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つい先日 香寺町に足を運んだ。
ハーブガーデンに行くためである。 今回行くのは2回目なので もしやとは思ったのだが、 案の定 道に迷ってしまった。 行けども行けども たどり着かないのである。 やがて山道に差しかかり、「この先行き止まり」とある。 「あちゃあ・・・。いわんこっちゃない」 そう呟きながら 進路変更しようとした私の目に飛び込んできたのは 「香呂こちら」という もう一つの看板だった。 ずっと先を見てみると 細い山道が続いている。 ・・・おもしろそうだ。 行ってみようか。 36歳のひよが「行ったら あかん」という。 そして もう1人の5歳のひよが 「行っちゃえ 行っちゃえ」とけしかける。 こ、心の声に耳を傾けるということは とても大事なことだと 自らに言い聞かせ、車でその細い山道に入って(!)いく。 (一体どちらの声に耳を傾けたのだ?) おお、ようこそ軽4で来たものだ。 もし普通車で来たりなんかしたら 途中でこれ以上進めなくなり 立ち往生していたことだろう。 それほど細い山道だった。 その日は割と暑い日だったのだが 山の中に入っていくにつれ、ひんやりとしてきた。 山の木々がざわざわとさわぐ。 きこえるのは風の音と、木々の葉擦れの音。 そっと見上げると 遙か上まで山々の緑が連なる。 右も左も緑一色だ。 こんなところに1人できたのは初めてだ。 人の声も聞こえない。 動物の声も。車の騒音も。 しーんと静まりかえるその中で 風の音だけが聞こえていた。 車の窓のすぐそばまで緑の葉が近付いてきている。 触ろうと思えば触れるのだが、 こういうところの葉には手を触れたらいけないような気がした。 葉が生きていて 心を持っているような気さえした。 ふと私は怖くなり、それまで開け放していた車の窓を閉めた。 ついでにロックまでした。 最初私は、自分が女性だから もしや変な人に出会ったら 危険だということで このような行為をしたのだと思っていた。 けれど何かが違う。 確かにそれも1つの理由ではあるけれど、 もっと他に理由があるような気がした。 私はその森に 何かの気配を感じたのだ。 大きく息づく何かを。 その存在の大きさに恐ろしくなって 警戒したのだった。 その山道はどこまでも続いていた。 しばらく車を走らせて、ようやく人家が見えてきた。 人の生きる空間を見つけて 私は安堵したのだが さっき私が感じたものは いったい何だったのであろう。 怖いような、それでいて懐かしいような。 安心してこの身をゆだねられそうな、 その一方で拒絶されそうな。 あのまま あの場所にいたら 私はその山々の木々に対して 自分の心の内をすっかり 打ち明けてしまっていたかもしれない。 そう、今まで誰にも話さなかった 心の奥の秘密を。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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