同性婚から、一夫多妻制へ
【世界の潮流】「一夫多妻」支持論が浮上http://vpoint.jp/world/usa/45767.html同性婚合法化を受け―米国法理論で重婚阻止できず保守派の懸念、現実に 米連邦最高裁判所が先月26日に下した判決で同性婚が全米で合法化されたことを受け、早速浮上してきたのが、一夫多妻の合法化を求める議論だ。保守派・宗教界は伝統的な結婚の定義を崩してしまうと、重婚や近親婚などあらゆる形態を認めざるを得なくなると警鐘を鳴らしてきたが、その懸念は今、現実のものとなっている。(ワシントン・早川俊行) 「一夫多妻を合法化すべき時だ」――。最高裁が判決を下したその日、研究者でライターのフレデリク・デボア氏は、米政治専門サイト「ポリティコ」への寄稿で、「愛情や家族は性別だけでは決まらないと定義した今、なぜ結婚を2人の個人に限定するのか」と述べ、同性婚の次は重婚を合法化するのが当然の流れだと主張した。 米国で重婚合法化が絵空事でないのは、かつて一夫多妻制を認めていた末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)の分派を中心に、宗教的信念に基づき一夫多妻を実践している人が3万人以上いるからだ。彼らは最高裁判決を受け、「結婚の平等」が同性愛者だけでなく一夫多妻主義者にも拡大されることを求めて動き始めている。 モンタナ州で2人の女性と一夫多妻生活を送るネーサン・コリアー氏は1日、2番目の“妻”クリスティンさんと地元当局を訪れ、結婚証明書の発行を申請。発行が拒否されたら、裁判を起こすと宣言した。 コリアー氏は、一夫多妻家庭の生活を追ったドキュメンタリー番組「姉妹妻」に登場したことで有名になった。同氏は「これは結婚の平等の問題だ。重婚を認めない限り、平等は実現できない」と主張。クリスティンさんも「私たちが一緒になって家族を形成していることの何が悪いのか。なぜ卑猥(ひわい)に見られるのか理解できない」と語った。 同性婚を認めたことは、結婚は性別とは無関係に愛情だけで決まることを意味する。結婚が愛情で決まるなら、結婚を2人に限定する理由もなくなる。1人が複数の人を愛することは可能だからだ。同性婚によって伝統的な結婚の定義をいったん崩してしまうと、一夫多妻・一妻多夫の合法化を求める主張が出てくるのは必然と言える。 最高裁は5対4で同性婚を憲法上の権利と認定したが、ジョン・ロバーツ最高裁長官は反対意見で次のような見解を示した。 「注目すべきは、最高裁多数派の論理が重婚の基本的権利を求める主張に当てはまることだ。結婚したいという2人の男性、または2人の女性の絆に尊厳があるとするなら、なぜ3人の絆は尊厳が劣るのか。子供たちが汚名に苦しんでいるとの理由で、同性カップルも結婚する憲法上の権利を有するとするなら、なぜ同じ論理が子供を育てる3人以上の家庭に当てはまらないのか」 最高裁多数派の法理論に従えば、重婚を阻止するのはもはや困難だと、米司法界のトップが認めたのである。 ドキュメンタリー番組「姉妹妻」の主人公で、4人の女性との間に17人の子供がいるコーディ・ブラウン氏が、一夫多妻生活を送る権利を求めてユタ州を訴えた裁判で、連邦地裁は2013年、重婚の合法化までは踏み込まなかったものの、同棲(どうせい)による一夫多妻を禁じた州法は憲法違反との判決を下した。この判決は、同性婚の拡大に伴い、一夫多妻を含め異なる家族の在り方を認める風潮が強まっていることを浮き彫りにした。 こうした傾向を受け、重婚に対する世論の抵抗感は以前より薄れてきている。米ギャラップ社が先月発表した世論調査結果によると、重婚を支持する人は、01年の7%から15年は16%へ2倍以上に増えた。