・・・ああ」 加奈子「あなた、協力してくれるんですって?」 槐「はい、私でよければ」 加奈子は嬉しそうに言う。 「いいに決まってるじゃない!私、あのおじいちゃんの子を産むと思うと、 考えただけでぞっとするの。でも、貴方なら・・・」 槐「それはどうも」 加奈子「ねぇ、いつにする?何なら今でもいいわよ」 槐「ここで?」 加奈子「男と女が愛し合うのに、場所なんて関係ない。 トンボは空を飛びながら交尾するって言うわ」 ・・・俺はトンボじゃない。おまけに、壁の向こうには類子がいる。 槐「でもいくらなんでも、ここでは・・・」 そう言い掛けて俺は立ち止まる。 槐「分かりました。こうしましょう。 今夜12時、ボートハウスで待ってます。そこならどんなに声をあげても大丈夫。 山荘の誰に気付かれることもありません」 加奈子は顔を赤らめた。 「どんなに声をあげても、だなんて!きゃっ! 貴方、相当自信があるのね。楽しみだわ」 ・・・。 俺は部屋から加奈子を送り出した。 加奈子は「じゃあね」と笑顔を振りまく。 俺は扉を閉めると、隠し部屋にいる類子に話しかけた。 「聞いたか?どうする」 類子「もちろん。この間話し合った通りよ。貴方に異存がなければね」 槐「勿論、異存なんてあるわけない」 類子「じゃあ、計画実行よ」 その時、俺は咄嗟に思った。 誤解は解いておかなければならない。 俺にとって、類子はどうでいもいい女じゃない。 ゲームを成功させるには、既にお前がいなければ駄目なのだと。 だから、お前が澪を気にすることは全くないのだと・・・ 類子、と呼びかけようとして俺は慌てて口をつぐむ。 槐「・・・まだ居るか」 類子「居るわよ。何?」 槐「分かってるだろうが、あんたは俺にとって掛け替えの無いパートナーだ。 歯ブラシのように取替えのきく女じゃない」 類子の返事がない。 槐「どうした?」 類子「・・・わかってるわ。貴方と私はゲームのパートナー。 それ以上でもなければ、それ以下でもない」 心なしか、類子の声は寂しそうに聞こえた。 類子が隠し部屋を出て階段を昇る小さな足音が心臓に響き、俺の心に影が差す。 ・・・その通りだ。その通りのはずなのに・・・。 俺は小さなメモを取り出すと、女性の筆跡を真似て字を書いた。 『今夜12時、ボートハウスで会いたい。 恥ずかしいから灯りを消して待ってて。加奈子』 その時、扉をノックして草太が顔を覗かせた。 「槐さん、ちょっと聞いてもいい? 岩田さんにワインを持ってきてって言われたんだけど、探しているのが見つからなくて」 俺はメモを後ろ手に隠し、草太と共にワインを探した。 そして、隙を見てメモを、草太のジーンズのポケットへと滑らせた。 今夜、暗いボートハウスの中で草太が加奈子を抱く。 俺には分かる。草太には知恵は無いが、女を抱く資質はある。 上手く行けば、加奈子はその若い肉体の虜になるだろう。 金の為に老いぼれの子供を産もうなんて気力も失せるはずだ。 これで、加奈子を戦線離脱させられる。 (2/2に続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 25, 2006 02:48:19 PM
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