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ひよきちわーるど

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2006.08.30
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カテゴリ:think about myself



独身の頃、よく友人にからかわれたものです。

中学高校の頃もそうだったのだけれど
まわりのお友達が 自分たちと同世代の芸能人・・
例えばトシちゃんだとかマッチだとか

そういう人たちのことで盛り上がっているときに
何故か私一人だけその話題にのることができずいつも蚊帳の外でした。

どうも私は幼い頃から変わっていたらしく(笑)
小学5年生の時には丹波哲朗さんの大ファンだったのです。
(そう、Gメン75の影響ですね)

少し大きくなってからは ずっと高倉健さんのファンです。

ですから自分自身、もしも結婚するときには
おそらくずっと年上の人とするのかなと思っていました。





大人になりいくつかの恋をして
いつも相手の方に言われていたことは
私は冷たいということでした。

淡泊で、本当に相手のことを好きでいるのかどうか
少しも分からないということでした。

考えてみましたら 私自身
自分から求めて恋をするというよりは常に受け身だったように思います。




そんな私も、たった一度だけ
自分から求めて恋におちたことがありました。
ずっとずっと昔のことです。


その人の家の庭に咲くという花を見かけるたびに
胸をときめかせました。

その人の名前を聞き、何故そのような名前になったのか
そんなことまで訊いていました。

その人の小さな頃のことを教えてもらいました。
幼い頃からお母様が病弱で
一緒にお買い物に行ったり旅行に行った思い出などないことも。


空に虹がたつたびに
その人に伝えたいと思いました。

空に広がる夕焼けの色も 道に咲く季節の花々も
読み終えた本のことも 今考えていることも全て
素直にその人に伝えていました。

その人の前だけは 私は5歳の女の子でした。





読んだ本のことを語り合い
お互いの中に共通点を見つけるたび嬉しくて

その人とは5歳も年が離れていましたけれど
その年齢差など少しも気にならず

その人の言った言葉ひとつひとつを素直に受けとめ
それに対しひとつひとつ質問し 返ってきた答えに対してもまた質問し

自分の中にこんな部分があったのかと
こんなに人懐っこい自分も居たのかと驚くばかりでした。





やがてお互いの持つ価値観
・・・殊に宗教観、平和に対する考え方の相違に気づき

確かに趣味や好みなど驚くほど一致していた私たちではありましたけれど
人間としての根幹を成す部分におきまして
お互いに余りにもかけ離れていることに気づき
結局は離れていくことに。

離れていくことについて 私自身、とても悩みました。
心から好きになった人です。
価値観の相違があったとしても それでも
このまま一緒にいることはできないだろうかと思ったことも事実です。

けれど自分の価値観をねじ伏せてまでその人と一緒にいることはできませんでした。
自分が自分でいることを選ぶのであれば
その人から離れていくしかなかったわけです。

簡単に結論を出したわけではありません。







そんな時、ちょうど今頃の季節のことでした。
道を歩いておりましたら 足元には紅い落ち葉が。

そのあまりに紅い色を見て
これは今の私の心そのものだと思いました。


人に対しさほど興味を持つこともなかった私が
その人に対してだけは甘え、怒り、素直な自分を出していました。

いえ、私にありのままの自分を出させるほどの懐の深さが
その人にあったということなのです。


兄のように慕い 恋うていた人から離れていこうとしている今の自分。
でも、それでもその人のことが好きでした。

・・・・その人を恋うことにより
自分の心に紅葉と同じ紅蓮の色が隠されていることに気づきました。






その時の自分の心の色を足元の落葉によって教えられ
自分というものを冷静に見つめることができました。

正直に申しまして 自分の心に秘めた色を見つめましたとき
その鮮やかな紅の色を見ましたときに 嫌悪感を感じたのです。

自分はいつも(できることであれば)
淡い水色や白い心でいたいと。
柔らかな心の色でありたいと思ったのです。







さまざま葛藤はありましたけれど
私はその人の元から離れていきました。

それと同時にもう2度と
自分の心を紅蓮の色にはしないと。

そして決して 年上の人に恋心を持たないと。


だからこそ その後恋をしたとしましても
年上の人に恋心など持つこともありませんでしたし
恋心を激しく燃やすこともしませんでした。

例え相手の人に「冷たい」と言われたとしても です。








秋こそあれ人はたづねぬ松の戸を
        幾重もとぢよ蔦のもみぢ葉

                  式子内親王




この歌の「幾重もとぢよ」に心を動かされました。

相手に対しさほど恋慕の情がないのであれば
何も幾重にも閉じる必要などないのです。
いえ、全く閉じる必要もないでしょう。



幾重にも閉じてしまわなければ
自分の恋心が溢れてしまうから。

もしや但馬皇女のように
恋しく想う人の元に―――





幾重にも閉ざすことにより
自分の心の内にあるほんの少しの希望をも
打ち消してしまいたかったのでしょうか。



今夜は月が美しいからあの方がおいでになるかも

家の門が風にあおられ音をたて
その音にもしやと心を躍らせる

そういうことが幾度となく続き
そのたびごとに深く傷つき

それ以上傷を深くせぬよう
自ら心を閉じようとなさったのでしょうか。







「幾重もとぢよ蔦のもみぢ葉」


かなしみと 致し方のない思いを秘めたその深い色。

一度でも心からの恋をして
その恋を手放したことのある人であれば もう2度と 
屈託もなく「恋がしたい」などと言えるはずもなく。






もう少し時が過ぎて 秋も深くなれば
風も少しずつ冷たくなっていきます。


幾重にも重なり繁る蔦の葉も色づき
いつしか深い紅に染まっていくのでしょう。

















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Last updated  2015.10.14 23:45:28
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